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プロローグ
音楽と笑い声に満ちた夜会が、一瞬で凍りついた。
王太子の声が、黄金のシャンデリアの下で澄んだ刃みたいに広がっていく。
「――リアンナ・ヴァルグレイブ。
そなたとの婚約を、ここで破棄する」
ワイングラスを持つ手が、ほんの少しだけ震えた。意味を理解するまでに、数秒かかった。
視線が集まる。囁き声が波のように押し寄せては、私の靴先で砕ける。
殿下の隣には、黒髪黒目の少女。色の白さがはっとするほど際立って、彼女は困ったように微笑む。
――私は止めたんだけど。そう言いたげに、かすかに首を振った。
足元の床が、静かに沈んでいく音がした。
私はただ、微笑みを崩さないまま立っていた。
――それが、すべての始まりだった。




