第40話「ある計画」
龍馬が湯を浴びて戻ってきたことで、これで5人全員が揃った。
(厳密に言えば「4人と1匹」なのだが……まあ、そこはいいか。)
澪が一歩前に出て、場を見渡しながら言った。
「発言のある人は、挙手をお願いね。」
どうやら、進行役は澪が務めてくれるらしい。
俺は静かに手を挙げた。
「俺が一番に考えているのは、この戦いで誰も死なせたくないってことだ。
CIOとどう向き合うにしても、それだけは譲れない。」
その言葉を聞いた澪は、少しだけ目を伏せてから、全員に視線を向けた。
この発言が、今回の議論の前提になると判断したのだろう。
彼女は、全員に意見を求めた。
清隆は腕を組んだまま、静かに口を開いた。
(ん?…挙手しないスタイルなんですね…清隆さん。)
「理屈からしても、そいは正しかど。命ば守るっちゅうこつは、
主義主張の正当性ば示す最低限の条件じゃっど。
……そいを前提にして、準備ばせんといかん。」
左内は椅子に深く腰掛けたまま、眼鏡の奥から俺を見つめていた。
(その時、俺はふと別のことを考えてしまっていた。
左内さん、欲しがってた眼鏡、ついに買ったんだ。
粋だな、左内さん――と秘かに思っていたのは内緒だ。)
「……君の言う通りだ。CIOの構造は、知力を監視するという名目で、
主義や主張の可能性そのものを排除する構造になっている。
だからこそ、『死者を出さずに対決する』という前提は、
その制度の正当性を根本から問い直すための、
必要不可欠な一手となる。」
龍馬は口元をゆるめて、軽く笑った。
「宗ちゃんは、もうCIOに命ば取られちゅうきのう。
ほいたら、やっぱり宗ちゃんらしいのう。命張るがは、
わしらの役目やけんど――誰も死なせんっちゅうがは、
……えい目標や。 わしも乗ったぜよ。」
(宗ちゃん……別にいいんだけれどね。
呼ばれ方なんてさ。にしても、龍馬さんは、
相手の懐に入ってくるのが本当に上手いなぁ。)
澪は再び頷いた。
「……うん。そうだね。誰かが死ぬようなやり方じゃ、
勝っても意味がない。 私も、そこは絶対に守りたい。」
全員が同じ意見だった。
澪は進行役として、次の段階へと話を進めることにした。
「じゃあ、その前提でルールを整理しようか!」
そして、宗一郎に補足意見を求めた。
「俺の中では、まだ課題も問題点も多い。 それでも、できることなら、
――今、俺に適用されているこのゲーム世界の仕組みを応用して、
5対5の勝ち抜き戦という一度きりの形式で、決着をつけたいと思ってる。
もし世界の人々がそれを望むなら、毎年開催して、その都度、
評価や投票をしてもらう形にしてもいい。
他にも、細かい設定や仕組みについては、いろいろ考えてるところだ。」
俺が考えていた計画の一部を、みんなに共有した。
澪は、少し微笑んで言った。
「……うん、颯真なら、そう言うと思った。 でも、それって“遊び”じゃなくて、
“制度”にするってことだよね。 だったら、ちゃんと守れる仕組みにしなきゃ。
私も、手伝うよ。」
その言葉に続いて、龍馬、左内、清隆が順に口を開いた。
「おう、宗ちゃん、またおもろいこと言い出したのう。
一度きりの勝負で白黒つけるっちゅうがは、潔うてえい。
けんど、毎年やるっちゅうがは……それもまた、時代に合うちゅうことか。
わしも、乗ったぜよ。」
「……主義主張を暴力で裁かず、構造で可視化する。 君の提案は、
CIOの“監視による秩序”に対する、最も洗練された対抗手段だ。」
「一度きりの勝負で、主義主張の正当性ば測るっちゅうか。……おもしろか。
じゃっどん、制度化すっなら“再評価の余地” も要るじゃっど。
毎年やるっちゅう案は、理にかなっちょる。」
それぞれが自分自身の言葉で賛同を示してくれた。
次は、自分に何ができるかを考え、そしてそれぞれの役割を
全うしてもらえるように、担当を決めていこう。
この戦いを、誰も死なせずに終わらせるために。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。




