第1話「蒼井颯真」
キーンコーン♪カーンコーン♪
2限目のチャイムが、いつも通り教室に響き渡る。
俺の名前は蒼井颯真。 この春、学年がひとつ上がったばかりの、
どこにでもいる公立中学の3年生だ。
最近は「少子化」ってやつが問題らしく、俺の通う学校も例外ではない。
聞くところによると、5年後――つまり2050年には廃校になるらしい。
けれど、そんな予定を物ともせず、運動部の熱量は今なお高い。
大会常連、好成績続出。まさに、“廃校予定”とは思えぬ活気っぷりだ。
俺はというと、スポーツ万能の爽やか体育会系男子。
複数の部活を兼任していて、どこに行っても主力扱い。
最近では「クロススポーツシステム」とかいう部活動改革の流れで、
兼部もOKになったんだよな。
だから思いっきり、好きなだけ運動してるってわけだ。
ただし誤解はされたくない。勉強が苦手ってわけじゃない。
成績は学年ちょうど真ん中くらい。得意じゃないけど、苦手でもない。
ま、バランス型ってやつだ。
教室では、社会科の教師がペリー来航の話をしている。
「嘉永6年(1853年)6月、アメリカの提督ペリーは軍艦4隻で浦賀に来航し、開国を要求した……」
窓の外を眺めながら、俺はぼんやりと思う。
「黒船か。でかかったんだろうな、当時は……」
――そして、それは突然だった。
背筋がぞくりと震え、心臓が跳ねる。 脳内が警鐘を鳴らす。
「ヤバい」と。
窓の外。ビルの屋上。 そこに、黒い人影が立っていた。
まるで、俺のことを見張っていたかのように。
次の瞬間、目も眩むような閃光が放たれ、
俺の意識は、闇へと沈んでいった——。
思考停止。身体硬直。 狭まっていく視界の中で、
冷静すぎるほどの言葉が頭をよぎる。
「あ、これ終わったな」
あの時、窓の外を見たのは――偶然じゃなかったのかもしれない。
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