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第9話 2ndSTAGE 聖王国宇宙港

『むううん!!』『我ら一対の盾! 通さぬぞ狼藉者め!!』


 15メット(メートル)はある盾を構えた、二体の騎士が立ちふさがった。

 盾からは光が溢れ出し、巨大なバリアとなる。


 これによって、敵機メイガスの進路は完全に塞がれたかに見えた。

 速度を緩めるメイガス。

 始めたのは、新たな装備、ビームジャベリンによる攻撃だ。


 投射。

 これは盾によって防がれる。


『がはははは、無駄ぞ! 我らが盾は鉄壁!』『いかにも! 艦隊の一斉射撃すら防いでみせるわ!』


 だが。

 ほんの僅かに、二体が作り上げた鉄壁のバリアに歪みが生じていた。


 ビームジャベリンは、メイガス・バレット上で溜め攻撃を行えるショットである。

 溜めることで、敵のバリアを打ち崩し、ビーム機銃では通らぬ装甲をも貫くことができる。


 今のビームジャベリンは、一段階の溜め。

 これで、騎士たちのバリアを揺らがせる事ができる。

 第二段階の溜めまで行わなかった理由は簡単。


 バリアの歪み目掛けて、メイガスが飛翔した。


『なにっ!?』『圧死する気か! それも良かろう!』


 メイガスを潰さんと、盾を押し込む二体の騎士。

 だが、揺らいだバリアの再構成まで僅かな時間がかかる。

 一秒の半分ほどの、一瞬だが致命的な時間だ。


 そこに、再び一段階目の溜めジャベリンが叩き込まれた。

 バリアに穴が開く。


『ぬわーっ!?』『なんとーっ!?』


 盾と盾の間が、ほんに少しだけ開いた。

 その隙間を、既にメイガスが通過している。

 ビーム機銃が騎士たちを襲った。


『我らの防御を抜けた!?』『だが、このような豆鉄砲で我ら騎士をどうにかしようなどとは……!』


 二体は、弱点であるカメラアイだけを守った。

 やはり、一瞬だけ視界が遮られる。

 その間に、溜めが成った。


 ビーム機銃を使いながら、ビームジャベリンは溜めを続けることが可能なのである。

 二段階目まで溜められたジャベリンが放たれ、騎士の片方を穿つ。


『ウグワーッ!?』


 真っ向から胸板を貫かれ、その隙間にビーム機銃を叩き込まれて爆散。


『相棒~!! おのれ! おのれえーっ!!』


 怒り心頭に達したもう一体は、盾でメイガスを押し潰さんとするが……。

 その顔面に、溜めなしのビームジャベリンが突き刺さった。


『ウグワーッ!?』


 頭が爆発する。

 メイガスは駆け抜けざま、首から体内に向けてビームジャベリンを一射。

 これで二体目の騎士も爆発した。


『盾の二人が!?』『有り得ぬ!!』『鉄壁を破壊するなど!!』『ならば我ら四体による完璧なコンビネーションが!!』


 剣と槍、斧、そして槌による連続攻撃。

 どれほど巨大な戦艦であろうと、四騎士の前では的と一緒。

 攻めに特化した四機であった。


 超高速で槍と斧がメイガス後部に回った。

 剣と槌が前方から攻める。

 四方から包囲し、範囲を狭め、粉砕する。


 彼らが四方滅殺陣と呼ぶ戦法だ。

 未だ、皇帝以外には破られていない。


 故に彼らは勝利を確信した。

 この包囲から抜け出せるものなど無いと。


 いたのである。

 四体の攻撃はそれぞれのリーチが異なる。

 メイガスは、最もリーチが長い槍の……間近まで速度を落とした。


 あまりの超急減速に、槍の反応が一瞬遅れる。


『なにっ!? ウグワーッ!!』


 槍に接近すれば、警戒すべきはその槍の攻撃のみ。

 これを後ろ向きに回避したメイガスが、なんと後方目掛けて二段階目のビームジャベリンを放ったのである。

 胴を貫かれ、槍が爆散する。


『槍の!!』


 驚いたのは斧である。

 得物を振り回しつつ、方向を転換した。

 だが、その時にはメイガスは斧の後方まで移動している。


 側面から、頭部を一段階目のジャベリンが撃ち抜いた。


『ウグワーッ!!』


 空いた空間に、ビーム機銃が炸裂し、斧が爆散する。


『斧の!!』『四方滅殺陣が敗れた!? そんな馬鹿な!!』『槌の! 我らで一挙に攻め立てるぞ! 弔い合戦だ!』『おう!! ウグワーッ!!』


 斧の爆発を突き抜けたメイガスが、既に横にいた。

 ジャベリンの溜めは、三段階目。

 最大である。

 その特徴は貫通。


 放たれたビームジャベリンが、横並びの剣と槌を貫通し、爆散させた。


『なんだ!? 何が起こっている! 報告をせよ! 騎士団、報告を!!』


『報告致します! 四騎陣が全滅! 我ら弓部隊の狙撃をくぐり抜け、敵機が肉薄し……ウグワーッ!!』


『報告致します! 彼奴めはこの副将、ハルバードが通しませぬぞ!! がはははは! 空域を覆う雷撃の雨を抜けられるものか! なにっ!? なにぃっ!? そんなところで雷撃を回避だと!? 待て! 待てーっ!! そこは雷撃の届かぬ懐の……ウグワーッ!!』


 次々に聞こえてくるのは、騎士団の断末魔。

 副将のそれを最後に、騎士たちの声が途絶えた。

 戦場は黒煙と爆風に満ち……。


 僅かな先すら見通せない。


 だが、騎士団長は理解していた。


『馬鹿な……。この僅かな間に……。2.5宇宙分(150秒)で、銀甲騎士団が全滅だと……!? まるで、我らの動きを知り尽くしているかのように……! あのカトンボめが、騎士団の首をことごとく刈り取ったと言うのか!!』


 黒煙を貫いて、メイガスが飛来する。

 騎士団長に、思考に浸る暇を与えない。


 それはまるで、他人の意志など意に解さず。

 一方的に命を刈り取ってきた銀甲騎士団の鏡写しであった。


『理不尽……! なんという理不尽か!! 我ら騎士団が何をした! 我らに差し向けられる刺客が、このような義も誇りも解さぬ、熱き油も通わぬカトンボだなどと……!!』


 振り回される槍が、ビームの斬撃を生み出していく。

 それは宇宙港一帯にばらまかれ、まるで回避する場所がないかのようだ。


 だが、斬撃と斬撃が干渉し合う場所に一瞬だけ生まれる隙間をくぐり、メイガスは飛行を続ける。

 飛行しながら、ジャベリンによる射撃を確実に騎士団長へ当てる。


『ありえぬ! ありえぬのだ!! 我ら騎士団は無敵! 誰にも破られぬ!! 皇帝陛下以外には! 貴様が皇帝陛下に並び立つ存在だなどと、そんなことがあるわけがない!!』


 騎士団長が複数体に分身し、連続攻撃を放つ。

 メイガスを包囲しての多重攻撃。

 全ての武器が槍ゆえに、リーチの差を利用した突破などできない。


 だが、ここでメイガスは右前方の騎士団長に攻撃を集中。

 たまたま、そこには騎士団長の被弾したボディが割り当てられていた。

 ジャベリンの攻撃で半壊していたボディが、さらなる攻撃で爆散する。


『なにぃーっ!?』


 騎士団長が一体に戻ろうとする。

 その体には、装甲の一部が欠けている。

 分身は、彼の肉体を実際に分けることで行われたのだ。


 その合体しようとした騎士団長目掛けて、メイガスが飛来した。

 狙いは……分離であらわになった、騎士団長のコア。


 ビーム機銃が、正確に叩き込まれた。


『馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な! 我ら最後の戦いが、このような誉れなき一方的な戦いであっていいはずがない! 我らは、このカトンボに一矢報いることすら……ウグワーッ!!』


 爆発。

 砕け散り、粉々になる騎士団長の中を、メイガスが抜けていった。


 聖王国宇宙港、開放。


『三分か! よし、自己ベスト更新!』


 全ての敵が滅びた戦場で、メイガスの中、遊が嬉しそうに呟いた。

お読みいただきありがとうございます。

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