第20話「再会」
「本来なら、涙と抱擁の感動の再会ってやつなんだろうけど、
……いや、待て待て待て!」
宗一郎は思わず手を挙げて制止するかの如く思念を送る。
目の前に立つ人物――いや、正確には“猫”の姿をした存在を見て、
脳内の処理が追いつかない。
「ツッコミどころが多すぎて、どこから手をつければいいのか分からん。
とりあえず、俺にも理解できるように順を追って説明してくれ。頼むから。」
猫の姿をした澪は、颯真の思念に静かに頷いた。
かつての仲間であり、今はAIとして存在する彼女は、
宗一郎の問いに答える準備をしていた。
白猫の澪は、テレパシーでも声でもやりとりできるから、
言葉もままならない赤ん坊の俺には本当に助かる。
だが、なぜ猫なのか
――その理由は今はまだ語られない。それは後回しだ。
すべての始まりは、颯真の死だった。
未来の新政府総裁として名を馳せた彼は、ある日突然命を狙われた。
だが、その標的となったのは、総裁としての彼ではなく
――中学生の彼だった。
「未来の颯真を、正面から暗殺するのは骨が折れる。
だから、奴らは過去を狙ったのよ。」
澪の声には、冷静な怒りが滲んでいた。
私達を敵視している勢力は、過去へと限定的に干渉できる
時空転送装置を完成させ、力を得る前の颯真を狙って暗躍を始めた。
彼が中学生だった頃
――未来の鍵を握る存在になる前に、芽を摘もうとしたのだ。
とはいえ、颯真自身はその事実を把握しておらず、
彼が認識している未来が徐々に変化していることにも、
まったく気づいていない。
「澪、お前……それを全部知ってて、俺を導いてたのか?」
と宗一郎は思念で尋ね、澪の語る断片的な情報を必死に繋ぎ合わせようとする。
敵対組織、新政府、そして澪が仕組んだAIとしてのサポート体制
――それらが複雑に絡み合い、まるで一つの巨大なパズルのようだった。
「……つまり、俺たちの再会は偶然じゃなくて、
澪、お前が仕組んだってことか?」
宗一郎のテレパシーの問いに、
猫の姿をした澪は、どこか懐かしげな瞳で見つめ返す。
「そう。すべては、あなたを守るために。」
その言葉に、宗一郎は息を呑んだ。
再会の意味が、少しずつ明らかになっていく。
――猫の姿の理由も含めて、すべてはこれから語られるのだ。
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