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第14話 4thSTAGE 聖王国周辺宙域

 ちっぽけな惑星だ。

 バックノヴァはそう思う。


 ブラックシップ・トルーパーズに存在する全ての兵器群は、自らの意志を持つ自律兵器たちだ。

 戦闘機のみ、パイロット型インターフェースが乗り込んでいる。

 それらはバックノヴァの体内にも存在し、この超弩級宇宙戦艦の血液となり、運行を担当する。


 言うなれば、バックノヴァの意志とはこのインターフェース群の集合意識だ。

 全身にあまねく存在するインターフェースたちが一つの巨大な知性となり、小惑星群にも匹敵する超巨体を自在にコントロールしている。


『実にちっぽけな星だ。皇帝陛下はなぜ、あの惑星にこだわったのか。いや、我が軍の通過する過程にあれがあったというだけか。だが……』


 バックノヴァの形が変わっていく。

 巨大な三角錐状の船体のあちこちが展開し、砲口が、ミサイル発射管が、レーザー砲塔が出現する。


『オクトパリス、銀甲騎士団、そしてバリガンダー。数々の星を滅ぼしてきた彼らがまさか逆に滅ぼされるとはな……! そして、それほど強力な敵が、こんな小さな星に存在していたとは』


 バックノヴァの砲口に光が灯る。

 ミサイルがせり出してくる。


『取るべき手段は一つだった。我らは油断していたのだ。例え弱き星であろうと、必死ともなれば牙を剥こう。ならば、星ごと粉砕してしまえば良いのだ! 全砲門を開け! 一斉砲撃……』


 バックノヴァが宣言する直前である。

 それが来た。


 バリガンダーを打ち倒した、何者か。

 ただ一機の戦闘機だ。


 それが、聖王国に向いていた砲の一つに向かって攻撃を開始した。


『なにっ!?』


 レーザー砲が集中し、光が灯っていたビーム砲一基が爆発、沈黙する。

 インターフェースの一部がネットワークから消滅した。


『敵機襲来! 戦闘機群発進! 迎撃せよ!』


 バックノヴァの各所が展開し、そこここから戦闘機が溢れ出してくる。

 雲霞うんかの如き……という表現に相応しい数だ。


 だが、既にその一箇所に敵性戦闘機……メイガスが張り付いていた。

 ビーム機銃が火を吹き、戦闘機群は飛び出すや否や片っ端から落とされる。


『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』


 さらにレーザー砲が発射口を破壊。

 返す刀で、襲い来る戦闘機群を撃ち落とす。


 まるで、どこに相手が来るのか分かっているかのようだ。


『不可解な動きをする! だが、損害は軽微。この程度ならば修復し、すぐさま復帰を……』『敵性戦闘機移動。船体下部に向かった』『対空機銃使用』『馬鹿な、速すぎる』『迎撃間に合わず』『インターフェースがたまたま手薄な場所に潜り込んだ? まさかな……』


 バックノヴァの複数の意識が連続して行動を行う。

 彼らの意識は、完全にこの戦闘機に向けられていた。


 ※



『危ない。原作のゲームとは細かい演出っていうか……展開が違うな。流石は現実だ』


 遊はコーラを一口飲みつつ、対空射撃の雨を掻い潜る。

 片手をスティック、片手を缶に。

 回避に専念すれば難しくはない。


 むしろここからが本番だ。

 聖王国を狙っていた主砲は破壊した。

 ミサイルは撃ち落とせばいい。


 だが、これらは時間が経つと再生してしまう。

 ならばどうするか?


 各部の中枢を叩くのだ。

 それが、バックノヴァ攻略のキモになる。

 そもそも、この一隻の攻略だけで一つのステージになっているのだ。


『よし、ここでレーザー砲を使って下部エンジンのハッチを攻撃……開いた! いけるいける』



 ※



『下部のコアに攻撃!? どうして場所が分かるのだ!? あの戦闘機は何者だ! コアが破壊された! パージせよ! まだまだ、バックノヴァの力は落ちぬ!!』


 切り離されたエンジン部は、既に中枢を破壊されている。

 それがバックノヴァから離れたところで、大爆発を起こした。


 爆風を突っ切って、メイガスが飛翔してくる。

 向かうのは、エンジンをパージしたバックノヴァ艦内である。


『艦内に侵入! 迎撃せよ! 迎撃せよ!!』


 艦内にサイレンが鳴り響く。

 照明が点滅し、インターフェース群が武装した人型機動兵器が、艦内を飛翔し次々に襲いかかる。


 だが、メイガスの勢いが止まらない。

 狭い通路内を埋め尽くす射撃を、まさに針の穴に糸を通す正確さでジグザグに回避。


『なっ、なぜ当たらなウグワーッ!!』


 人型機動兵器の一体が爆発。

 これによって弾幕が減少し、メイガスが大きく前進した。

 進みながらレーザー砲が周囲の二体を照準し、破壊。


『ウグワーッ!』『ウグワーッ!?』


 あらゆる通路から出現する機動兵器を、連続で破壊する。

 既に、発生した弾幕は機動兵器群の行動をも制限するほどの量に達している。


 だが、これらを正確に回避しながらメイガスはひたすらに突き進むのだ。

 迷路のように張り巡らされた船内通路を、まるで答えを知っているかのように。


 到達したのは艦橋部。

 通路とを隔てる分厚い隔壁が、レーザーの集中攻撃によって破られる……!


『馬鹿な、ここまで侵入を許すとは!!』『あの数の機動兵器を抜けてきたのか!? 有り得ん!!』


 中枢インターフェース群の叫びの後に、ビーム機銃の斉射が室内を一掃した。


『ウグワーッ!!』


 火を吹き、爆発する艦橋。

 飛び出してくるメイガス。


 ついに艦橋もパージされ、“それ”の姿があらわになる。

 超巨大戦艦バックノヴァの真の中枢であり、全てのインターフェースの意志を集合させるメインコンピューター。


 小惑星ほどの大きさの、脳を思わせるそれは、表面に出現した巨大な眼球でじろり、とメイガスを睨みつけた。


『推測する。推測する。推測する。お前は、お前は……』『この状況を何度も経験している存在。有り得ぬ存在……!!』『我らを滅ぼすためだけに現れた、敵……! 天敵……!!』


 レーザー砲が光り輝く。

 脳型中枢ユニットは、『ウグワーッ!!』という叫びとともに焼き切られた。

 バックノヴァの全身に走る輝き。


 超巨大戦艦はその全身から火を吹き、バラバラに崩れていった。

 崩壊した全てが爆発を起こす。


 小惑星帯を照らし出す爆光の中を突っ切って、メイガスが飛翔した。

 さらに先へ、先へ。


 バックノヴァの爆炎に照らし出された宇宙に、ブラックシップ・トルーパーズの皇帝がいるのだ。

 だが……今日はどうやら時間切れのようだった。


 聖王国から、セシリアの空母が浮上してきている。


『遊ー!!』


『ああ!』


 メイガスはその飛翔を止め……。

 ゆっくりと空母に向けて帰還するのだった。


 聖王国周辺宙域、解放。

お読みいただきありがとうございます。

面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。


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