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家を追い出された令嬢は、新天地でちょっと変わった魔道具たちと楽しく暮らしたい  作者: 風見ゆうみ


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21/42

20  ここにいますが

 疲れてはいたが、ジュネコの様子を見に行くと言うと、ジェイクも付いてきてくれることになった。

 今日一日はシャゼットを留置所に閉じ込めておいてくれるらしいので、問題は父とタクリッボの店長だ。

 かといってミイラの格好をしていったら、検問所の人や出入りする人たちも驚くだろうし、何より目立つ。それに、普通にミイラ女と会話しているジェイクの神経も疑われるかもしれない。

 大きなカボチャの中身をくり抜いたものをかぶって行こうかとも考えたが「頼むから普通に変装してくれ」とジェイクに頼まれた。


 結局、良い変装ができず、度の入っていないメガネを使い、それをかければ認識していない人には、空気のような存在になれるという魔道具を作った。

 こんなものが作れるなら最初から作っておけばいいのにと言われそうだが、自分が閃いた魔道具しか作れないため、後手後手になってしまうのはどうしようもない。それに、ミイラ女は好評だし、やってみて良かったとも思っている。

 眼鏡の魔道具の効果は抜群だったけれど、たまにジェイクにまで見失われてしまうので、ジュネコの所に行くまでは外しておくことにした。


 検問所に向かう馬車の中でジェイクに尋ねる。


「ここまで付き合ってもらって言うのもなんだと思うけど、仕事は大丈夫なの?」

「ああ。ちょうど勤務終わりの時間だったんだ。女性騎士は他の隊の隊員で、ちょうど勤務開始時間と重なるから付いてきてもらったんだよ。相手がシャゼットだから、男性だけで相手にするわけにはいかないからな」


 各部隊に女性は二人以上配置されているそうだ。男性には話しにくいこともあるという配慮らしい。


「そうだったのね。お仕事を増やしてごめんなさい」

「気にしなくていい」

「ありがとう。で、ジュネコの件なんだけど、どんな感じだったの?」

「見てもらったらわかるんだが、ジュネコは検問所の門の前に置かれていて、領地外に置かれてあるんだ。雨の日は頭に傘をつけてもらってる」


 どんなだろう。ちょっと見てみたい。いや、そんなことを言っている場合ではないか。


「……たしか、検問所の近くは森よね」

「ああ。森の中からジュネコに向けて矢が放たれた。矢が飛んできた方向については検問所に立っていた兵士が確認してる」

「兵士は賊を追わなかったの?」

「夜中だったからな。森の中に入れば兵士の命も危険だ」


 ジェイクはそう答えてから、苦笑して続ける。


「兵士が言うには、追いかけんでええ。夜の森は危険や。あんなもんのために命を無駄にせんでええっていう声が聞こえたらしい」


 夜の森は危険だから追いかけるな。つまらない人のために命を無駄にするなと言いたいんだろうけど、そんな念話ができる魔道具を作った覚えはまったくない。


 しかも、なんか言っていることが、大物感がありすぎる。


「もしかしたら、ジュネコの元々の持ち主か、作った人の人格が反映されているのかもしれない」

「……持ち主はタクリッボの店長だろ?」

「そうね。もともと、ジュネコは魔道具じゃなくて、店の入り口に置かれていたものなの」

「でも、ジュネコはタクリッボの店長のことは嫌いじゃないか」

「となると、あの子を作った人の真似をしているのかもね」


 結構、年季の入っているものだったし、もう亡くなっているのかもしれない。私が付与魔法をかけたことで、魂が入ってしまったのだとしたら大変なことになってしまった。暴走したらどうしよう。


 うーんと唸っていると、ジェイクが苦笑する。


「ジュネコはリリーに従順だから心配しなくていい」

「どうしてわかるの?」

「連れて帰るまでずっと、リリーの言いつけを守らないといけないって言ってたから」


 そうか。たしか、ジェイクの枕元で恨めしそうにしてたんだっけ。


 話をしているうちに検問所近くまで来たので、私たちは馬車を降りて歩き出す。

 夕方前なので太陽も沈みかけているから、人通りも少なくなって歩きやすい。


「リリー、眼鏡をかけたら足音まで消えてるんだが」

「私の存在は見えてるよね?」

「かろうじて」

「かろうじて!? ちょっと待って! 私、消えそうなの!?」


 叫んだ瞬間、ジェイクが私の肩を掴んで自分のほうに引き寄せた。はっきり見えていないから、すれ違う人が私にぶつかりそうになったようだ。


 ドキドキしながらもお礼を伝える。


「ありがとう。効力が良すぎても良くないわね。どうやったら緩められるんだろう。ちょっと空気のような存在になるとかにしてみたらいいかしら?」

「ちょっと空気のような存在ってなんだよ」


 ジェイクのツッコミが入った時、検問所の門のほうから「娘がっ、娘がいるんだ! 中に入らせてくれ!」という声が聞こえてきた。


 聞き覚えのある声だと思って見てみると、私を殺そうとした父だった。シャゼットが捕まったことを聞いたのかもしれない。


「あっ!」


 その時、父が私たちを指差した。見つかってしまったのかと思った時、父は叫ぶ。


「ジェイク様ではないですか! どうか、中に入らせてください! リリーノに会わせてください!」


 ここにいますが。

 ……って、見つからなくてもいいんだった。それにしても目的は私なの?

 

 その時、頭の中に声が響いた。


『お前の相手はこのわしじゃボケ』


 それと同時にジュネコが父に体当りしたのだった。




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