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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

拝啓、最愛の貴方へ

作者: 葵依 澪
掲載日:2026/01/17

皆様初めまして、葵依澪と申します。

本作は初投稿となる短編作品です。

以前オープンチャットにて公開した作品を、加筆修正したものとなっています。

タグにも記載しておりますが、BL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。

少しでも何かを感じていただけたら幸いです。

拝啓、親愛なる貴方へ

冬の寒さ解れ新たな生命が芽吹く頃、貴方はこの手紙を読むことでしょう。

私の居ない世界はどのような世界でしょう。

寂しいですか。悲しいですか。嬉しいですか。否、きっと私一人居なくても世界は何も変わりません。七十億も人のいるこの世界では、たとえ一人居なくなったとしても、世界はなんの問題もなく回り続けるでしょう。さて、何故私がこうして貴方に手紙をしたためたと言うと、これは別に遺書などという大層なものではありませんが、単刀直入にいうと貴方と話したかっただけです。いや、一方的に私が貴方に話しかけていると言うべきでしょうか。おっと、貴方のことでしょうからきっと足りない頭で今混乱していることでしょう。全く小さいくせに馬鹿力はありその上で脳は足りない貴方のことです。きっとこの紙を持ったまま固まっているでしょう。まあ、順を追って話します。

私は自分の死がわかっていました。なんとなくそんな気がしたのです。私の勘の鋭さは、貴方が最もよく分かっているでしょう。然し、私は或る人から死を伝えられました。

二月二十八日。その日が私の命日。或る人は、私がその日行った場所で、あるデモに巻き込まれて死ぬだろうと言いました。まあ慥かに、最近過激なデモがあることは聞いていました。然しそんなことはとっくに知っていました。私には死も生も大したものには思えませんでした。なので、生きようと思えば一瞬一瞬も全力で生き、死ぬ時が来て、死ねと言われたらその時はすぐに死のうとも考えておりました。元々、二月の頃に私が死ぬことは薄々勘がしておりました。ですから、或る人からそれを伝えられても私はやっぱりか、程度にしか捉えませんでした。死ぬ時が来る。それだけだと。死んでも後悔しないように一瞬一瞬を全力で生きてきたのです。この人生、後悔はありません。然し、周りの人はそうではないだろう。私は何処ぞの脳筋さんとは違いちゃんとそのことも考慮していました。そこでこの手紙です。貴方は私の考えを理解しなかったから、きっと色々考え私への恨み言でも零しているのでしょう。だから此処で伝えましょう。或る人は、私が死ぬ予感がすると言いました。そんな事、信じる訳もないのですが、不思議なことに私はそれをすんなり信じられました。

ああ、この人も分かるのか、と。この人も私が死ぬ予感がしていたのでしょう。そこで私はそこでその或る人に、笑顔でありがとう、お陰で全てわかったよ、とお礼を伝えました。その後或る人は何も言わずに私の前から立ち去り二度会うことはありませんでした。人生には、不思議なこともあるものです。然し、生に執着は無かったはずなのに、いざ死ぬとなると、少し寂しくもありました。そして少しばかり、貴方との思い出を振り返ったのです。

貴方とはいつも喧嘩していて、私も嫌いだったはずなのに、私はどうも貴方と腐れ縁のようで、十年この縁は続いてしまった。親愛だなんて相応しくはないだろうけど、少年の頃に出逢い今日まで続いた縁で、これが遺書代わりになるのかも知れないと考えたら、一応友達宛てとして親愛なるとつけた方が良いかと思ったのです。少年の頃、私も未だ幼く、私は貴方がとてもうざくてうるさくて大嫌いでした。みょうにすましていて、全く可愛げのなかった私を、貴方も大嫌いだったことでしょう。でも、いざ死ぬとなると、自然と貴方との思い出だって幾つか思い出すものです。なんだか恥ずかしく、ずっと言えなかったのですが、私は貴方の姿が好きでした。その緩やかに波打った茶髪に、黒曜石のような意志の強さを感じさせる黒い目。小さいけど、無駄に威勢は良くて、その整った顔にその瞳はよく合っていて、綺麗で、私とは逆であどけなさも、可愛らしさも、少年らしさも、純粋さもあって私には眩しく、嫉妬さえしてしまい、素直に言えず、十年も抱えておりました。

雨の日、私のことが嫌いだったはずなのに、態々私に傘を差し出してくれた時、やっぱり、君はお人好しだと思いました。あの時のこと、覚えていますでしょうか。嬉しくも、私には相応しい人ではないとも思いました。だからやはり、私には眩しかった。元々真反対のような私達でしたから、当然途中で道は分かれました。然し私は後悔なんてしていなかったし、むしろ晴れ晴れともしていたのです。君は、私と一緒に居ていい人ではない。私なんかといたら、君のその純粋な美しさが失われてしまうと思ったのです。だからこそ敢えて、君と別の道を選んだのかもしれません。六年。縋ってしまった。心の何処かで小さく、離れたくないとも思ってしまう自分もいました。でも、これで良かった。なのに、更に四年。なんだかんだと君と会い縋ってしまった。十二歳から十年。ずっと君に縋っていてしまった。君は新月のような私を照らし、光へと導いてくれる、太陽な存在でもあり、優しく光を当ててくれる月のような存在でもありました。そんな君はとても美しく、心奪われ、私はいつしか君を好いていた。全く気付かなかったでしょう?十年、隠してきたんだもの。ついに君に気付かれず、私はこの世を去れる。だから今、全て教えます。愛も温もりも知らなかった私に光を当てそれを教えてくれた君。ねえ、

君は幸せだった?

私と一緒にいてくれた時、何を思っていた?

私は君の足手まといにはならなかった?

君は僕をどう思っていた?

僕は幸せだった。

僕は温かさと幸福を感じていたよ。

僕は君と居たかった。

僕は君が大好きだった。

僕の人生に悔いは無い。

何も怖くない。死は怖くない。

人生を常に全力で生きて、後悔は無い。

もう少ししたら僕はもう死ぬけど、

君には生きて欲しい。

僕からの最期の、一生のお願いだ。

僕の、私の分だけ生きて欲しい。

君より大人びてみたいと背伸びして変えた一人称。

君はずっと俺のままだったけど。

私より、僕、の方が良かったかな?

叶わないことなんて知ってるよ。君と出逢えただけで、僕は幸せだったから。

君は今泣いているかな?

僕に愛と温もりを教えてくれて

暗闇の僕を光へ導いてくれて

いつでも優しく照らしてくれて

ありがとう。

だから君は

僕の最愛の人で

何よりも大切な人で

君はどうだった?

ありがとう、さようなら。また来世。私の最愛の人。

貴方に出逢えて良かった。

拝啓、最愛の貴方へ

敬具

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「んだよ…これ…」

それは、大嫌いだっはずの腐れ縁の相手からの手紙。

友人でもなく、相棒やライバルなどと言った方がいい相手だった。昔からすましていて年相応の少年らしさもあどけなさも全くなく、可愛げのない奴で、そこら辺がムカついて大嫌いだった。でも何故かいつも暗く孤独な顔をしていて、俺も、不覚ながらそんな暗闇で憂いを帯びたその整った顔はとんでもなく綺麗に見えた。だから一度、雨の中傘もささず一人冷たく打たれていたあいつに、傘を差し出した時がある。何を言えばいいかも分からず黙っていたけど、あの時のあいつは心底驚いたような表情と、嬉しそうな表情もしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「何、突然。」

「何でこんな雨の中傘もさしてないんだよ。」

「君には関係ないでしょ。」

「お前に風邪引かれたらこっちも困るんだよ。」

「何、看病でもしてくれんの?」

「んな訳ないだろ。俺に感染されるたら困るんだよ。」

「あっそう。」

「まあ、看病どうしてもして欲しいならやってやらないこともないけどな。」

「丁重にお断りするね。」

「これは好きでやってるんだよ。僕は雨が好きなんだ。」

「変わってんな。」

「君には分からないだろうね。」

「何で好きなんだよ。」

「⋯雨は自分の存在を消してくれるから。」

「何だよその台詞。ナルシストかよ。」

「だから君には分からないんだよ。」

「わかったならもう行ったら?君まで風邪引くよ。」

「⋯わかったよ。勝手にしろ。」

そしてその後あいつに俺は傘だけ預け一人でその場を去った。その後見事に風邪を引いた。家で寝ている時に誰かが看病をしてくれた気がした。家の傘立てには俺の預けた傘があった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

忘れるわけない。だからこそ今でも懊悩してしまう。あの時気付ければ良かったのか。あいつの孤独に。その時の俺には雨なんか寒く濡れるだけで大して良いものに見えなかった。そこから違かったのかもしれない。昔から浮世離れしていて掴みどころのないやつで、何を考えているのか分からなかった。でも、こんなにあっさり逝くとは思わなかった。そして、まさか自分にこんな告白文のような遺書のようなものを遺していたとは。その告白には何も返せなかった。驚きしかなかったのだ。でも何故か涙が出て、止まらなくて、大嫌いだったはずで、本当ならいなくなって清々するはずなのに、悲しんでいるのだろうかなどと考えていた。でもずっと俺の横にはあいつがいて、いないことなんて考えられなくて、道が分かれても何処かでは繋がっている気がしていた。たとえ腐れ縁だったとしても、傍に居た人間がいなくなるだけでここまで虚無観と孤独感に襲われるものなんだと知った。尚も涙は流れ続ける。

「だって…どうして…俺のこと、あんなに嫌ってたはずで…どうしてっ…」

俺は何に怒っている?何に怒っているのかもわからない。

「どうしてっ…どうして!どうしてもっと早く教えてくれなかったんだよ…どうして気付けなかったんだよ!今更…!」

過去の己とあいつを責めて、どうしようもない思いをぶちまける。

「あ”あ”あ”ぁぁ!」

泣いて叫んで泣いて、やがて声が枯れ、濁音だらけになるまで泣き続けて、あいつの手紙は沢山滲んで

「ぁ…ぁ…」

結局現実は何も変わらなかったと項垂れる。

最期まで隠して今際の際で全て明かしたあいつにも、そんなあいつの横に十年も立っていたくせに何も気付けなかった自分にも腹が立つ。でもー

「どう思っていた、だって?んなもん…」

大好きだったに、決まってる。

それだけじゃない、

「てめぇと過ごした時間、みんな幸せで楽しくて、最高で」

ずっと続くのを願った程に

足手まといなんてわけ無く

「お前を支えて、これから先も、何十年も、ずっと一緒に生きていこうとして」

寧ろ俺の方がお前に縋って依存していた。

支える相手がいること、傍にずっといる人間がいること、それだけでも生きる意味になって

「嫌いだったはずなのに、全てそれは愛の裏返しで、それなのに俺は気付かないふりをして」

好きだった故の、あいつへの羨望が裏返ってしまって、結局想いを伝えられなくて、その想いを忘れたフリをして

相手が死んで、初めて伝えられて

「本当に、俺は馬鹿だな」

そうぽつりと呟いた。

そして彼が最期に自分へ託した願い。

生きて欲しい。自分の分まで。

実は彼は生前一度も一生のお願いを使ったことがなかった。


ー自分の一生をかけてまで他者に叶えてもらいたいことなんてないよ


そんな彼が、本当に一生の終わりに願ったこと。そんなのー

「叶えるしか、ねぇだろ」

思わず笑みを零し呟いた。

ああ、わかったよ。此処でへばっちゃ、お前はきっと俺のことを笑うもんな。天国から見下ろされて笑われるなんてごめんだ。

「お前の願い、俺が叶えてやるよ」

そして、天国の彼に向け手紙を送る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

拝啓、親愛なるお前へ

新たな生命が芽吹き、桜が満開に咲き誇る季節となってきた。

一生のお願いに俺に自分の分まで生きて欲しいなんて、気障なこと頼むんだな。

仕方ないな、お前の夢は俺が叶えてやろう。

じゃないときっとお前は俺を笑うし、俺もそんなのはごめんだ。

それに、お前が生涯の終わりに願った一生のお願いを断るのは流石にな。

俺がお前のことをなんて思ってたか?

そんなのな、

俺も、お前が好きだ。大好きだ。

もっと早く気付ければ良かった。

もっと早く素直になれれば良かった。

ずっとそう思っていた。

お前は足手まといなんかじゃなくて

俺の生きる意味そのもので

ずっと縋って依存していて

傍に居たくて

お前と過ごした十年は

この人生の中で一番幸せで楽しかった。

大好きだ。

また、来世。互いに生まれ変わったとしたら

今度こそ、一緒に生きて欲しい。

俺からの一生のお願いだ。

じゃあお前を真似して

拝啓、最愛の貴方へ

敬具

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その手紙は、彼の墓に墓参りに来た際に線香と共に燃やした。

彼に届くように。

初めて共に酌み交わした酒と

仏花と姫彼岸花とも呼ばれるネリネを供える。

ゆっくりと手紙が燃え、細い煙が立ち上る。

嘗て竹取物語で、かぐや姫が月へ帰った際も、託された薬を燃やし彼女へ届けたと言われる。

月の世界以上に手の届かない所へ行ってしまった彼にも、その想いを煙に乗せて届ける。

きっと彼にも、届くだろう。

春の中頃。美しい青空に想いが昇る。

最初の言葉は拝啓、親愛なるお前へ

そして本当に伝えたいことは…

「拝啓、最愛の貴方へ」

お疲れ様でした。まだ私自身が中学生の若輩者なので、拙いところが多いでしょうが、先ずはまだまだ未熟な私の作品を読んで下さりありがとうございました。短編はこれからもちょくちょく投稿していき、カクヨムの方でも投稿していこうと思っていますので、よろしくお願い致します。これから連載の長編作品の投稿も予定していますので、読んでいただけたら幸甚の至りでございます。では、これからもよろしくお願い致します。よろしければ厳しい言葉も喜んで受け入れますので、感想を頂けたら幸いです。

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