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幕末転生 - 転生したら知力だけでガチるしかなかった -   作者: 紫蘭
「Final showdown」

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61/61

第61話「餅田 望(もちだ のぞみ)」

 ゴトン、ガチャン、スゥーーー。


「……はぁ。今日も、エレベーターの“定員”にビクビクする人生か。」


 かつて、僕は“もっちり型”だった。

 それが、かつての僕の日常を端的に示す言葉。


 いや、正確には“もっちり型”なんて名前じゃない。

 本名は餅田もちだ のぞみ

 あだ名は“もちもち”。

 小学生の頃から、ずっとそう呼ばれていた。


「もちもち〜、またおかわりなの〜?」

「もちもち〜、体育は見学かな〜?」


 ……うん、まあ、すべて事実だったけどさ。


 そんな僕が唯一、心を許せたのが“声”だった。

 声だけなら、体型も顔も関係ない。

 中学の放送部、高校の演劇部、大学ではナレーション研究会。

 気づけば、声の仕事を目指していた。


 でも、どこかで思ってた。


「どうせ僕なんかが、誰かの前に立てるわけない」って。


 そんな僕の人生が、ある日、

 大手書店「BOOKSひのくに堂」で、変わった。


 その日、僕はどうしても欲しい本があった。

 タイトルは『本気ゼロ(ガチゼロ)』。

 話題のカードゲーム【ゼロブレイク】の開発秘話が詰まった一冊だ。


「……あった!」


 最後の一冊。手を伸ばした、その瞬間――


「……あっ」


 もう一つの手が、同じ本に触れていた。


「どうぞ、どうぞ!」


「いえ、そちらこそ!」


 譲り合いの精神が、まさかのシンクロ。

 お互いに手を引っ込めて、また出して、また引っ込めて

 グダグダになっている中、やっと状況を変える一言。


「……じゃあ、ジャンケンで決めましょうか?」

(あっ、それ、最初に言えばよかったやつ!)


「いいですね、勝った方が読む、負けた方は……感想を聞く!」


 そう言って笑ったのが、橋本左内はしもと さないさんだった。


 ジャンケンは、僕の勝ちだった。

 でも、左内さんは言った。


「じゃあ、読んだら感想、聞かせてくださいね。

 僕、あのゲームの“実況”の声に興味があって。」


 その一言に、僕の心がピクリと動いた。


「実況……ですか?」


「うん。あのゲーム、ただのカードバトルじゃない。

 魂と魂がぶつかる“物語”なんです。

 だから、語る人の“声”が、すごく大事だと思ってて。」


 その日から、僕たちは本の話を通じて、

 まるで坂本龍馬とCIO代表者の葉月の2人のように仲良くなった。

(※注:58~59話。知らない人はぜひ読んで!)


 左内さんと話すうちに、僕は少しずつ変わっていった。


「望さん、声にすごく“熱”がありますよね。

 でも、もっと自分のこと、好きになっていいと思います。」


 その言葉が、胸に刺さった。


 そこからだった。

 夜のコンビニで唐揚げを我慢し、

 エレベーターじゃなく階段を選び、

 “もちもち型”だった僕は、少しずつ“のぞみ型”になっていった。


 ある日、久しぶりに会った左内さんが、目を丸くした。


「……あれ?望さん、なんか……顔、ちっちゃくなってません?」


「ふふ、実は最近、体重が“本気ガチブレイク”しまして。」


「おおっ、それはすごい!……って、うまいこと言いましたね?」


「でしょ?」


 僕は、初めて自分のことを、ちょっとだけ好きになれた気がした。


 そして、ある日。

 左内さんが、真剣な顔で言った。


「望さん。ゼロブレイクの公式実況、やってみませんか?」


「えっ、僕が……ですか?」


「うん。君の声には、熱がある。

 でもそれだけじゃない。

 “努力して好きな自分になれた人”の言葉には、重みがあるんです。」


「……!」


「君は、自分の“嫌い”を超えた。

 だからこそ、プレイヤーたちの“本気”を、誰よりも伝えられると思うんです。」


 その瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。


「……やります。僕に、やらせてください。」


 そして、場面は再び、模擬戦へ。


「さあ、始まりました!ゼロブレイク模擬戦!

 実況は私、“元もちもち”こと――餅田 望がお送りします!」


 その声を聞きながら、左内さんは静かに目を閉じ、

 固く握った拳を実況席に向かってそっと掲げた。

 その表情には、誇らしげな笑みが浮かんでいた。


「ゼロを超えた先に、物語がある。

 それを伝えるのが、僕の仕事です!」


 マイクを握る手は、もう震えていなかった。

 その声は、まっすぐに、誰かの心に届いていた。


「……左内さんの話だけじゃ、まさか思わなかったよ。

 餅田くんが……女の子だったなんて。」


 俺は驚きを隠せず、つい口にしてしまった。


「ふふっ、そうだね。でも、“声”には性別なんて関係ないでしょ?」


 左内さんは、いつもながらに格好良く、メガネをクイッと上げながらこたえる。


「……確かに、そうだよね!」


 俺は思わず、力強くうなずいた。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

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