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ロマンス

作者: 芋姫

婚活アプリは惨敗。 結婚相談所にいたっては門前払い。


もう、すべてが嫌になってきた。


確かに自分の年齢を考えると、子供だってもう難しいのかもしれない。


本当に女、という生き物は・・ただ年を取るというだけで、価値がなくなるのではないか、と本気で思い始めた。


何も悪い事だってしていないし、誰にも迷惑をかけてはいないはず。


日々、真面目に生きてきたつもりである。


・・ただ、恋愛に関してはおそらく出遅れてしまったのであろう。


いや、正確に言うといわゆる適齢期、と言われる年齢で、世の女性たちの様に必死で相手を探さなかったのだ。


子供の頃から、結婚につながる『運命の相手』というのは、何もしなくてもむこうからやってくるもの、だと勝手に私は思い込んでいたのである。


そして周りがどんどん結婚していく中、自分もそのうち、と悠然と構えていたが、特に日常的な変化は何も起こらず、あ、あれ? となり(どうも違うようだぞ。)と気が付いたのである。


そのような日々を送る中で、とうとう通勤電車の中で現実を思い知らされたのである。


斜め後ろに座る妙齢の二人の女性の会話が聞こえてきたのだ。


二人は若いOLの様だった。


”マジ、30までには結婚できてないとやばいよねー。” ”そーそー、マジいい男いないかな~。”


”早くしないとやばいよ。経理の△谷みたいになっちゃう。” 


”あー、あのお局(笑)。たしかにそれはカンベン。”  



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


なんとも夢のない会話であった。


私自身は<結婚は好きな人とするもの>と思っていたが、どうも世間ではそうではないらしい。


軽くショックではあったが、ここでふと、離れて暮らす年老いた母の事が思い浮かんだ。


父は数年前に他界してしまったが、母は私の事をどう思っているんだろう。


時々連絡を取るくらいで、そういった事は何も言われたためしがないが。


急に自分が親不孝に思えて申し訳なくなり、私は早速、いまさらながら”遅すぎる婚活”を開始した。


・・・・そして冒頭に至る。


わかっている。 これが現実なのである。 


今まで気付かずにぼんやりしていた私がアホだったのだ。


いまさらどうしようもない。 でも・・これが世の中、というものである。


しかしだ。


やはり、ひっかかる。


<そもそも、私はそうまでして本当に結婚したいの?>


別に、このまま一人でもいいのではないのか? 自問自答しながら、いつもの改札を出た私は、ふと・・なんとはなしに、空を見上げた。



空には大きな満月が出ていた。


クレーターまではっきり見えて美しい。


(きれい。)


夜空に輝く月をしばし、じっと見ているうちに・・心が溶けていくのを感じた。


なんだかパワーをもらえたようで、さっきまで少し沈んだ気分だったが・・なんとなく元気が出てきた気がする。


私は私のままでいいい。 周りからどう思われようと。


(よし。)


私は気を取り直して家に向かって歩き出す。


そろそろ、田舎の母が送ってくれた旬の魚が今日あたり届くはずだから、それで晩酌しよう、などと思いながら。



********************************************


*****************************






**************









「陛下。また、地球を見ているのですか?」 「・・・・・・・・・・・・。」


問いかけに答えず、望遠鏡から地球を眺め続ける当主に家臣はため息をついた。


「まあ、あいかわらず・・というかよく飽きませんよね。」


「・・何か言ったか?」


ようやく振り向いた彼に家臣はやれやれ、とでも言いたげな顔で話を続ける。


「また、縁談を断ったそうですね。」「またその話か。気が乗らなかっただけだ。以上。」


そう言って彼はまた望遠鏡に向き直った。


家臣は、はあぁ~、と大げさにため息をついてみせる。


「・・たいそうお美しい姫君でしたのに。もったいない。家柄も申し分なく・・陛下だって”素晴らしい女性だ”とおっしゃっていたじゃないですか・・。わたくしはてっきりこのまま・・。」


「ああ、素晴らしい女性だった。ただそれだけだ。妻にするとは言っていない。」


「陛下。いい加減、身を固めてください。あなた一体いくつだと・・・。」


「今年で400になるかな。」


見た目はずっと20歳のままだがな、と月の帝国の現当主は望遠鏡から目を離さずに笑いながら言った。


そしてかまわずに話し続けた。


「あの蒼い星は・・本当に美しいな。いつまでも見ていて飽きない。・・私の花嫁も・・あの星のように私の心をとらえて離さない女性が良い。結婚というのは、好きな相手とするものではないのか?」


「陛下~(泣)。」



そのときであった。 


あたりが急に騒がしくなった。・・誰かが叫ぶ声。 そして、それに応える声。


そしていい匂いがただよってきた。


「何事だ?」 


「ああ、うさぎ達が広場で餅つきをしているのでございましょう。今夜は『中秋の名月』ですから。」


「なるほどな。」


面白そうだから私も行ってくる、と言うな否や、”陛下”と呼ばれる絶世の美男子は無邪気な笑顔でその場を後にするのであった。



















前々作の『月』と同じ世界観のお話になります。

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