表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い惑星の来訪者  作者: セムラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

宇宙への出発

初投稿です。温かい目で読んでくださると嬉しいです。

宇宙船タクシラの格納庫は、夜でもにぎやかだった。


整備員たちが足場を登り降りし、金属を叩く音と機械油の匂いが混ざり合っている。その中で、カイ・ノーランはひとり、船体を見上げていた。


全長八十メートル。錆びた鋼鉄の巨体。新型には程遠い。しかし、これが今与えられた最善の船だった。


「本当に、あの船で行くんですか」


隣に立っていたのは、機関士のルカ・ハイネンだった。二十三歳。この乗組員の中でいちばん若い。


「行くしかないだろ」とノーランは言った。「他に選択肢がない」


故郷の空は今日も赤かった。地平線に太陽が傾き、荒れ果てた大地を染めている。かつてここには畑があった。川があった。緑があった。今はただ、乾いた土と廃墟だけが続く。


食糧危機が始まってから八年。政府は統治機能を辛うじて維持しているものの、もはや時間の問題だった。各地で暴動が頻発し、生き残った者たちは宇宙へ希望を見出すほかなかった。


三年前、深宇宙から漂着した人工物が回収された。


表面に金属板が取り付けられており、ある惑星系の位置データが刻まれていた。内部の記録媒体を解析すると、その惑星の大気組成、地表映像、そして——知的生命体と思われるものの映像と音声が記録されていた。その生き物は奇妙な形をしていた。二本の腕、二本の脚。直立歩行。記録媒体の中で、それらは声を発し、道具を使い、大地の上に構造物を建てていた。


政府はこの惑星を、プローブのデータに含まれていたその星の自称名から「地球」と名付けた。


そして遠征を決定した。食料資源の確保。種の存続をかけた、最後の賭け。


その一隻が、この《タクシラ》だった。


ノーランは深く息を吸った。故郷の空気は少し重くて、かすかに鉄の匂いがした。こうして嗅ぐのも、もうすぐ最後になるかもしれない。


「出発は明朝だ」とノーランはルカに言った。「休んでおけ」


ルカはいつもの笑顔で答えた。「了解です」


しかしその笑顔の奥に、何かが隠れているような気がした。ノーランはそれを、今夜は追わないことにした。


《タクシラ》の乗組員は、七人だった。


カイ・ノーラン(船長)。元軍人。背が高く、無口で、いつも目の奥に何かを考えているような顔をしている。三十年以上、戦場と宇宙を行き来してきた。


ナディア・セルヴァ(航海士)。額の中央に走る細い傷痕が特徴の、寡黙な女性。数字を扱う能力が異常に高く、「計算機より正確だ」と言われることがある。


ルカ・ハイネン(機関士)。いつも笑っていて、誰とでもすぐに打ち解ける。この中でいちばん若い。笑顔の下に何が隠れているかは、誰も知らない。


オーレン・デュラス(医師兼生物学者)。細い指と、冷静すぎる目を持つ老人。「感情は判断の邪魔になる」というのが口癖らしい。


マルコ・テリエ(通信士)。政府から派遣された「連絡官」という肩書きを持つ。船内では常にどこかよそよそしく、他の乗組員との距離を保っている。


イリス・ベック(資源調査員)。正式な肩書きは「資源調査員」だが、ノーランはそれが本当だとは思っていなかった。調査員にしては、動きが軍人のように正確すぎる。


リア・サントス(料理担当)。記録では「料理担当」となっている。合成食料の味は確かに悪くなかった。しかしノーランには気になることがあった。彼女の指の動きは、食材を扱う者のものではない。もっと精密な、別の何かに慣れた指の動きだ。


七人。


この中に、少なくとも二人のスパイがいる、とノーランは確信していた。誰が誰の側なのかはわからない。しかし、この遠征には政府だけでなく、反体制派も強い関心を持っている。反体制派は地球遠征そのものに反対していた。理由は明確にされていないが、任務を妨害する動きがあるという情報は、出発前からノーランの耳にも届いていた。


《タクシラ》はゆっくりと故郷の空を離れ、宇宙の闇へと進んだ。赤い空が、窓の中で少しずつ遠ざかっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ