第19話「白猫」
——何かが弾けた。俺の能力が、文字通り“跳ね上がった”んだ。
最初は、俺のステータス画面のバグったかと思った。
でも、誤解しないでくれ。
俺はそういう派手な演出とか、展開が正直あんまり好きじゃない。
むしろ、平凡で地味な日常こそが俺の理想だ。
だからこそ、今のこの状況には、ちょっと……いや、かなり戸惑ってる。
ついでに言っておくけど、
最近の俺が 「知力999なのに夢とか直感で動いてる。」
って思われてるっぽいけど、 それ、ちょっと違うんだよな。
そもそも“知力が高い”って、どういうことだと思う?
俺なりに考えてみた結果、こういう答えに辿り着いた。
「知性ってのは、知的に振る舞うことじゃない。
何かに心から興味を持つことだ。」
この考えに至ったのは、アニメとか映画とかで
“知的キャラ”が登場するたびに感じてた違和感のせいだ。
彼らは、いかにもって感じの服装、話し方、仕草、名前
…… 全部が“知的っぽさ”で固められてる。
でも、それって本物の知性なのか?
俺にとって、知性ってのはもっと根源的なものだ。
外見じゃなく、内面に宿る探究心。
だからこそ、俺は“いかにも”な枠にハマりたくない。
能力が跳ねた今だからこそ、余計にそう思う。
世間では、知的に振る舞うってのは 知識を披露したり、
論理的に話したりすることだと思われがちだけど、
俺は声を大にして言いたい。
「本当の知性とは、何かに対して純粋な興味を持ち、
深く知ろうとする姿勢にある。」
それこそが、俺が目指す“知性”のあり方だ。
「さて、いつまでそこにいるつもりなんだい? 『しろねこ君』。」
俺は、屋敷の塀の上にちょこんと座っている猫に話しかけた。
スリムな体型に、サファイアブルーの瞳。おそらくシャム猫だろう。
その優雅な姿は、まるでこの世界のルールを超越しているかのようだった。
もちろん、返事はない。完全にスルーされた。まあ、そうなるよな。猫だし。
設計者が澪だと判明したことで、俺の知力はさらに向上した。
けれど、それでもなお、次に何をすればいいのかが分からない。
この先に別のイベントが待っているのか?
それとも、また何かに強制的に導かれるのか?
宗一郎――つまり俺は、いくつもの可能性を頭の中で巡らせていた。
だが、どれも決定打にはならない。
結局、どう動けばいいのか、答えは見つからなかった。
……澪……どうすればいいかな……
心の奥で、ぽつりと問いかけたその瞬間――
(なぁに?蒼井総裁……いいえ、颯真。)
……えっ……?
声ではない。けれど、確かに響いた。
澪の思念が、まるで波紋のように意識に広がっていく。
間違いない。澪だ。
でも、どうして……? どうして心に直接届く……?
理解が追いつかない。思考が混線して、言葉が……出ない。
それでも、ようやく意識の深層から浮かび上がった問い――
……澪……どこにいるの……?
「ここにいるわよ。」
優しく、包み込むような澪の声。 その声のする方へ視線を向けると――
そこには、さっきまで無反応だった 『しろねこ』が、
香箱座りで完全にくつろいでいた。
まるで、すべてを見透かしているかのように。
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