第23話「暗殺(前編)」
そして今――ついに、あの暗殺事件のすべてをあなたに伝えられる。
これで、俺が知らなかった過去の事実を知ることができる。
2067年。 如月澪、22歳。AI研究者にして、教育思想家。
その若さに似合わぬ知性と覚悟を持ち、
彼女は颯真――つまり俺の“護衛”として、
ある極秘任務を背負っていた。
それは、ただの護衛ではない。
未来を守るための、命を懸けた戦いだった。
澪が最初に仕掛けたのは、
護衛の切り札ともいえる“封印戦略”。
俺の存在を完全に隠すための偽装プログラムだ。
その偽装は完璧だった。――最初のうちは。
だが、CIOの責任者が内部クーデターにより、
交代したことで、すべてが狂い始める。
新たな責任者は、俺の偽装を徐々に見破り、
ついには俺の居場所を特定されたということらしい。
そして――2045年。歴史の授業中、俺は狙撃された。
「あ、これ……終わったな」
そう思った瞬間から先の記憶は、まったくない。
意識は闇に沈み、時間の流れさえも感じられなかった。
だが、その瞬間――澪の俺に施した封印が解除された。
解除条件はただ一つ。澪が死亡または消失したとき。
俺の脳は、極限状態の中で、
瞬時にプログラムを構築し、澪の動きを最適化。
「弾道予測アルゴリズム起動──軌道偏差0.003、回避ルート確定。」
―― 1弾目、回避成功。
「発射音検知 、回避動作開始。ベクトル解析完了。
弾速:820m/s、迎撃不可。回避モードへ移行。」
―― 2弾目も、ひらりと回避。
「弾道追跡、予測座標補正、身体制御最適化。危険半径侵入。
反応時間:0.12秒。身体軌道リダイレクト。」
―― 銃弾を3発ともすべて、澪に回避させた。
敵は、銃が通じないと悟り、逃亡した。
…ということなのだが……
でもね、澪――私と颯真の意識はもうそこには、存在しなかったんだ。
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