第15話「設計者」
もちろん、仮説を立てるだけなら簡単だ。
頭の中で情報を組み合わせて、
可能性を導き出すだけなら、
時間はそれほどかからない。
けれど、本来ならば
――情報の変化や予期せぬ展開に備えて、
じっくりと時間をかけて検証すべきだった。
だが今回は違う。
状況は刻一刻と動いている。
迷っている暇はない。
俺は、思考を整理しながらも、
あえて前へ進むことを選んだ。
――よし、仮説を整理しよう。
今のところ、
俺の頭の中にある仮説は、
以下の通りだ。
仮説①
澪に関する記憶は、
何らかの理由で封印されている。
俺自身の記憶か、それとも澪の記憶か
――その詳細はまだ不明だが、
意図的に隠された痕跡がある。
仮説②
“設計者”と呼ばれる存在は、
颯真――つまり俺を守ろうとしている。
敵ではない。むしろ、味方だ。
仮説新②
設計者は、未来に現れる“敵”から
俺を守るために、
江戸という時代へ転生させた。
この世界は偶然ではなく、
計画された舞台だ。
仮説③
澪は、未来から来た“俺の右腕”であり、
そして“かけがえのない存在”だ。
ただの仲間じゃない。
もっと深い絆で結ばれている。
これらの仮説を総合すると、
見えてくるものがある。
澪は、未来において重要な鍵を握る人物だ。
そして、俺――颯真を守るために、
江戸への転生という舞台が仕組まれた。
二人の間には、
運命的とも言える深い絆がある。
さらに澪は、
未来の組織に関与している可能性が高い。
何かを知っている。いや、何かを“背負っている”。
そして、ここから導き出される答は――
俺は、
未来において重大な脅威にさらされる存在だ。
その脅威から俺を守るために、
江戸という時代が選ばれ、
舞台が設計された。
そして澪は、その守護者。
俺を守るために、時を越えてやってきた、
重要な人物だ。
そう考えると、ある仮説が消える。
澪=設計者の一員、という線はもう必要ない。
なぜなら――澪こそが、設計者そのもの。
十中八九、間違いない。
彼女はこの世界の“設計”に関わっている。
いや、中心にいる。
そして、彼女なら
――この結論にたどり着いた俺に、
何かしらの“手がかり”を
残してくれているはずだ。
むしろ、俺がそれに気づくのを、
ずっと待っていたのかもしれない。
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