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30  納得してもらえるかしら

 父は刺客を雇ったことを認めはしなかったが、ニースに家督を譲ることは承諾した。

 私から詳しい話を聞いたニースは、父が刺客を放ったと聞いてかなり驚きはしたけれど、父が私のことを嫌っていたのは知っていたので、ありえそうなことだと納得してくれた。

 そして、私のことも姉だと確信してくれて、生きていたことをとても喜んでくれた。公の前では寂しいけれど姉としてではなく、魔道具師として扱うことも、渋々だが納得してくれた。そのかわり、魔道具をニースに販売するという目的で二十日に一度、会うことを約束した。

 それと同時にローズコット辺境伯家から王家に連絡を入れてもらった。王家から正式にフェルスコット伯爵家の存続を約束してもらうと、家督を譲る手続きに入った。


 シャゼットもまだ未成年のため、家から追い出されることはなく、父と共に別邸に住むことになった。

 今までは望めば好きなものを父に買ってもらえていた。でも、家督を譲った父に残された財産はほとんどない。

 シャゼットはニースから三十日に一度、お小遣いをもらい、そこから自分の好きなものを買わなければならなくなった。


 父はクマリーノのおかげでもあるが、今までが嘘のように大人しくなっている。現在、父が私を殺そうとしたことについて調べてもらっているから、真相が分かれば父は捕まる。それがわかっているから、今はシャゼットを離そうとせず、時が来るまでは愛しい我が子と一緒にいるつもりのようだった。


 クマリーノはニースに預け、今はニースの指示の下、シャゼットたちを見張ってくれている。おかしな動きをしようものなら、クマリーノが動きを止めてくれているそうだ。


 そんな日々が十日ほど続いた頃、ニースの元にレレール様から手紙が届いたと、ジェイク経由で連絡があった。


『お父様からお話は聞いているのでしょう? いつになったら良い話を聞かせてくれるんですの?』


 開店前の店内で、ジェイクの元に転送されてきた手紙を読んだ私は、目を閉じて考える。


 別に王家の後ろ盾があるから放っておいてもいいのよね。でも、みんな、レレール様がどう輝くのか知りたいみたいだし……。


 ……って、みんなって誰だろう。


 まあいいわ。とにかく輝かせてあげなくちゃ。


 現実的に考えると、そんなに輝きたいのなら、全身に宝石を身につけたらいいんじゃないかと思った。

 でも、彼女はそういうことを求めているわけではないらしい。宝石を散りばめたドレスをずっと着ているわけではないものね。

 私の考えているやり方だと、思い浮かべただけで笑ってしまうんだけど納得してもらえるかしら。


 ニヤニヤしそうになるのを堪えていると、ジェイクが尋ねてくる。


「どうするつもりなんだ? 公爵夫妻もレレール様を止める気はない。このままだと、ニースが狙われるぞ」

「わかっているわ。でも、輝きたいってどういうことなのかしら」

「どういうことというのは?」

「彼女は目立ちたいのよね? なら、スキャンダルを流せば良いんじゃないの?」

「どうとるか、だよな。悪い意味で目立つのは嫌なんじゃないか」

 

 眉根を寄せるジェイクを見て、私は文句を言う。


「あの人は聖女って呼ばれているくらいなんだから、自分で聖なる光で輝けばいいじゃないの」

「彼女が使えるのは正確には回復魔法だから、光を出せるわけじゃないんだ」

「灯台みたいに遠くからでもわかるようにすれば良いのかしら」

「……一体、何をしようとしてるんだ?」


 想像しただけでニヤついてしまい、ジェイクからは呆れられてしまった。


「とりあえず、ニースには魔道具師を見つけたと連絡してもらってほしいの」

「いいけど、彼女に会うつもりか? 俺の兄さんや義姉さんもいるぞ」

「心配してくれてありがとう。その時にはクマリーノも連れていくつもりだし、他にも身を守る魔道具を作って持っていくわ。それから、レレール様を輝かせる魔道具もね」


 にんまりと笑って見せると、ジェイクはため息を吐いて「俺も一緒に行く」と言ってくれた。


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