第7話「設計者へ至る道1」
俺は ―― 暁宗一郎。
そして今、俺は決断の分岐点にいる。
(このままイベントを進めれば……設計者の正体に、いやでも辿り着く)
それは確信に近かった。
なぜなら、すべてが“誘導”されている気配がするからだ。
この家庭への転生。
父は町医者。
母は蘭学を嗜み、隠された暗号を残す。
しかも、俺はこの家で育ちながら、
イベントに関連する情報を手に入れている。
(これ……敵の罠にしては、ぬるすぎる)
敵側が俺を消したいなら、
そもそもこの環境に落とす理由がない。
親すらイベントの鍵なら、
設計者は俺に“進め”と言ってるのと同じだ。
つまり――設計者は敵ではない。
いや、むしろ“味方”に近しい存在だ。
俺の存在を知った時点で、黒幕は動き始める。
それまでは、この舞台は俺にとって“主役専用マップ”ってわけか。
(それなら……設計者にアプローチするには、イベントを進めるのが最適だな)
ただし、問題はそこじゃない。俺の知力999を支える“素材”
――つまり、父親の関係者からの密貿易情報。それを、どう扱うかだ。
選択肢は2つ。
① 情報をそのまま活用し、歴史修正イベントを解決に向かわせる
② 情報の出所をさらに深掘りし、“設計者の痕跡”を見つける
俺は②を選ぶ。
なぜなら、「イベントクリア」なんて小手先の勝利に全く興味が湧かない。
俺は“運命の手”そのものに触れたい。
(情報をどう扱うかで、イベントの解像度が変わる)
その夜、俺は父の書斎で、密貿易商人の来訪記録を“偶然”発見する。
名前、訪問日、輸入品名。
(この商人、“情報ルート”として設計者が仕掛けたNPCか……?)
俺は泣いた。
「オギャア……(父さん、次にこの商人が来たら話をしてくれ)」
泣き声に込めたのは音波式の思考誘導。
【イベント分岐:密貿易ルートの設計者痕跡を追え】
俺の脳内では、イベント分岐ルートが確定する。
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