表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

第16話 馬車襲撃イベント

 しかしこうして見ると、ナーガ族ってのはホンマに夢がない種族やなぁ。

 ここにおる全員、男やんけ。妖艶で可愛い女の子とか、どこにもおらへんし!


 ……お?

 あそこに一人だけ、女の子っぽい外見をしたナーガがおるで!

 あんなに可愛らしいんやから、まさか「実は男の娘でした」なんてことはないよな?


 僕が冷静に観察したところ、彼女は負傷したナーガの男性の元へ必死に駆け寄っているようだった。どうやら、かなり仲間思いの性格らしい。


 紅一点の少女と、彼女を守るために傷つき、戦う男たち。

 解けた。わたくし、今の状況が完全に理解できたわ!


 これ、いわゆる『馬車襲撃イベント』ってやつやん!


 どんな物語の主人公でも、一度は盗賊に囲まれた馬車に遭遇するもんやろ?

 ほんで、その馬車の中には決まって「お姫様」か「公爵令嬢」が乗ってるんや!

 周りに転がってる負傷した男たちが、この説をより確信させてくれてるわ。


 よくあるテンプレにおいて、君ら護衛役はいつも「かませ犬」扱いで可哀想なこっちゃ。

 せやけど安心しぃ。今はここに、慈愛に満ちたホタテが一枚おるからな~!


 まあ、肝心の馬車がどこにも見当たらへんし、そもそも海の中で馬車が走るわけないんやけど……間違いなく正解はこれや!


 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。ヘビを打つには、その七寸を打たなければならない。

 そして――媚びを売るなら、当然一番の「大物」に限るってもんやろ!


 僕は直ちに『ホタテ泳法』を全開にし、ナーガ姫君(仮)が介抱しようとしている男性ナーガの元へと滑り込んだ。


 肌の色こそ青いけれど、こうして至近距離で見てみると、彼らの顔立ちは人間にそっくりだ。

 まあ、鼻があるべき場所がのっぺりと平坦だったり、耳の位置にただ穴がぽっかり開いているだけだったりと、細部は異なるけれど。


 ただ、こうして対比してみると直感的にわかる。今の僕の体、本当に小さいな。

 なにせ、ナーガの目よりひと回り大きい程度のサイズ感しかないのだ!


 それにしても、海洋生物のくせに髪の毛はちゃんと生えてるんやな! 不思議な生態やで。


 さて。

 この男性ナーガを助けて、姫のご機嫌取り(ポイント稼ぎ)をするのが当初の計画やったけど……ここでふと、重大な問題に気づいてしまった。


 もし彼女の目の前で、僕が口から吐き出した『コンクリ』を与えたとして、どうなる?

 いくら『お嬢様マナー』スキルで所作が美しく補正されるとはいえ、絵面的には「ゲロを食べさせている変態」や。

 これでは好感度アップどころか、最悪の事態になりかねない。


『わたくしの忠実な兵に、其方の汚い嘔吐物を食ませたのですか!? この不敬な二枚貝め! 者共、やっておしまいなさい!』


 あかん。そんな展開になったら詰むわ。


 それに僕としては、あの真珠樹から湧き出てくる真珠を、彼らに全部食べてもらって処理したいっていう下心もあるしな。


 そこで僕は思い出す。

 元を正せば、あの変な樹から生った真珠は、以前ボコちゃんにあげた真珠と同質のもの。

 つまり、あの『ヒール』のコンクリから生成された物体だ。


 ……ということは?

 この樹から採れた真珠にも、同じような回復効果が備わっている可能性が高いんじゃないか?


 というわけで、ナーガ体実験や!


 僕は樹から毟り取ったばかりの虹色真珠の粒を、ポイッと彼の口の中に放り込んだ。


 まあ、鑑定結果にも『食用可』と出ていたし、少なくともお腹を壊すことはないだろう。

 反動で僕みたいに「口から虹色のものを吐く体質」になってしまうかもしれんけどな!


 僕が放り込んだ真珠を、彼は反射的にゴクリと飲み込んだ。

 すると経過は読み通り。男性の傷がみるみるうちに塞がり始めたのだ。


 よし、これできっとナーガの姫様も『わたくしは悪いホタテではありませんのよ』と理解してくれるはず!


 僕はすかさずナーガ姫君の目線と同じ高さまで泳ぎ上がり、元気いっぱいに挨拶をした。


「ごきげんよう! 麗しのナーガのお姫様! わたくしは愛と平和の使者、通りすがりのホタテでしてよ!」


 しかし、ナーガ姫君は小首を傾げ、不思議そうな顔をしている。

 彼女の唇が動き、奇妙な発音の羅列が僕の耳に届いた。


 ……あれ?

 ここ、異世界っぽい場所やのに、ナーガ族は『異世界共通言語』を使ってへんのかい!


 普通ならここで『自動翻訳チート』機能が仕事するはずやのに、翻訳さんの気配が全くせえへんぞ。まさかの言語の壁か!


 せやけど、ウチはあのクサムライさんのボディーランゲージすら解読した天才ホタテやで?

 言葉が通じない程度の障害、なんのそのや!


 僕は姫様の前で、ある一連のジェスチャーを繰り返してみせた。


 まず、あの巨大な真珠の樹をビシッと指差す。

 次に、腕を使って大きな輪っかを作り、樹に実る真珠を表現。

 そして輪っかを作ったままくるりと回転し、水中をゆらりと落下して見せる。これで「実を摘み取る」動作を表してるつもりだ。


 さらに、姫様に背を向けた一瞬の隙に、手持ちの『虹色真珠』を取り出し、意識を取り戻しつつある男性ナーガの元へ泳ぐ。

 そして、その真珠を口へ放り込むフリをした。


 勘違いせんといてな、この手持ちの虹色真珠はあげられへんよ。僕は即座に真珠を引っ込めた。なにせエンドウ豆を吸収していないため、食用には適さないのだ。


 どうや? 伝わったか?


 今の僕の図体では小さすぎて、あの樹になっている巨大な真珠は運べない。

 だが、君たちなら自由にあの真珠を採って、好きなだけ仲間の治療に使えるのだぞ?


 ――という、僕なりのメッセージだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ