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ワンコイン・メサイア~シューティングゲーマー、異世界の救世主となる~  作者: あけちともあき
ドラゴンソウル

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第29話 セシリアの予習

「そもそも、ドラゴンソウルはどういうゲームなのですか?」


 夕食は冷食のとんかつをレンジで温め、卵でとじたカツ丼だった。

 遊はお茶碗でほどほどの量だったが、丼飯をパクパク食べたセシリアである。


「食休みとかしなくていいの? いきなり説明して大丈夫?」


「平気です。私、食べてすぐに動けるので」


「体に悪い」


 このお姫様には、ちょっとじっとしていてもらうことを覚えて欲しい。

 そう思う遊だった。


 さて、洗い物を済ませた遊。

 横ではセシリアが、洗い物の水滴を拭いている。


「ふんふん、そのように繊細な手つきが必要なのですね……。私も練習せねば。聖王国では金属の器が多かったですからね。合理的なので」


「金属は落としても割れませんもんね」


 聖王国、工業が発達した世界だったようだ。


「じゃあ実際にプレイしてみよう。それで分かるから」


「それはそうですね。ではやってみてください」


「セシリアがやってみよう」


「私が!?」


 実体験してもらおうという方針の遊なのだった。

 これから数日間付き合う、ドラゴンソウルの世界。

 セシリアも一緒に飛び込むわけだから、理解を深めてもらいたい。


 そして実際にやってみた。


「なるほど、俯瞰図からの冒険みたいな……。私の乗っていた空を飛ぶ岩から飛び立つのですね。ふむふむ、あっ、ブレスを出しました! 敵が落ちて……パワーアップ? あっ、首が増えた!! 遊は増えなかったのに!」


「なんか自分の首が増えるの気持ち悪かったんで、連射強化にしたんだ。なお、いつかは首を増やさないと手数が増えないので」


「遊の首が増えるんですね……」


 遊が真面目な顔で頷いた。


「あっ、第一ステージのボス! アースドラゴンでしたよね。うわー、首がぐりんぐりん動く」


「ドット絵の職人芸だよね……。あ、首には当たり判定あるから気をつけて……」


「あ~っ」


「弾に当たると首の数が減る」


「ひいっ、じゃあ首が一つの時に当たったら首がなくなってしまいますよ!」


「死ぬね」


「ひー」


 か細い悲鳴をあげるセシリアなのだった。

 そんな事をしているので、弾に当たって自機が落ちてしまった。


「ああ~……! 思った以上に難しいのですね。初見だと、どこをどうしたものか」


「これは弾が早いゲームだからね。覚えないといけない。逆に、メイガスバレット……セシリアの世界は、弾幕ゲーと言って弾が多いゲームと酷似した世界だったんだ。こっちは弾は多いけど弾速が遅いからねえ。どれ、貸してみて」


 第一ステージを、サクサクと進んでいく遊。

 セシリアがやっていたのとは、まるで別のゲームのようだ。


「凄い……。なんて言うか、無駄がありません」


「覚えてるからね。シューティングは覚えゲー。あとはパターンゲーかな。パターンを頭に叩き込むと、初見の攻撃をされても対応できるようになったりするし。宇宙での黒船王? それとの戦いはそうだったなあ」


 あれはボムを使わざるをえなかった。今は使って良かったと思っている、と呟く遊。

 なんだか分からないが、葛藤がそこにはあったのだろう。

 セシリアは遊の考えを尊重する方針である。


「はいクリア」


「あっ、いつの間に!!」


 アースドラゴンが倒され、結晶が回収されるところだった。

 ここで遊は、さっきと同じ選択をする。


「さっきも話したけど、原作のドラゴンソウルにはこの画面がない。首を増やすか連射を早くするかしか選択肢がないんだ」


「へえ……。なんていうか、シンプルなんですね……。攻撃のボタンも二つだけでしたし、初めての私でもよく分かりましたし」


「でしょ? 昔のゲームはシンプルなんだ。でも、リメイクに当たってちょっとカスタム要素が加わった。それが今回のドラゴンソウルだ」


「なるほどですねえ……。では、明日私たちが挑むのは……」


「火山ステージ。地上からの攻撃が多いステージだよ。火山弾やボスとの戦いは空中戦だけど」


「あっ、真っ赤なゲーム画面!!」


「このステージはずっとこれだからね。明日は気を付けてやって行こう」


 これもまた、サクサクと行動してクリアしてしまう遊なのだった。


「……なんだか遊がやっているのを見ると、簡単に思えてしまいます。さっき私はやられたのに」


「覚えるくらいやり込んでるからね」


「一体、どれくらいの時間、どれだけの数のゲームをやり込んだのですか……!?」


「そうだなあ……。時間はもう分からないし、遊んだゲームは両手足の指じゃ数え切れない……」


「ひええええ! 世界を二十以上救えるではありませんか!」


「言い過ぎだよー」


「言い過ぎではありません! 私はあなたに救われたのですから!」


 私がエビデンスです! と胸を張るセシリア。

 そうやって突き出されると目立つなあ、と遊はとあるところを見て、スッと目をそらした。


 当然、この視線にはセシリアも気付いている。


「こう、もっと遊はガツッと来てもいいと思うのです」


「僕はスロースターターなんだ……」


「世界を救うのは誰よりも速いのに!」


 大げさに驚いて見せてから、それがおかしくて堪らなくなるセシリア。

 くすくす笑い出した。

 遊も笑ってしまい、第三ステージで被弾した。


「うん、今日は終わり! 平常心が崩れた……」


「平常心ですか? やる気とか気合とか……そういうものではなくて」


「平常心。それが僕の一番強い時だから」


「確かに! でしたら私は……世界を救っている間は遊を誘惑できませんね」


「えっ、誘惑!?」


「ふふふっ、お風呂に行ってきますね」


 去っていくセシリアなのだった。

 それを見送って、遊はポツリと呟いた。


「平常心崩れちゃったよ」


お読みいただきありがとうございます。

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