表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

春と冬-回帰し宿命の果て-

作者: 羽黒鷹丸
掲載日:2026/04/27

「覚悟は、決まったか?」

「ああ、君を・・・・・・斬るよ」  

 青年は腰の刀を抜刀し、中段に構えた。

「良い眼だ、ならば・・・・・・」  

 刀を構えた青年と対峙した白髪の青年は、龍に変じた。すると天候が変わり、粉雪が降り荒んだ。

「春よ、来い!」

「いくよ、冬・・・・・・たぁぁぁ!」  

 両目に入ってくる粉雪に苦悶しながら、春は冬に向かって駆けた。そして左腕の付け根から袈裟斬りを一太刀浴びせた。  

 しかしその刃は、彼の固い鱗で守られ、肉にまで到達しなかった。  

 続いて心臓を突いたが、やはり鱗で弾かれた。

「・・・・・・温い、こんなモノかお前の覚悟はァ‼」

「うう・・・・・・うわぁ」  

 春は龍の放つ息吹に吹き飛ばされ、凍土に尻餅をついた。

「春、俺はお前を殺す。お前が死ねば、この世界は真白と灰色に染まった氷の世界だ、永遠にな。そして生きる者は全て絶える」

「う、うぐ」

「役目を違えるな結の一族の剣士! 俺を屠りこの世界を護ってみせろ‼ 俺の為にも」

「冬・・・・・・」


「やっぱり君といると楽しいよ、冬」

「そうか。だが俺達は敵同士の一族、本来ならこうして逢っているのも許されない。きっと何れは俺達も『役目』を背負って・・・・・・」

「僕達は大人になっても仲良くしよう。そして桜木が一本生えたこの秘密の場所に来て、一緒に桜を愛でるんだ」

「浅き夢だな、だけどそれを信じるのも悪くない」

「冬、君は僕にとって大切な親友だ。君は?」

「・・・・・・さぁ、あまりここに居ると皆に気取られる。帰るぞ」


「瞬火終凍」  

 春が刀身を撫でると、刃に焔が宿った。

「桜火爛漫! たぁぁぁ‼」

「はぁぁぁ‼」  

 春は冬の息吹を堪えて走り、冬が尾で凍土を叩いて飛ばした氷の飛礫を弾き、一心に冬の懐に向かった。  

 そして斬撃を見舞った。

「やぁぁぁ‼」  

 一太刀で左脇腹から逆袈裟に、返し刀で左腕の付け根から袈裟斬りを、最後に心臓に突きを放った。  

 今度は踏み込みが深く、捉えていた。

「・・・・・・見事だ、春」  

 冬は元の姿に戻って言った。

「冬・・・・・・」  

 雪は雨に変わっていた。空と同じく春の瞼からも雨粒が零れ、凍土の氷を解かした。

「立派に世界を救ったな、これで俺も血から解放される・・・・・・。礼を言うぞ、春」  

 冬の体は徐々に細かな氷の粒子に変わっていった。

「冬、やっぱり僕は・・・・・・君と離れたくない」

「大丈夫、俺はお前の傍にずっと居るさ。舞い散る花弁となって、流れ落ちる雨となって」

「うっうっ・・・・・・」

「そういえば、お前から預かった(ことば)に返事をしていなかったな。俺も同じ、お前は俺にとって大切な親友だった。今日までずっと変わらない」

「冬・・・・・・大好きだ」

「俺もだ、春。一族の定めが無ければ、こんな辛い争いはしなくてよかったんだろうな・・・・・・そしたらお前と一緒に夢の続きを――」  

 冬は粒子の渦となって三回回ると霧散した。    


それから春は凍の一族と結の一族の橋渡しをし、長年掛け両一族を和解させた。  そして熱の一族の夏と文の一族の秋を交え、四つの一族はそれぞれの領分を決める約定を交わした。  

 この約定をもって生まれた循環は、やがて『四季』と呼ばれるようになった。  


 二人が友好を深め、争った場所に春は来た。  

 ここに来て瞼を閉じれば、親友の懐かしき声がした。  

 一本生えた桜木から、一枚、二枚、花弁が降った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ