地球発見と密室
二十日目の朝。
「船長! 前方に天体を確認しました!」
ナディアの声が、ノーランを眠りから引き戻した。操縦室に駆け込むと、前方の大型スクリーンに——それが映っていた。
青かった。
白い雲が渦を巻き、その下に青と緑の大地が広がっている。太陽の光を受けて、表面がきらきらと輝いていた。これほど水に満ちた星を、ノーランはこれまで見たことがなかった。
「大気構成、窒素七十八パーセント、酸素二十一パーセント」とナディアが読み上げた。「地表の約七十パーセントが液体の水で覆われています。衛星は一つ」
衛星は一つ。
故郷では二つの月が空を渡っていた。一方は大きく赤みがかり、もう一方は小さく青白かった。夜に二つの光が重なる瞬間、子どもたちは外に出て歓声を上げた。
一つしかない月。少しだけ、寂しい空だろうな——とノーランは思った。
乗組員たちがスクリーンの前に集まってきた。誰も何も言わなかった。ただ、その青を見つめていた。あのプローブのデータで見た映像そのものが、今、目の前に広がっている。
しばらくして、ナディアがノーランの隣に立った。
「……綺麗ですね」
「ああ」
「あそこに、本当にいるんでしょうか。プローブに映っていた……あの生き物が」
「いるだろう。データはそう示している」
ナディアはかすかに笑った。傷痕が光の中で動いた。「そうですね」
それが、ナディアとの最後の会話になった。
発見されたのは、その日の昼だった。
「ノックをしても返事がなくて……扉が内側からロックされています」
リアが廊下に立って言った。顔が青かった。
「誰の部屋だ」
「ナディアさんの部屋です」
ノーランは非常解錠コードを入力した。
扉が、開いた。
ナディア・セルヴァが椅子に座ったまま死んでいた。目を開けて、窓の外を見ているような姿勢で。その目が最後に映していたのは——あの青い惑星だった。
「触らないで」とオーレンが素早く前に出た。
ベックが壁に背中をつけた。テリエは入口から一歩も動かなかった。リアが小さく声を上げた。
体は冷たかった。死後すでに数時間が経過していると、オーレンが言った。つまり——乗組員全員がスクリーンの前であの青い惑星を見ていたあの朝の時間に、ナディアはすでに死んでいた。
ノーランは静かに確認した。
扉の鍵は——内側からかかっていた。
換気口は——体が通れる大きさではない。
窓は——宇宙空間に面しており、開閉の記録はなし。
通路のカメラには——昨夜から、この部屋に出入りした人物は映っていない。
「密室だ」とベックが静かに言った。
ノーランは部屋の中を見回した。床は綺麗で、机の上の計算用紙は乱れておらず、ナディアはまるで眠るように——その姿勢を保っていた。
窓の外には、地球が見えていた。
青く、静かに、近づいていた。




