第21話「過去の説明」
「えと……頭の中、整理できた?」
落ち着いた話し方だけど、
澪の声からは安心している気持ちが伝わってきた。
俺、颯真はまだ頭が混乱していて、
状況をうまく飲み込めずにいた。
目の前にいる澪は、“存在していなかったはず”の人物。
「今の状況を、できるだけわかりやすく説明するね。
ちょっと長くなるけど……ちゃんと聞いてほしい。」
その声には、揺るぎない使命感と覚悟が宿っていた。
そして彼女が語り始めたのは
――俺の“封印された知力”にまつわる話だった。
「2045年の春、あなたを巡る事件が起こる。
その中心にいるのは――颯真。
――この会話をしている“今”が現在だとすると、
中学生のあなたは“過去の存在”になるわ。」
過去で起こる暗殺計画。
その情報を何らかのルートで掴んだ澪は、
俺の護衛任務を引き受けていたこともあり、
兄と共に開発した“時間跳躍装置”の後継機、
――ChronoSeedVer.2067を
密かに完成させ、単身で時を越えた。
到着したのは、事件の2年前――2043年。
時間を遡り、護衛のために俺の前に現れた。
俺の入学式の日に教師として赴任してきたのである。
整った顔立ちと落ち着いた雰囲気を持ち、
難しい内容もわかりやすく説明できる先生として
生徒から高く評価されていた。
そう言うと、白猫の姿の澪は、珍しく少し照れた仕草を見せた。
そして、教師という立場で学校にいることで、
常に颯真のそばにいられ、自然に護衛することができたと語ってくれた。
そう、澪にとっては颯真を護衛するために、
どんな場所でもすぐに駆けつけられるようにすることが、とても重要だった。
狙われるとすれば、学校活動中に起こる可能性が高いと踏んでいたのだ。
澪の行動原理は、未来への扉を閉ざしたくないという強い思い。
つまり、颯真を失うことは、澪には許されないことであった。
「全部、あなたを守るため。私はここにいるから。」
必ず颯真を守る、ただ、それだけを考えていた。
そして、彼女がこの時代で最初に行なったこと
――それが、俺の脳に“知力封印プロトコル”を施すことだった。
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