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幕末転生 - 転生したら知力だけでガチるしかなかった -   作者: 紫蘭
「Final showdown」

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56/61

第56話「新型ChronoSeed」

 研究室の奥、メンテナンススペースの一角。

 工具の音が止んだその瞬間、静寂を破るように声が響いた。


「もう完成したのではないですか?新型ChronoSeedクロノシードが…!」


 声の主は、左内さないさん。

 姿は見えない。けれど、その声の弾み方でわかる。

 彼が今、どれだけ高揚しているかが…。


 俺は、手にしていたスパナをそっと置いた。


「……まだ、起動試験はしてませんよ」


 そう返すと、奥から笑い声が返ってきた。


「試験なんて、もう必要ないでしょう?

 だって、君が組んだんだ。失敗するわけがない。」


 左内さんの声からは、以前と変わらない信頼がにじんでいた。

 それが、何よりも嬉しかった。


 というのも先日、対決方法の件で、

 左内さんと清隆さんに提案してもらった案を、

 俺の一存で廃案にしてしまったからだ。

 そのことを、改めて二人に詫びたばかりだった。


 もちろん、あの案もよく考えられていた。

 俺たちも、何度も話し合って、悩んで、最善を探した。

 でも、あの案は“ジャッジの在り方”だけに焦点を当てたものだった。


 俺は、それだけじゃ足りないと思った。

 対決の意味、参加者の心情、観ている人たちの受け取り方。

 すべてを踏まえて、総合的に判断したつもりだった。


 そのとき、左内さんはこう言ってくれた。


「わざわざ声をかけてくれて、ありがとう。

 私たちの意見よりも、君の視点のほうがずっと広かった。

 だからこそ、君の出した結論に、自信を持ってほしい。

 私は、君の思いを信じてるよ」


 その言葉が、今も胸の奥で静かに響いている。


 とにもかくにも、動力の蒸気機関は、すでに新型君に組み込み済みだ。

 構造的な調整も終わっていて、今はテスト段階に入っている。

 でも、ここまでの試験運転で、ひとつ確かなことが分かった。


 この新型君の動力は、高温かつ高圧の状態で初めて本来の性能を発揮する。

 つまり、蒸気機関に代わる動力が一般的になった時代から、

 すでに動力が存在している時代へと向かう分には、特に問題はない。

 けれど、この動力を安定して継続的に使おうとするなら、

 それなりの頻度でのメンテナンスが不可欠になる。


 だから、新型君をただ起動するだけなら、何度でも可能だ。

 けれど、時間を越えたり、過去へ遡ったりするような本格的な運用となると、

 その使用回数にはどうしても限界がある。おそらく数回が精一杯だろう。


 まあ、それはそれとして。

 澪が人間の姿に戻ってからというもの、作業の進行速度がまるで違う。

 体感で言えば、作業効率はおよそ3倍。

 いや、正確には2.7倍くらいかもしれないけれど、

 とにかく、彼女がいるだけで空気が変わるのは確かだった。


 今回の新型君には、複数人での搭乗が求められていた。

 だから、設計段階から運転席と助手席を含めた5人乗りを想定していた。

 イメージしたのは、一般的な自家用車。

 2代目君よりも横幅は広くなったが、

 そのぶん、どこか粗忽で愛嬌のあるフォルムになったと思っている。


 動力の耐久性を考慮して、 “念のために行う飛行テスト”は、

 念のために今回は見送った。

 無理に飛ばして壊すより、確実に仕上げる方が大事だ。


 あとは、外装のカラーリングを仕上げるだけ。

 俺の好みで、外部は深みのあるBLACKに、

 細部にはアクセントとして赤を差し込んだ。

 その配色を思い浮かべながら、完成を心待ちにしていた。

 ……はずだったのに。


「この子(新型ChronoSeedクロノシード)のカラーリングさ、

 私に任せてもらえないかしら。

 前の子(ChronoSeedクロノシードVer.2067)は時間がなくて、

 そこまで気を配れなかったからね。」


 そう言って、満面の笑みを浮かべる澪さんが、

 いつの間にかすぐそばに立っていた。


(無理無理!あの笑顔を正面から否定する勇気なんて、俺にはない…)


 俺は、作業を続けるふりをしながら、

 事前に用意していた塗装具一式を、

 誰にも気づかれないように そっと処分しようとしていた。

 ──その時だった。


 ドキンコッ!!


 心臓が跳ね上がるような音が、耳の奥で鳴った。

 俺の名前を呼ぶ声が、背後から飛んできたのだ。


「颯真!よろしい?かしら。私が色を決めても。」


 声をかけたのは、もちろん澪さん。

 俺は、深く息を吸い込んで、平静を装う。


【内部状態:動揺 68%】

【外部出力:表情制御ON──声、一定・視線、固定】

【演算指令:平静モード維持──“問題ない”と応答】


「問題ない。」


 なんとか、ピンチをやり過ごした。

 ちょっとだけ、いや、かなり残念ではあるけれど、

 ── それもまた、悪くないかもしれない。そう思えた。


 ──翌朝。


 研究室の扉を開けた瞬間、思わず足が止まった。

 朝日を浴びて静かに佇む、新型ChronoSeedクロノシード

 その外装は、まさしく俺が思い描いていたカラーリングそのものだった。

 深いBLACKに、細部を彩る鮮やかな赤。

 まるで、夜明け前の空に燃える焔のような──そんな姿。


「……澪さん、気づいてたんだな」


 俺の気持ちを、言葉にしなくても察してくれていた。

 あのときの笑顔の裏に、こんな優しさを隠してたなんて、ずるいじゃないか。


 俺はChronoSeedクロノシードの前に立ち、拳を軽く握った。


「よっし!決めた!

 今日から君は──  ChronoSeedクロノシードVer.幕末ばくまつだ!」


 その名前には、「時代を越えて進む」という決意を込めた。

 過去と未来をつなぐ、大切な役目を持った機体。

 いま、時をこえる旅が──ここから始まる。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。


━━(付録)守護者紹介 ≪水属性≫ ━━━━━━━━━━━━━

・No11/30(水属性)(レア1)(速さ5)

守護者名:【沈黙ノ花精・睡蓮】詳細:水面に咲く静寂の守り手 

与ダメ:0、回復:2

特殊効果:このカードを対戦中バトルフィールドに

     合計7回出せたら無条件で勝利

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No12/30(水属性)(レア1)(速さ6)

守護者名:【深淵触手・クラーケン)】詳細:北海に棲む巨大な海獣

与ダメ:1 復:1

特殊効果:次の2ターン継続回復+1

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No13/30(水属性)(レア1)(速さ6)

守護者名:【潮路測量士・伊能忠敬】詳細:全国の海岸線を測量した探究者

与ダメ:1、回復:2 

特殊効果:このターン、相手が火属性の場合のみ特殊効果を無効、

     相手の継続の攻撃、ターン数は含まない

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No14/30(水属性)(レア2)(速さ6)

守護者名:【渡河雷雨・張遼】詳細:三国志で豪雨の中を突破した猛将

与ダメ:1、回復:2 

特殊効果:相手が水属性の場合、相手の特殊効果無効、

     次の2ターン継続回復+2

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No15/30(水属性)(レア2)(速さ8)

守護者名:【海嵐荒神・スサノオ】詳細:日本神話の海と嵐の神

与ダメ:2、回復:2 

特殊効果:速さが相手以上の場合、相手の通常攻撃のみ無効

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


・No16/30(水属性)(レア2)(速さ7)

守護者名:【東方護水龍・青龍】詳細:幻惑の舞手

与ダメ:2、回復:2 

特殊効果:ターン開始時に相手より体力ゲージが、

     1ポイントでも下回るとき、与ダメが4になる

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No17/30(水属性)(レア2)(速さ3)

守護者名:【海底王座・ポセイドン】詳細:ギリシャ神話、海神

与ダメ:1、回復:3 

特殊効果:このターンの全相手の特殊効果を無効、

     相手の継続の攻撃、ターン数は含まない

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No18/30(水属性)(レア3)(速さ先)

守護者名:【水影飛将・源義経】詳細:身軽さで敵を翻弄、伝説の武将

与ダメ:1、回復:4 

特殊効果:必ず先制回復できる、

     さらに相手のターン終了時に追加回復+1

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No19/30(水属性)(レア3)(速さ5)

守護者名:【潮目の智将・毛利元就】詳細:水陸を制する老練の戦略家

与ダメ:2、回復:4 

特殊効果: そのターンの全相手の特殊効果を無効、継続も含む

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

・No20/30(水属性)(レア4)(速さ4)

守護者名:【第零守護・水天】詳細:火山に棲む不死鳥

与ダメ:2、回3,:10(1回/1試合) 

特殊効果:1回だけ全回復する、その場合必ず後攻めになる

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

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