第4話「宗一郎、外交イベントに挑む」
イベントが解放された。
【イベント発生:南京条約阻止】
清王朝の主権を侵害されないようにせよ。
難易度:SSS
状態:赤子
(……いや、コレ無理ゲーすぎるだろ)
俺はまだ赤ちゃん。
言葉も話せない。
歩けもしない。
なのに、いきなり国際外交イベントってどういうことだよ。
でも、
俺は知力999。
普通のプレイヤーならイベントクリアを目指すだろう。
だが俺は違う。
イベントの“裏”を読む。
このイベントは、俺に対するこの幕末世界からの“初対面のご挨拶”だ。
つまり、誰かがこの世界を設計し、俺に課題を与えている。
(このイベントの制作者……必ずいる)
俺はまず、
イベントそのものの“設計者”に繋がる手がかりを探すことにした。
南京条約は1842年。今は1841年。
つまり、条約締結の前年。歴史が動く直前だ。
このタイミングでイベントが発動したということは、
俺が何かを“変えられる”可能性があるということ。
だが、知力999は諸刃の剣。
目立ちすぎれば、幕府に目をつけられる。
「赤子が異常に賢い」なんて噂が広まれば、
すぐに寺社奉行や南町奉行が動き出すだろう。
知力999のリスク管理は必須になる。
だから俺は決めた。
「必要な時期まで、知力は隠す。
噂になるな。目立つな。だが、確実に動け」
この世界は、情報戦だ。
俺は赤子のまま、
裏で歴史を“微修正”していく。
まずは、第一の行動として家族の情報を集める。
父は町医者。母は蘭学に理解がある。
この家系なら、清との外交情報にアクセスできる可能性がある。
そして、俺は泣いた。
「オギャア……(母さん、蘭学書を読んでくれ)」
泣き声に込めた微細な音程変化。
それは、母の記憶に残る“違和感”となり、
彼女を蘭学書へと導く“知力誘導スキル”の第一歩だった。
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