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ワンコイン・メサイア~シューティングゲーマー、異世界の救世主となる~  作者: あけちともあき
新宿アポカリプス

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第54話 御苑大乱闘

 新宿御苑……。

 もともとは江戸時代に、なんか屋敷があった土地らしい。

 さぞ大きい屋敷だったんだろうなあ。

 信じられないくらい広い。


 あちこちを怪物たちが蠢く広大な公園、新宿御苑内をレンタルサイクルで闊歩する遊は、そんな感じの説明を口にした。


「すごく曖昧じゃん!!」


 突っ込むスノン。


「僕も詳しいことは知らないんだ。シューティングゲーム以外はあんまり分からない……」


「無理して説明しなくてもいいのに」


「スマホが使えればなあ……」


 そんなやり取りをしつつ、遊はレンタルサイクルを停めた。

 周囲からは、怪物たちが近寄ってくる。


 外見的に、菊の花や桜の花に手足が生えたファンシーな怪物たちだ。

 桜を見る会や菊を見る会が御苑で開かれていたが故に、それをモチーフとした怪物たちなのだが……。


 遊は全く分かっていなかった。

 そういう社会的な知識は持っていないのである。

 スノンは当然分からない。


「うおーっ、数が多いぞ遊! 空き缶と炎の矢だけで戦えるのかー!」


「やってやれないことはない……けど、それは経験点がもったいないんだよね」


 遊は怪物たちの攻撃をくぐり抜けながら、自動発射される攻撃を的確に命中させていく。

 これだけでもなかなかの戦果を挙げているようだが……。


「新宿アポカリプスは時限制なんだ。一定時間生き残ると、自動的にボスが現れる。これを撃破するとクリアなんだよ」


「なるほど! じゃあその間逃げ回ってればいいじゃないか! レンタルサイクルの使い所だろ?」


「いや……それじゃあ経験点が得られない……。制限時間内に限界まで敵を倒して経験点を得たい……! 敵が多い新宿御苑だからこそ、ここは妥協したくないんだ」


「戦闘狂~!!」


「だからちょっと今、ギリギリの戦いをしながら経験点を集めてる。当てられたら負けるから凄いスリルだね」


「む、無茶をしないでくれ~!!」


 スノンの悲鳴をよそに、遊は攻撃で最大の効果が出るように立ち回る。

 そしてここでアイテムがドロップした。


「イマイチだな……。でも、店長が力を貸してくれてるのか、最初から選択アイテムを一回リロールできるようになってる。本当にありがたい」


「リロールって?」


「レベルアップすると、このアイテムの中から好きな装備を得られるっていう画面が出るんだ。この瞬間だけ時間が停まってるだろ?」


「そう言えば……」


 周囲を取り囲んでいた、菊や桜の怪物たちの動きが停止している。

 ちょっと向こうからは、サボテンや多肉植物、スイレンなどが変化した巨大な怪物が迫ってきている。


「やばいよ遊! あんなの、どうやって対処するんだよ!? ちょっと武器が増えたって、それをレベルアップとかいうのしないといけないんだろ?」


「それはそうなんだけど、決定的に効果を上昇させられるアイテムがあって

……出た!! 弾数増加!!」


「何それ?」


「見てれば分かる! 取得!」


 遊は迷わず、弾数増加を取得した。

 その途端……。

 放たれる炎の矢の数が、空き缶の数が、そしてひっかきの量が一つ増える。


 たかが一つと侮ることはできない。

 これはつまり、攻撃できる範囲が増え、攻撃対象とできるものが増えることを意味する。


 そして攻撃して敵が消滅すると、新たな敵がポップアップしてその隙間を埋める、

 このサイクルが加速するということなのだ。

 増えた敵は全て経験点を落とす。

 つまり、サイクルが加速すればドロップする経験点も加速する……!


「うおおおおおお!! 経験点じゃぶじゃぶだ!!」


「遊~!! まずい、キャラが変わってる!」


 新宿アポカリプスは、トレジャーボックスといい、このレベルアップシステムといい、遊ぶ人間の射幸心を煽る作りが用いられている。

 シューティングゲームにストイックな遊とは言え、人の子である。

 むしろ報酬が少ないシューティングばかり遊んでいたので、この射幸心への抵抗力が低かった。


 遊は完全に、新宿アポカリプスにハマってしまったのである。


「トレジャーボックス出た!」


「お、落ち着けー!」


「スロットが三段!!」


「落ち着けー!!」


「うおおおおお!!」


「もう止められねー!」


 トレジャーボックスから飛び出す、スロットのリール。

 そこにアイテムの絵が描かれている。

 停止したものがゲットできる……いわゆるボーナスなのだ。

 それが今回は三つも同時に出た。


 景気の良い音楽とともにスロットが回り、表示されたのは……。

 空き缶・クールタイム減少・弾数増加。


 これで弾数増加はマックスとなった。

 すべての攻撃の弾数が二発増えた形になる。

 さらに、空き缶はレベルアップして弾数が一発増えている。

 クールタイムは減少し、遊の攻撃はさらに間断なく放たれるようになった。


 大量に湧き出る御苑の怪物たち。

 だが、彼らの勢いは完全に止まった。


 無数の弾をひたすらに吐き出し続ける遊一人が、圧倒し始めたのである。

 新宿門から入ってきた遊とスノンは、怪物の軍勢を押し戻しながら温室方面へ。

 モダンな作りの温室は、遊の接近を感じ取ると……。

 ガタガタと動き始め、立ち上がる!


『もがーっ!!』


「温室が怪物に変形した!! これが新宿御苑のボスだ! あ、本当はここから南や西にも公園が広がってるんだけど、渋谷になっちゃうので多分行けない……。観光は今度、平和になったらセシリアと来よう」


「のんきだなあおい! 相手はめちゃくちゃでかいんだけど! やれる!?」


「もちろん。弾数こそが絶対の強さ。それがこのゲームの鉄則。いや、そろそろ弾のダメージも上げていく必要があるんだけど……それは勝ってから考える!」


 新宿御苑エリア、ボス戦に突入なのだ。

 

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