表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幕末転生 - 転生したら知力だけでガチるしかなかった -   作者: 紫蘭
「Ally」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/54

第45話「クリスマス(番外編)」

 この話は、浦賀再集結の約束を交わす前の出来事である。


 師走の寒い日、珍しく5人全員が宗一郎の部屋でくつろいでいた。

 湯気の立つ茶碗を手に、静かな時間が流れていたそのとき、

 ――宗一郎がふと龍馬に尋ねた。


「直柔さん、この時代って、クリスマスってあるの?」


 その声は何気ないものだったが、部屋の空気が少しだけ動いた。


「なんじゃと?そのクリスマスっちゅうがは?うまいがかえ?」


 澪が説明のために、ふっと微笑んで話に加わった。


「いかにも、龍馬君らしいね。颯真、この時代にはね、

 日本にはまだ“クリスマス”という概念はなかったのよ。

 始まりとされているのは、ある団体が生活に困っている、

 人たちに 果物やパン、おもちゃなんかを贈ったのが最初みたい。

 それが、明治の終わり頃の話ね。」


 黙って聞いていた左内が、澪に静かに尋ねる。


「贈り物をする――つまり“プレゼント”を渡すというのも、

 クリスマスのひとつという解釈で、間違いないかな?」


 澪は、なんだかいい流れになってきたかも…と内心思いながら、

 優しく答えた。


「そうだよ、左内さん。プレゼントの習慣が根付いたのは、

 大正時代以降なの。最初は人形とか文房具が多くて、

 昭和になると、子供たちにはゲーム機やソフトが人気になったわ。

 最近では、手作りのものも喜ばれるようになってる。それからね、

 クリスマス当日には鶏肉料理やケーキという西洋のお菓子を、

 みんなで食べて、クリスマスパーティーを開くことも多いのよ。」


 それを聞いた清隆が、目を輝かせて提案する。


「みんなでプレゼントば持ち寄って、

 クリスマスのパーティーばせんね?」


 俺はその言葉に頷きながら、一つ付け加えた。


「よし、決まりだ。その日はみんな予定を空けておいてくれ。

 プレゼントは、誰が誰に渡すか分からないようにしよう。

 くじ引きで決めるんだ。それぞれ、相手のことを考えて、

 ――  心を込めて選んでほしい。」


 12月25日の朝。庭の松の枝には白い雪が静かに積もり、冬の光を反射していた。

 宗一郎は台所に立ち、粉をふるい、卵を泡立て、甘い香りを漂わせながら

 何やら真剣に手を動かしていた。彼の指先は器用に材料を重ね合わせ、

 形を整えていく。傍から見ればただの料理の準備だが、その眼差しには

 特別な挑戦の色が宿っていた。


 やがて宗一郎は、机の上に包みを置いた。赤い紐で結ばれた袋の中には、

 彼が心を込めて用意した贈り物が隠されている。


 時間になると、仲間たちが次々と宗一郎の部屋へ集まってきた。

 龍馬の袋は小ぶりながら、床に置いた瞬間に「ドスン」と重みを

 感じさせる音を響かせた。

 左内、宗一郎、澪の袋はよく見かける贈り物用の袋で、形も穏やか。

 一方、清隆の袋は大根よりも太く長い、不思議な形状をしていた。


 どう始めればよいか戸惑う空気の中、澪が一歩前に出る。


「私が『メリー』って言ったら、

 男の子たちは『クリスマス』って返すのよ!」


 澪の声に導かれ、皆が笑顔を交わす。


「メリー!」 「クリスマス!」


 その瞬間、口々に土佐弁や薩摩弁が飛び交う。


「なんちゃあ楽しいちや!」

「なんかいかおもしろか!」


  笑い声が部屋を満たし、温かな空気が広がった。


 市場で買った唐揚げや焼き鳥などが振る舞われると、

 普段は見せない無防備な表情が次々と現れる。

 食事を終えた頃合いを見計らい、宗一郎が立ち上がった。


「部屋の隅に置いた袋から、自分のを取ってきてくれ。」


 そう告げると、彼は続けて「プレゼント大会の始まりだ。」と宣言した。


 くじはかまぼこ板に名前を書き、風呂敷の下から手探りで選ぶ仕組み。

 最初に龍馬が挑む。


「みんなぁ考えちゅうはずやき、誰のでもえいけんど、

 今のわしの気分に合うががえいな。」


 そう言いながら板を抜き取り、胸の前で突き出す。

 一瞬の沈黙。宗一郎がすかさず声をかける。


「直柔さん、板、裏向きだよ。」


 場が和み、澪が板を確認して告げる。「くじは清隆君だね。」


 澪は清隆を龍馬の前へ導く。清隆は袋を手渡すが、

 龍馬が一瞬落としそうになるほどの重み。

「結構重いな…」と龍馬は心の中で呟いた。


 視線は自然と清隆の袋へ集まる。

 この瞬間から始まった大会は、

 思いもよらぬ展開へと進んでいく予感を漂わせていた。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ