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ワンコイン・メサイア~シューティングゲーマー、異世界の救世主となる~  作者: あけちともあき
新宿アポカリプス

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49/70

第49話 スタート地点:大久保公園

「侵入者だあ? 魔王フルツパラー様のお膝元で、まーだ悪あがきしてるやつがいるのかあ」


 大久保から新大久保に掛けて広がる商店の中。

 そこにひときわ大きな店がある。


 その怪物は店内でぎょろりと目を剥いた。

 新大久保地区を統括する魔人、グエムルである。


 新宿に魔王の星が落ち、この都市は地獄に変わった。

 既に人が住まう世界ではない。


 グエムルはもともと、この地域で顔を利かせていた男であった。

 それが魔王フルツパラーに認められ、力を与えられたのだ。


 グエムルは手下たちを魔人に変え、さらに地獄の底から鬼たちを呼んだ。

 大久保公園周辺は、グエムルの領域である。


「野郎ども! 押し潰しちまえ!! 俺達の力を、無謀な挑戦者くんに見せつけてやれ!」


 ウオーッ!

 と商店街に叫び声が響く。


 敵は大久保公園にあり。

 無数の敵が押し寄せてくる。


 侵入者は手も足も出ずに圧殺される……はずだった。



 ※



「このゲームの面白いところは、どんどんレベルアップが進む所でね。元祖となるゲームはあるんだけど、このローグライクシューティングという面白さが……」


「ワーッ! 右からくる! 今度は左からー!! わーっ!!」


 スノンが悲鳴をあげているのだが、遊は敵に当たらないちょうどいい辺りをぷらぷらと歩き回っている。

 どこまでギリギリならば攻撃が当たらないかを理解しているようなのだった。


 掠めるように移動すると、スノンのひっかきが発動する。

 ちょっと離れた相手には、炎の矢が飛んでいく。


 小鬼たちはぺちぺちと打たれ、「ウグワーッ!」と消えていった。

 後にはキラキラ光る結晶のようなもの。

 経験点だ。


 一定距離まで移動するとこれを回収できるので、ここでレベルアップ。

 

「なんか選択肢が一気に出てきたんだけど!?」


「これがレベルアップね。アイテムが選択肢で出てくる。ここからの選択しだいでゲームの攻略難易度が変わるわけだ。とりあえず、回収範囲アップで行こうか」


「えっ!? 戦闘力あげなくていいのか!?」


「序盤は経験点を回収しやすくしてね……。ちなみにこの経験点回収アイテムも後々生きてくるから」


「わかんねー!」


「最初はね。僕は経験者だ。任せてくれ」


「おいおい! 敵がどんどん出てくる! 公園のなかに後から後から入ってくるぞ! 無限に出てくるんじゃないのか!」


 小鬼たちが刃物を持って、目を血走らせて次々走ってくる。

 その数は十、二十、三十……まだまだ増える。


「何の心配もいらないよ。間に合った」


「間に合った!? 何が!?」


「炎の矢の本数増加、貫通強化、クールタイム短縮が」


「分からん!」


「見れば分かる。それ!」


 遊から放たれる炎の矢が、明らかに強化されていた。

 一本だけだったものが、三本飛ぶ。

 それが敵を貫通して突き進む。

 しかも連続して放つことができる。


「話に聞いてたより強いぞ!」「手数多い!!」「まずいぞウグワーッ!!」


 小鬼たちがどんどん蹴散らされる。

 すると経験点が吐き出され、遊はちょっと近づくだけでこれらを一気に回収できるのだ。


 ここに来て、氷竜は遊の攻略方法を理解した。


「このゲームの一番きつい所は、オマージュ元の作品はHP制なのに、このゲームだけは常にHP1だからね。一発当たれば終わりだ。これがどういう意味かと言うと……」


「い、一発で終わりぃぃぃ!? そんなミスが許されないなんて……」


「いつも通りということだね」


「えーっ!?」


 笑顔すら見せる遊に、スノンはちょっと引いた。


 さて、小鬼たちをあらかた退治したと思ったら、今度は黒い直立した虎のような怪物が現れた。

 明らかに小鬼よりも速度がある。


「次は俺達だ!」「侵入者め、死ぬがいい!」「俺達は小鬼とは違うぜ!!」


「今度のはでかくて強そうなんだが!?」


「ドラゴンソウルの敵モンスターの方がずっと大きかったけど……」


「あの時は自分もデカかったから気にならなかったんだよ! こっちの自分、小さいんだからな!」


「平気平気」


「平気じゃねー!?」


 だが、遊は悠然と黒い虎たちに向かって歩いていく。

 虎は全身を震わせると、砂嵐を巻き起こした。


 それが遊めがけて襲いかかる。

 これを、余裕を持ちながら次々に回避しつつ近づき……。


 そこでいきなり、スノンのひっかきが発動した。


「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!」


 しかもひっかきの範囲が広がっている。

 空間に引っ掻いたような光の軌跡が出現するので、良く分かる。


「あれ? 自分強くなってる?」


「攻撃範囲拡大、ダメージ向上、クールタイム短縮が」


「最後のやつ、遊が好きなの?」


「強いの。攻撃回数が純粋に増えるの」


 炎の矢が、ひっかきが、黒い虎たちを蹂躙する。

 遊はレベルアップを使って、この二つの攻撃を徹底的に強化したのだ。


「運が良かった。常にレベルアップにこの二つがあったからね。このステージをクリアしたら、リロールやBANが手に入るから、そうしたらもっとレベルアップがやりやすくなる……」


 途中、遊の背後からスコーンと空き缶が一個飛んできて、黒い虎の頭に直撃した。


「ウグワー」


「なんだ今の」


「避けきれなくてレベルアップで1レベルだけ取っちゃったんだよ」


 悲しそうに遊が言った。

 だが、その一撃が決め手となり、最後の黒い虎が経験点に変わった。

 どうやらこれで、大久保公園の雑魚戦闘は終わりのようだが……?


「これで終わり……じゃないよな」


「もちろん。ボスが来るぞ」


「やっぱり~!!」


 大久保公園の外縁を作る緑地を突っ切り、巨大な影が出現するのだった。


「てめえらあああああ!! 調子に乗って暴れまくりやがって!! 小鬼は無限にいるが、俺の手下は有限なんだぞこらああああ!!」


 巨大な黒いヒキガエル人間のような見た目。

 この地域の支配者、グエムルの登場である。

お読みいただきありがとうございます。

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