第11話「未来との接続」
3か月。赤子にとっては人生の1/4以上。
でも俺にとっては、知力999を持ちながらも
“空振り”を繰り返した、苦い時間だった。
密貿易商人の会話?父の診療所の記録?母の読書習慣?
どれもヒントにはなる。けれど、決定打にはならない。
(……知力999?万能? 笑わせんな)
この世界は、
そんな甘い数値だけで攻略できるほど、
単純じゃない。
それでも俺は、少しずつ“進化”していた。
首が据わり、
視界が広がる。
物体の認識精度が上がり、
観察スキルも強化。
赤子としては些細な成長かもしれない
でも俺にとっては、
“探索能力の向上”という
最高のアップデートだった。
そして――その夜、事件は起きた。
俺は、夢を見た。
いや、
“見せられた”と言った方が正しいかもしれない。
やたらリアルで、脳内に強烈な刺激が走った。
(……これは、ただの夢じゃない)
夢ってのは、
記憶の整理と定着に関係してるって言われてる。
つまり、俺が見た夢は――
“重要な記憶”に直結してる可能性が高い。
でも、思い出せない。
夢の内容が、何かに引っかかってる。
まるで、脳内に設置された障害物が、
記憶の再生を阻んでるみたいな感覚。
(思い出せ……断片的でいい……
ピースがいくつか……いや、ひとつで充分だ)
俺なら、それだけで夢を再構築できる。
そして――来た。「澪」
その名前が、脳内に“浮かんだ”。
記憶の中に存在しないはずのもの。
でも、確かに“そこにあった”。
(……澪?誰だ?)
意味はない。
映像もない。
ただ、“澪”という音だけが、
記憶の底で震えていた。
それは、まるで
―― 設計者が俺に送った
“座標”のようだった。
(この感じ……
流石にイージーな展開じゃなさそうだな)
でも、このピースが示す意味。
それは、俺が“設計者”に近づいている証拠だ。
夢はただの夢じゃない。 それは、未来との接続。
俺は、夢の再構築を始める。
この世界の設計者に、もう一歩近づくために――。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
皆様のご意見やご感想をお聞かせいただければと思います。