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ワンコイン・メサイア~シューティングゲーマー、異世界の救世主となる~  作者: あけちともあき
新宿アポカリプス

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第53話 攻撃してみる! 西新宿の結界

 東新宿と北新宿を掠めて通過。

 がらんとして人一人居ない新宿の町並み。

 だが、領域に一歩足を踏み入れると、建物から、停まっている車からバスから、次々に怪物たちが現れる。


 この地域の怪物は、影のような姿をしている。

 彼らはゆらりゆらりと揺れながら現れ、速やかに侵入者に近づく。


 彼らに触れられたものは皆、同じ影に変えられてしまう。

 こうして全ては影と同化し、靖国通りは静寂の街になっているのだ。


「つまり触れなければ一方的に勝てる」


「その通りだ! セイヤーッ!!」


「うわーっ、おかしいよあんたら二人ともおかしいよ!」


「ダーリンってば仲間ができて本当に嬉しいんだねえ。あたし、ダーリンがこんなずっと嬉しそうなの見たこと無いや」


 影の群れに躍りかかる救世主二人。

 たちまち、影たちが「ウグワーッ!」「馬鹿なーっ! なんたる理不尽!!」と叫ぶ羽目になった。


 影の中心に躍り込み、ひたすらに暴れる達人。

 新たに強化された武器、空き缶を用いて、全方位攻撃をしながら練り歩く遊。


 影の数は多い。

 靖国通りを挟むように、無数に並ぶビルは影の巣窟。

 無数の影が溢れ出してくる。

 普通なら影の奔流に、侵入者は押しつぶされ、逃げ惑うだけで精一杯のはずである。


 だが!

 今回ばかりは勝手が違う。


 侵入者が突き進んでくる。

 影の奔流が押し返されている。

 彼らが通った後には、何も残らない。

 接触した全ての影が、経験点になってしまっているのだ。


「ああ、楽しい……!!」


 遊は心の底から呟いた。

 だが、楽しい時間はいつまでも続かない。


 突如、影が一斉に「ウグワーッ!!」と叫んで消滅した。


「なんだ!?」


「経験点にならない。これは異常事態だ」


 警戒する達人、悲しそうな顔で状況を考察しようとする遊。


「遊、こいつはあれじゃないか? 影が全滅した辺りが西新宿なんじゃないか?」


「なるほど」


 スノンの言葉で腑に落ちた。

 ここはちょうど、線路を抜ける辺り。

 その向こう側が、西新宿の領域となっているのだろう。


 今立っている辺りは青梅街道。

 ここから南西に目指す都庁舎がある。


 だが、結界が存在しているようで、ここから先には行けないのだった。


「結界がどれほどのものか! はーっ!! あたぁーっ! うおあちょーっ!!」


 達人が叫びながら、虚空に向かって飛び蹴りを放つ。

 それが結界とぶつかると、バチバチと赤い火花が散った。

 達人のパンチが、肘打ちが、前蹴りが炸裂する。


 だが結界は火花を散らすばかりで、全く破れる様子もない。


「こりゃあ……ちょっとやそっとでは破れないな。延々と殴り続ければいつかは相殺できるが、時間があまりにも掛かりすぎる」


「なるほど、どれどれ?」


 空き缶を使ってみる遊。

 すると、空き缶は虚空にぶつかってバシュッと音を立て、消滅してしまった。


「なるほど、これが経験点を吸い込んでしまった仕掛け……。この辺りでレベリングはしないほうがいいね」


「全くだ。倒す前に勝手に敵が死ぬ。ここは戦場としてふさわしくない。もうちょっとあっちで戦おう」


「なあこいつらおかしくないか?」


「ダーリンは前からこうだけど、あんたの御主人様もイカれてるわよねえ」


「主人じゃないが? 同格だが? 養われてはいるが」


「やっぱり御主人様なんじゃないの?」


 そんなお喋りをしつつ、一行は西新宿から撤退した。

 再び靖国通りまで来て、ここで簡単な相談を行う。


「俺はここから時計回りに行こうと思ってる。百人町、落合から高田馬場にぐるりと」


「じゃあ僕は新宿御苑から、四谷に抜けて市ヶ谷かな。楽しんでサクサク攻略していこう」


「おう! どんな強敵が出てくるのか、楽しみでならんな」


「分かる。ゲームとは微妙に異なってるから、僕も先読みがしづらくて楽しいよ」


 遊と達人は拳をコツンと打ち合わせ、別れることになった。


「なんでこの二人こんなに仲がいいの? ちょっと嫉妬しちゃうんだけど!」


「男同士の友情なー。自分はついぞ縁がなかったけど」


「僕はスノンを友達だと思ってるよ」


「えっ!?」


「猫がキュンとしてるわよ! 危ない! こいつ人たらしだ! ダーリンをあげないんだからね! 行くわよダーリン!!」


「あーれー」


 エリィがコンボの達人を引っ張っていってしまった。

 残された遊とスノンである。


「人たらしなんて初めて言われた」


「遊の場合、変なやつに受けるタイプの人たらしかも知れないな……。さ、行こうぜ」


 靖国通りを歩き出す二人なのだった。

 そこから、新宿御苑へと曲がる。


「結構歩くよね。ある程度攻略したら、ちょこちょこ事務所に帰りたいんだけど。セシリアも心配だし」


「あ、そっか。ドラコニアの規模感からするとこの戦場は狭いが、人間の足で歩くと結構な距離だもんなあ」


 ふにゃーと唸るスノン。

 彼はキョロキョロした後、ハッとした。


「あれどうだ? 自由に借りられるっぽいが」


「レンタルサイクルかあ! これいいね。戦いの時は使えないけど、帰る時はこれ使わせてもらおう」


 移動手段を確保した遊なのだった。

 さて、向かう先は新宿御苑。


「僕はよく知らないんだけど……ものすっごく広い公園って感じ」


「公園かあ。どれくらいの広さ? 遊の家より広い?」


「比べ物にならないんじゃないかな」


「じゃあ、敵に出会うまではレンタルサイクルとやらで移動すらいいんじゃね?」


「それもそうか」


 自転車に乗り込む遊。

 スノンが駆け上がってきて、遊の懐にスポっと潜り込んだ。


「おお快適快適……」


「そこに入ってると戦えないよ?」


「自分が必要になったら外に追い出してくれえ」


「仕方ないなあ……」


 こうして、新宿御苑エリアに入り込む遊なのだった。


 

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
お互い初めて理解し合える「同類」に出会ったっぽいですなぁ……
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