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幕末転生 - 転生したら知力だけでガチるしかなかった -   作者: 紫蘭
「Ally」

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第35話「憂い」

 ある日の午後。

 知性監視機構――CIOの本部地下にある第3会議室。

 この部屋が使われるのは、組織にとって“深刻な憂い”が生じたときだけ。

 そして今日、その条件は確かに満たされていた。


 壁一面のモニターに映し出された映像を、

 数人の男たちが無言で見つめている。

 その中でも、中央に座る一人の男――CIOの中枢に位置する人物は、

 誰よりも深く眉をひそめていた。


 映像の中に映るのは、蒼井颯真。

 ――いや、今は暁宗一郎と呼ばれている男だ。

 彼は凶弾に貫かれ、致命傷を負っているはずだった。

 だがその状態で、彼は女性――如月澪を狙った銃弾を、

 三発すべて回避させていた。


「……なんだ、この動きは」


 男は茫然と呟く。

 その声には、驚愕と、わずかな恐怖が滲んでいた。


 人間の反射速度ではない。予測でもない。

 まるで、時間そのものを巻き戻し、

 最適な選択肢を選び直しているかのような挙動。


「……てか、チートじゃないのか」


 珍しく声を荒げた男は、数年前の報告書を思い出していた。

 あの事件――蒼井総裁と如月局長補佐は即死。

 そう記されていたはずだった。

 だが今、目の前の映像はそれを否定している。


 報告書は、最近になって何者かによってすり替えられた。

 ――そう考えるのが自然だった。 男は確信する。


「……誰が、何のために?」


 CIOの立場からすれば、すり替え前の情報

 ――つまり蒼井と如月が生存していた事実を掴ませておいたほうが、

 組織に与えるダメージは大きい。

 それは、CIOの信頼性を揺るがす“爆弾”になり得る。

 だが、それを隠したのは誰なのか。

 新政府側にしても、この情報が漏れて得をするとは思えない。


「……澪」


 男はぽつりと呟いた。

 その名に、誰も反応しない。

 だが、彼の声には確かな感情が宿っていた。


 如月澪――行方不明となった彼女は、蒼井総裁の婚約者であり、

 学生時代から特異な存在だったらしい。

 彼女がAI研究者という肩書を持っていることは、

 CIOの中でも共有されている情報だ。

 彼女の設計するものは、すべてAIとの協調を前提として作られている。

 それが、CIOが彼女に対して抱いていた共通認識だった。


 だが今、目の前の映像は、それが“人間を超える何か”を

 生み出したことを示している。


「……とんでもないものを作ったものだ」


 男は椅子に深く沈み込み、額を押さえた。

 演算能力――それは、人間の知性の限界を超えた力。

 そして今、暁宗一郎の中で、

 それは“制御不能”な領域に達しているのだろう。

 このままでは、CIOは崩れる。いや、世界が崩れる。


 しかし、この時点ではまだ男は気づいていなかった。

 いや、気づけるはずもなかった。

 澪が蒼井颯真の転生先に、澪自身をAI化することで

 “ゲーム世界”を展開できることなど。


 男は立ち上がる。 彼の脳裏には、ある人物の顔が浮かんでいた。


 演算を“止める”可能性を持つ者。

 いや、正確には――演算能力そのものを阻害できるかもしれない者。

 かつてCIOに籍を置き、今はその外にいる男。 彼ならば、可能性がある。


 男は端末を操作し、暗号化された通信回線を開いた。

 記憶を頼りに、接触コードを入力する。


 画面に表示されたのは、懐かしい名と、冷たい応答。

 《応答を確認。目的は?》


 男は一瞬、言葉を選んだ。 だが、迷いはなかった。

「……想定内の事態だが、急ぎ予め手を打っておきたい。協力してもらう。」


 通信は一拍の沈黙の後、静かに応答した。

 《了解。場所は?》


 男は、モニターを見つめながら答えた。

「第3会議室。CIO本部。……急いでくれ。」

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。


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