第43話「新型の方向性」
先日、あの3人から立て続けに文が届いた。
それぞれ、もう出身藩に戻っているらしい。
龍馬は剣術のさらなる鍛錬に。左内は医学と思想の研鑽に。
清隆は砲術と機構の実験に。――みんな、あの夜に、
交わした約束を胸に、それぞれの道を歩き始めていた。
宗一郎はその報せを受け取り、静かに頷いた。
「やっぱり、動き出してるな。」
仲間たちの覚悟に触れたその瞬間、俺の中にも火が灯った。
――俺も、負けてられない。
宗一郎は机に向かい、ChronoSeedの設計図を広げた。
初代の試作型は、時間移動と空間移動を主軸に据えた
シンプルな構造だった。
あのときは、ただ「飛ぶ」ことが目的だった。
だが、今は違う。 2代目、Ver.2067は防御特化型。
もし俺が命を落とした場合、澪がその命を代償にAI化し、
あらかじめ設定された時代へ転生する。
――そんな非常手段を組み込んだ設計だった。
澪が乗ってきたのも、このVer.2067だ。
そのまま回収して使えば、確かに効率はいい。
だが、それでは意味がない。 宗一郎はそう感じていた。
「今回のコンセプトは何だ?」
自問しながら、俺は半紙を取り出し、思いつくままに言葉を書き連ねていく。
――未来へ行く。
――2067年に行く。
――仲間が搭乗できる設計にする。
――意識だけ飛ばすのではなく、身体ごと移動する。
――命を代償にするような仕組みは、もう使わない。
――ChronoSeedは、設計者である俺とリンクし、
ゲーム世界の構築にも柔軟に対応できるようにする。
「ただの移動装置じゃない。これは、未来をつなぐ俺たちの“相棒”だ!」
宗一郎はそうつぶやきながら、
設計図の余白に新たな回路構想を描き加えていく。
だが、構想だけでは動かない。
実際に作るとなれば、起動系統やエネルギー制御、
時空座標の安定化など、技術的な課題は山積みだ。
そこで宗一郎は、澪に相談することにした。
「澪、今回の構想、どう思う?」
俺がそう問いかけると、澪は一瞬だけ沈黙した。
まるで言葉を選んでいるように見えた。
「……構想そのものは、理論的には成立してるよ。ただし――。」
「ただし?」
「起動に必要なエネルギー量が、現時点での技術では確保できないよね。
特に、複数人を同時に転送する場合、
時空座標の安定化処理が指数関数的に複雑化するのね。
さらに、意識と身体を同時に転送するには、
ChronoSeed本体の演算処理能力を、
最低でも3.7倍に拡張する必要があるの。
……現状では、起動すら困難だと思うわ。」
宗一郎は、しばらく無言で澪の言葉を受け止めた。
想定していた以上に、壁は高い。 だが、それでも――
「だったら、乗り越えるしかないな。」
俺はそう言って、再び設計図に向き直った。
仲間たちはすでに動き出している。
あの夜、交わした約束は、ただの夢物語じゃない。
未来を動かす力は、きっとこの手で掴める。
そのために、今、やるべきことがある。
そして宗一郎は、静かに決意する。
この時代で、未来をつくる。誰よりも先に。
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