表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幕末転生 - 転生したら知力だけでガチるしかなかった -   作者: 紫蘭
「Prologue」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/36

第25話「夜明け」

夜が白み始めていた。

空にはまだ星が瞬いているけれど、

東の空には、ほんのりと朱が差し始めていた。


朝もやが町を包み込む中、遠くで鶏の鳴き声が響く。

静かだった世界が、少しずつ目覚めていく気配。

その空気に、俺はふと息を吐いた。


「……まだ、言うべきことはあるかもしれないけど。

 とりあえず、今はこのくらいでいいかな。」


澪がぽつりと呟いたその言葉に、俺は頷いた。

俺の方も、聞くべきことは聞けた……と思う。


ただ、澪の話の中で、どうしても気になる点があった。

彼女はそれに気づいているのだろうか。

俺は、やんわりと思念で問いかけてみた。


「……あ、やっぱり颯真も気になってた?」

 澪はくすっと笑ったような仕草をした。


「私が颯真の知力を封印したとき、

 声が思ったより大きかったことよね。あれ、ちょっと笑えるよね」


その瞬間、俺は思った。

――ああ、この人、こういうところは天然なんだな。


「……嘘よ、嘘」

「私も気になってたわ。CIOの責任者交代の件。」


さすが俺の右腕。

俺と同じ懸念を抱いていたとは、頼もしい限りだ。


颯真――いや、今の俺は暁宗一郎。

目を閉じて、思考を巡らせる。

外から見れば、ただの赤ん坊が眠っているようにしか見えないだろう。

けれど、俺の中では、未来への対抗策が着々と組み立てられていた。


設計者――いや、この件の謎は、ほぼ解けた。

さて、次はどう動くか。


「このまま、2067年に戻るか……?」 でも、どうやって?


ChronoSeed。

けれど、現行モデルは俺を守ることに特化して作られているらしい。

しかも今の俺は、赤ん坊だ。

こんな姿で戻ったところで、CIOに命を狙われるだけだ。


それに、今のこの世界線には、2067年の俺は存在しない。

タイムワープとか、ほんと面倒くさいんだよな……


とりあえず、最終目標は2067年に戻ること。

なぜなら、そこには俺の考えに賛同してくれた人たちがいた。

歴史が変わっていたとしても、彼らのために役に立てるなら、

総裁でも代表でも、なんでもやってやる。


だから俺は、戻る。2067年へ。


そのために、今はこの幕末で知力を武器に、

あらゆるものを吸収していく。


特に哲学界は、思想の転換期。

社会の急激な変化と科学の発展を背景に、

ニーチェやマルクスが個人・歴史・価値を問い直す時代。

哲学が「生きる意味」や「社会変革」へと関心を移したこの時代は、

2067年では味わえない生の学問に触れる絶好のチャンスだ。


俺は、この環境で知力を磨く。暁宗一郎として。


それに、どうせ戻るなら

―― 幕末から維新にかけて処刑や暗殺された者たちの中で、

俺の考えに賛同してくれる者がいれば、連れて帰るつもりだ。

もちろん、倫理的に犯罪を犯していない者に限るけどな。

つまり、仲間探しだ。


そして、これは最初から決めていたこと。

――澪を生き返らせる。

AI化した猫から、人間の姿に戻す。


幕末の世界で知に触れ、CIOに対抗できる仲間を探し、

澪を元に戻す。それが、俺が進むべき道だ。


話が一区切りついた頃、

白猫――澪が眠そうに目を細めた。


「さて、そろそろ寝るか……いや、もう寝る時間じゃないな。」

「じゃあ、朝飯でも炊くか。」

俺は、心の中でそう呟いた。――夜明けは、もうすぐだ。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

皆様のご意見やご感想をお聞かせいただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ