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幕末転生 - 転生したら知力だけでガチるしかなかった -   作者: 紫蘭
「Ally」

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第49話「再集結(前編)」

 1853年7月8日。明け6つの鐘が鳴る頃、俺は顔を洗って気持ちを整えた。

 胸の奥でざわつく高ぶりを、なんとか抑え込みながら朝飯をかき込む。


 ――今日は特別な日だ。

 細かいことはどうでもいい。俺たち5人にとって、

 約6年ぶりに顔を合わせる「再集結の日」なのだから。


 黒船が浦賀に来ることは、もう分かっている。

 けれど、それを知っている自分が妙に落ち着いているのが不思議だった。

 実際に目にしても、きっとそこまで驚かないだろう――そんな予感がある。


 むしろ気になるのは、自分の反応より仲間たちの顔だ。

 直さんはどうするだろう。左内さんは冷静に分析するに違いない。

 寡黙で冷静な清隆さんは、どんな表情を見せるのか。

 そう考えるだけで、胸の鼓動が少し速くなる。

 浦賀の海に迫る黒船よりも、仲間たちとの再会の方が、

 俺にとってはずっと大きな出来事なのだ。

 そんな訳で、俺は前の日に既に浦賀入りしている。


 気づけば時は流れ、俺は12歳になっていた。

 この6年間、俺は後悔しない自分でいられただろうか?

 昨日と同じ今日を、ただ繰り返していただけじゃなかっただろうか?

 そんな問いが、ふと胸に浮かぶ。


「頑張った」なんて言葉は、最低でも自分自身が他者目線で、

「よくやった」と思えるくらいじゃないと、

 その言葉を使う資格はない――それが俺の持論だ。


 それに結果として、俺たちは本当に成長できているのだろうか?

 6年という時間の重みを、ちゃんと背負えているのだろうか?

 と最近、考えることが多くなっているように思う。


 でも、実際に年齢だけで見れば、まだまだ若い。

 俺、宗一郎(=颯真)は12歳。 直さん――あの龍馬さんは18歳。

 左内さんは19歳。 清隆さんは13歳。

 こうして並べてみると、まだまだ「ヤングな顔ぶれ」だ。

 けれど、その幼さの奥に、確かに積み重ねてきたものがある。


 ふとそんなことを考えていた、その瞬間だった。

 旅籠屋はたごやの入り口で、

 宿の主人が誰かと話している声が耳に届いてきた。


「ここに――暁宗一郎という者は、来ていませんか?」


 ……え、俺の名前!? やばい展開じゃんこれ。

 まさかここでCIO登場とか、完全に油断してた。

 とっさに隠れる場所を探し、戸棚の後ろへ飛び込む。


(くっ……さすがにバレるか。詰んだな……)


 直感がそう告げた直後、俺の部屋の扉が、

「コン、コン、コン。」と優しく3度ノックされた。


「暁さん、お客様ですよ。」


 主人の声に、俺は全神経を研ぎ澄ませる。


「今、お出になられているみたいですね。」


 主人がそう旅人に告げると、旅人は肩を落とし、残念そうに言った。


「ここにも、彼はおられないのか……」


 ……いや、いるんだけどね。戸棚の後ろに。

 俺は息を殺してそのやり取りを聞いていたが、やがて警戒を解いて姿を現した。


 そこに立っていたのは――黒紋付き羽織に袴、きっちり結った髷。

 派手さを避けた武士姿。 冷静沈着な性格を映すように、

 落ち着いた雰囲気を漂わせている。


 その旅人は――橋本左内だった。


「おられたんですか? いやぁ、今回もハズレかと思いましたよ。」


「左内さん……ご無沙汰してます。にしても、

 見違えるほど大人になりましたね。

 でも、集結時間にはまだだいぶ余裕があるはずですが。

 どうしてこんなに早く?」


「私の計算では、遅刻しないように道中を進めば

 6時間前に着く予定だったんです。

 ですが……それより1時間早く

 浦賀に到着してしまいましてね。」


 そう言って、彼は眼鏡をクイッと上げた。


(……いや、それでも速すぎるだろ!)


 ツッコミを入れそうになったが、久しぶりの再会だったので、

 俺はぐっと飲み込むことにした。


 昼飯時だったこともあり、俺と左内さんはそば屋へ向かった。

 店内は人でごった返していて、空席なんてほとんどない。

 結局、相席することになった。


 目の前でそばをズズッとすすっているのは――羽織袴に帯刀した少年。

 歳の頃なら俺と同じくらいか……と思っていた、その瞬間。


「あれ? 清隆さん!?」


 驚きすぎて、思わず声が出た。


「おいは清隆じゃっど。ひさかぶいじゃな、

 2人とも。元気しちょったか?

 ……じゃっどん、油断しすぎじゃなかか。

 おいは店ん中入った時から気づいちょったど。

 人ん多かとこじゃ、周囲ん確認は怠っちゃいかんど。」


 清隆さんは淡々と忠告してくる。 その言葉は妙に重く、

 俺と左内さんは思わず背筋を伸ばした。


 やがて俺たちが注文しようとすると、清隆さんが当然のように割り込んできた。


「かけそば、1杯追加で。」


 ……いや、自然に混ざるなよ。 そう心の中でツッコミを入れつつ、

 結局3人で向かいあって、そばをすすることになった。


 昼食を終えた俺たちは、浦賀沖を一望できる場所へ移動した。

 3人並んで、ただ無言のまま――カモメが舞う港町の風景をのんびりと眺める。


 鐘の音が鳴り響き、気づけば約束の時間まであと30分。

 日が暮れるのは、まだ4時間ほど先だ。


「直さんと澪は、まだ来ないね……」


 俺がぽつりと呟いた、その瞬間。


「昨日からずっといるよ。旅籠屋にいるときからね。  

 颯真に気づかれないようについて行ったんだよ。」


 背後から澪の声。まるで探偵みたいな登場に、心の中でツッコミを入れる。

(いや、探偵か! 確認系のツッコミを入れておく!)


 そして――沖に姿を現す巨大な船影。

 4隻……いや、正確には蒸気船2隻を含む艦船4隻。


 瞬く間に人だかりができ、港町はざわめきに包まれる。

 初めて目にする戦艦に、人々は驚き、恐れ……いや、どう見ても楽しんでるぞ!


 ドォン――! 号令とともに数十発の空砲が轟く。

 事前に幕府から通告があったため、混乱は一瞬。

 やがて人々はその音を花火とみたてて、笑顔で歓声を上げる。


 左内さんと清隆さんも、白い歯を見せて笑っている。

  ……完全に楽しんでるな、この2人。


 さらに奥から、はかま姿に草履を履いたガタイのいい青年が現れる。

 顔を上気させ、豪快に手を振りながら叫んだ。


「宗ちゃん、こりゃあ大きな商売の元になるかもしれんぜよ!」


 その瞬間――直さんが到着。 6年ぶりに、5人が揃った。


 黒船来航――歴史を揺るがす港町で、再び集結する5人。  

 友情か、商売か、それとも運命か。物語は、ここから加速する!

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。


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