表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/70

第4話 1st STAGE 聖王都上空

 最初の遭遇は、五機編隊の黒い戦闘機。

 速度こそ自機より速いものの、どこから現れるのかが分かっているのだから対処は容易だ。


 最小限の射撃を置いておくようにして、出現場所に放っておく。

 戦闘機群はショットに吸い込まれるようにして、破壊されていった。


 続いてまたまた五機編隊。

 逆側から登場する。

 これを最小限のショットで撃破。


 倒した敵からは、マギカエネルギーが回収される。

 これを貯めることでパワーアップするし、一度に放出することでボムとなる。

 正直、シューティングゲーマーとしては、ボムを使ったら負けだと思っているのだが……。


 おっと、地上戦力のお出ましだ。

 六足で歩行する戦車タイプのエネミーで、前後左右に円を描いて動きつつ、砲撃を行ってくる。

 ここからが弾避けのスタートというわけだ。


「とりあえず安地(安全地帯)に移動して……」


 コーラを一口飲んだ。


「よし、やりますか」



 ※


 敵機の反応消滅。

 空母の中のセシリアは、驚愕に震えていた。


「そんな……! 出撃してからものの一分足らずで、十機撃墜!? これって、王都を襲撃してきた航空戦力の半分に当たるのに……!」


 だが、ブラックシップ・トルーパーズの戦力はこんなものではない。

 あの戦闘機など、前哨戦もいいところだ。


『行けえっ、ダムダム戦車!! 旧式戦闘機一機がなんだ!? 撃ち落とせーっ!!』


 オクトパリスのヒステリックな叫び声が響き渡る。

 出現したのは、王城に匹敵するサイズの巨大な戦車だ。

 六本の機械式の足を用いて、王都の家々を踏み潰しながら動き回る。


 上部には巨大な砲塔が四つ存在しており、ここから火砲による連続射撃が行われた。

 隙間など無いような、恐るべき弾幕。

 射撃が空を埋め尽くすのではないかと思われる。


「お願い……! YOU……! どうか、生き延びて……!」


『よし、やりますか』


 思わず天に祈った時、YOUと登録されたパイロットの声が聞こえてきた。

 メイガスは、悠然と空中に浮かんでいる。


 どういうことか、空を埋め尽くさんばかりの弾幕が、その一点にだけはただの一発も到達しないのだ。

 メイガスは力を溜めているかのようだった。

 そして、火砲が一瞬途切れた時、動き出す。


 火線の隙間を無造作にスッと抜けると、あっという間にダムダム戦車に肉薄した。

 火砲が射撃する瞬間に、ビーム機銃を叩き込む。

 たちまちのうちに、砲塔が一つ破壊された。


『なにっ!? させるかーッ! お前たち、攻めろ攻めろーっ!!』


 ダムダム戦車上空より、黒い戦闘機の編隊が襲いかかる。

 彼らは戦車の火砲と同調しており、味方の射撃を受けることがない。


 たたでさえ回避困難な対空射撃の中を、さらに空中戦力と戦わねばならない状況だ。

 絶体絶命。


 普通であれば、だが。

 まず、メイガスは戦闘機群を無視した。


 そしてダムダム戦車の第二砲塔を破壊。

 旋回してきたところを、第三砲塔に肉薄して破壊。


 ダムダム戦車は瞬く間に、攻撃手段の七割を失った。

 慌てたのか、その動きが不規則になる。

 弾丸が周囲にデタラメにばらまかれる。


 弾の軌道が読めない……はずなのだが、これをメイガスは悠々と回避した。

 あまつさえ、回避しながら飛来する戦闘機群を次々に撃墜していく。


 己に向かって放たれる射撃を、全て最小限の動きで回避しながら、敵だけを確実に落としていく。

 戦闘機群は壊滅。

 そしてダムダム戦車の残る砲塔が破壊され……。


 巨大な歩行戦車は全身から炎を吹き出し、轟沈した。

 無傷のまま、メイガスがそれを飛び越えていく。


『ば、ば、馬鹿なーっ! そんな馬鹿なーっ! 我が艦隊主戦力のダムダム戦車がーっ!?』


 オクトパリスの悲鳴が響き渡った。


 破壊した機体から溢れ出たエネルギーが集まる。

 これを吸収したメイガスの形状に変化があった。


 左右の翼に突起が増える。

 それが砲口になった。


 これによって、ビーム機銃とレーザー砲の同時使用が可能になる。

 

 この光景は、開発者であるセシリアにも信じられないものだった。

 自らが手掛けた機体のスペックはよく知っている。

 これほどの戦果を挙げられるはずが、無いような機体だ。


「す……凄い!! 帝国の機体が全く相手にならない……! 技術力では何世代も先を行っているはずなのに……! パイロットの操縦能力だけで、こうまで戦えると言うの……!?」


 ついに、聖王都を襲った敵機のほとんどが破壊された。

 残るは指揮官機。

 触手を持つ異形のマシーン、オクトパリス。


 王城の上に鎮座するこのタコ型マシーンは、目のようにも見えるカメラアイを真っ赤に輝かせた。


『うおおおおおっ! 許さん! 許さんぞ王国の戦闘機!! 皇帝陛下から賜った貴重な戦力を、よくも、よくもーっ!! お前ごとき旧式にこうまで蹂躙されたとあっては、みどもの名は地に落ちる!! だが! せめてお前を討ち取って陛下のお怒りを鎮め────!!』



 ※


 一面ボスの口上が始まった。

 このゲームのいいところは、口上をキャンセルできるところだ。

 トトンっとショットボタンを押し、口上を途中でストップさせる。


 ※


 ビーム機銃がオクトパリスの顔面に叩き込まれた。

 気持ちよく口上を喋っている最中に、水を差された形だ。


『な、ななななななっ!! お前っ! お前ーっ!!』


 激昂する間にも、メイガスが懐に入り込んでくる。

 ビーム機銃とともに放たれるレーザー砲が、恐るべき連射でオクトパリスの装甲をむしり取って行った。


 ここに来て、ようやくオクトパリスは理解する。


『お前は……! お前は敵だ!! みどもたち帝国の脅威だ!! 認めよう!! お前をここで全力で倒さねば、お前は絶対に帝国へ大いなる災いをもたらす!! まさかこんな辺境の惑星の片隅に、これほどの敵が潜んでいたとはな……!!』


 叫びながらも、触手が蠢く。

 触手の先端からビームが伸び、鞭のようにしなった。


 上から、下から、左右から。

 触れれば即蒸発する光が襲い来る。


 だが、それを常にギリギリで回避するメイガス。

 それどころか、攻撃をやり過ごすと同時に、射撃によって触手に攻撃を加える。


 一本が一瞬むき出しになった関節部を的確に狙い撃たれ、爆発とともに分離していった。

 そしてもう一本も弾け飛ぶ。


『おのれッ! おのれおのれおのれーッ!!』


 全ての触手からビーム鞭を発生させ、メイガスを滅多打ちにせんとするオクトパリス。

 だが、当たらない。

 まるで全ての動きが読み切られているかのように、ただの一発もメイガスを掠めることすらできない。


 反撃で落ちていく触手。

 ついに全ての触手を失ったところで、オクトパリスは覚悟を決めた。


『こうなれば……王都ごと、このオクトパリスの動力を暴走させて爆発を……!!』


 接近するメイガス。


『邪魔はさせんぞ! 動力炉から直結した拡散ビームを喰らうがいい! わはははははは!! 隙間などないぞ!! 貴様はみどもに近づくことはできぬ……』


 タコの墨のごとく広がった拡散ビーム。

 それは目眩しと同時に、オクトパリス自爆までの時間を稼ぐ役割を果たす。

 攻撃であり防御でもあった。


 だがそのビームの、ほんの僅かな隙間。

 そこからメイガスが抜けてきた。

 ただの一秒たりとも、時間稼ぎなどできてはいない。


『は?』


 レーザー砲が瞬く。

 オクトパリスのカメラアイが破壊された。


『ぐわああああああああ!! そんな! そんな馬鹿な! このオクトパリスが! このみどもが! 辺境の戦闘機ごときに!!』


 破壊されたカメラから、ビーム機銃が機内を穿っていく。

 オクトパリスの全身から炎が上がった。

 動力炉を暴走させるどころではない。

 動力炉を構成するパーツが次々に破壊され、王都に降り注いでいく。


 これでは、自爆することすら許されない。


『そんな! そんなーっ! あんまりだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 何も、何もさせてもらえないなんてーっ!! ウグワーッ!!』


 最後の一欠片になるまで、ビーム機銃でバラバラにされたオクトパリスは、王城の上で小さな小さな爆発を起こし……。

 全反応を停止した。


 ブラックシップ・トルーパーズの軍勢の一つが、今、全滅した。

 

お読みいただきありがとうございます。

面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
口上キャンセル、えげつねえ(笑)
このゲームのいい所は、じゃねーわ(笑) リアルで邪魔されてるのを想像して大笑いꉂ(ˊᗜˋ*)したわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ