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ワンコイン・メサイア~シューティングゲーマー、異世界の救世主となる~  作者: あけちともあき
ドラゴンソウル

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第30話 第二ステージ 憤怒の火山

 山々が火を吹く。

 火の粉混じりの黒煙がもうもうと立ち込め、灼熱の赤いマグマが溢れ出す。


 ありとあらゆる生物を寄せ付けぬ、危険な土地。

 それが憤怒の火山だった。

 かつては、この地に住まう火竜を信仰する人々が暮らしていた場所。


 だが、信仰対象であった火竜は、魔龍による侵略に抗うために自らの意識を狂気に染め上げた。

 火竜は己を信じる人々を糧にし、大いなる力を得る。

 そして、攻め寄せた魔龍の眷属を焼き払い、憤怒の火山の独立を守ったのだった。


 今もまだ、火竜は狂気の底にある。

 生きとし生けるあらゆる者を寄せ付けず、憤怒の火山は今日もまた炎を吹き上げ続けるのだ……。


「とは言われておりますが、その実、火竜様に身を捧げたのは世界を守らんとする人々だったのです。火竜の民の多くを火竜様はこの地に移動させ、自らは火山と一体となってあの地の守りとなられたのです……。おお、火竜様……!」


「な、なるほど……!! 永久に狂気の人食い竜と謗られることになろうと、民を守ることを選んだと……。泣けます……!!」


 セシリアがえらく感動している。

 遊とセシリアが降り立ったのは、憤怒の火山にほど近い集落だった。


 その地の人々は、火竜を崇めて生きていた。

 正気を失う代わりに地の守りとなった火竜は、もはやもとに戻ることはない。


 火竜の民は、これを悲しみ、しかし主の元から遠く離れることも出来ず、悲しみながら暮らしていた。

 魔龍がこの世界に存在する以上、しかたのない犠牲なのだと自分たちを慰めていたのだ。

 

 そこに、狂気に陥った地竜が、守りの竜に討たれる……! という話が伝わってきた。

 

「お願いいたします、守りの竜よ! 火竜様を……どうか楽にしてやって下さいませ……!! 世界は御身がお守りくださるなら、火竜様はもう休んでも良いと思うのです……!」


『うん……。思いの外シリアスなストーリーだったんでびっくりした』


「遊? 何といいますか……緊張感が無いのは良し悪しですけど……」


 セシリアが憑依している巫女は、じーっと守りの竜を見上げた。

 真っ青な竜はバツが悪そうに、翼の爪で頭をポリポリ掻く。


『大丈夫。あんまり気の利いたことは言えないけど、火竜は止めるから。まあ見てて』


 それだけ告げて、守りの竜が舞い上がった。

 第二ステージ、憤怒の火山の空へ。


 この土地に出現する魔物は、そのほとんどが火竜を攻撃しようとする魔龍の眷属である。

 空を飛べば、火竜の放つ火山弾で撃ち落とされる。

 そのために、魔龍はこの地の攻略に地上型のモンスターを多く選択した。


 火山に群がり、踏破せんとする無数の魔物たち。

 岩の甲羅を被った、人間の数倍はある蜘蛛。

 火山弾を避けて、低い高度を滑空する、ムササビのような怪物。


 彼らは今、憤怒の火山に新たな挑戦者が現れたことに気付いた。


 守りの竜。

 飛行困難なこの地にて、ただ一体、悠然と空を駆ける翼である。


 守りの竜を狙って襲い来る火山弾。

 これを、竜は回避するのではなく、ブレスによって迎え撃った。


 連射されたブレスが火山弾を撃ち落とす。

 それは、どこに火山弾がやってくるのかを知り尽くしているかのようだった。


『なんだい、あいつは……!!』


 眷属たちは呆然としながら、その存在を見上げている。

 そして我に返った。


『まずい! あいつに火竜を倒させてはいかん!!』『火竜の結晶を奪われる!』『あんなやつは知らない! ネビュラゴールド様の配下ではない!』『何なのだあの竜は!』


 動揺が伝播し、魔龍の眷属たちは一斉に、守りの竜を敵であると認識した。

 彼らは、火竜と戦うために与えられていた装備を、全て守りの竜との戦いに用いることとした。


 岩を背負った蜘蛛は、その甲羅から砲台を展開させる。

 砲撃、砲撃、砲撃。


 山々の影から次々出現する蜘蛛は、砲弾を次々に浴びせかけた。

 だが、これを守りの竜が回避する。

 そして反撃で浴びせられたのは、地上を焼き払う猛烈なブレスである。


『な、なんだこの攻撃は!』『まるで我らを焼き払うために生み出されたような、地を舐める炎のブレス……!』『や、やられるーっ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!!』


 出現した蜘蛛は全て、炎で焼き尽くされた。

 次いで、自らの肉体を丸めて砲弾と化すムササビの群れである。

 彼らは低空から打ち上がり、守りの竜を落とさんとする。


『下方からの高速攻撃は見切れまい!』『落ちるがいい、侵入者め!』『火竜の首は我らのもの!!』


 だが!

 これもまた守りの竜は見切っている。


 ムササビたちが打ち上がった時、守りの竜はわざと速度を遅らせ、やや後方に位置していた。

 そこは、ムササビを迎え撃つには絶好の位置。


『し、しまった!!』『見せてもいない我らの攻撃を、完璧に読まれた!?』『まずい、逃げ場が……!!』『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』


 ブレスによって、次々に撃ち落とされるムササビたち。

 あっという間に全滅!


 魔龍が憤怒の火山を攻略すべく、進軍させていた全ての眷属はこうして打ち払われた。

 今もなお降り注ぐ火山弾を、次々に撃破しつつ……。


 憤怒の火山の火口上空に、守りの竜が至る。

 その時である。


 黒煙が裂けた。

 火山雷が光り、轟き……その中から真っ赤な巨体が姿を現す。


『この地より先には……行かせぬ……!! ここは我が領域なりぃぃぃぃぃぃ!!』


 火竜出現。

 ここからが、第二ステージ本番である。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
雑魚敵が面ボスの敵だったとは……中々に凝った裏設定だったのですねぇ……
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