第13話 3rdSTAGE 惑星封鎖バリア発生装置
『天眼魔球……バリガンダーッ!! ホホホホホホ!! 何人たりともワタクシの領域からは逃しませんよぉぉぉぉぉっ!! 無論! 入ることも許しませぇぇぇぇぇんっ!!』
『ウグワーッ!!』『な、なんというバリアだ! 突破できん!!』『くそっ、そろそろ燃料も尽きる……!!』
僅かに残った、聖王国宇宙軍。
彼らは母星を救うべく、何度もこの巨大な眼球、バリガンダーに挑んでいた。
だが、この大怪球の張り巡らせたバリアは、突破することが出来ない……!
バリガンダーと、このバリアを維持する人工衛星群も分厚い装甲と、防衛装置たちに阻まれ、宇宙軍は犠牲を増やすばかりだった。
このままでは……。
母星は閉じ込められながら干上がり、聖王国は滅ぼされてしまう!
そんな危機感から、宇宙軍の戦士たちは戦いに挑もうというのだった。
これを嘲笑うバリガンダー。
『ホホホホホホ! 無駄無駄無駄! 本当に無駄ですよぉーっ!! ワタクシの守りは! 完璧! そして星を封印しながら、地上で蠢く虫どもにぃ……ほぉーれ!』
人口衛星が展開し、そこから金属の巨大な杭が放たれた。
重力によって加速しながら、放たれた杭が地上に突き刺さる。
一撃で、大型の建造物をバラバラにするほどの威力だ。
星を封印するだけでは飽き足らず、攻撃を加えているのである!
しかも、バリガンダーが放つ金属の杭、バリガンダインの狙いは正確だ。
成層圏から、地上で動き回る戦車にだって命中させることができる。
あらゆる守りを突き破り、地上で抵抗しようとする勢力はこの杭に貫かれた。
聖王国に打つ手なし!!
抵抗する力を削がれながら、このまま干からびるしかないのか……!
そんな絶望が、宇宙軍にも……地上で抗おうとする軍の生き残りにも漂いつつある。
そんな中に、空母が現れた。
小型の飛行空母が、忽然と宇宙港に出現したのである。
「これは……。騎士たちが何者かに倒されたのは確認していたが、まさかあの空母が?」「そんな馬鹿な。十六体もいたあれらを、どうやって倒したと言うんだ。第一、あの大きさでは一機や二機の艦載機しか……」
空母の甲板に、その艦載機が転送される。
下部にロケットエンジンを搭載した、小型戦闘機である。
その名はメイガス。
プロトタイプメイガスが、発進体勢を完了していた。
『遊、発進いいですか?』
『もちろん。発進する』
そんな音声が周囲に響き渡った。
ロケットエンジンが火を吹き始める。
メイガスが垂直方向に飛び上がっていくのだ。
「だが、宇宙に上がろうとしたものは皆……あの杭にやられた! あれからは逃れることもできない! どうしようというのだ!」
残存する軍がそんな言葉を漏らした時……。
『ホホホホホ! 新たなカモが来たようですねえ! 無駄です! 無駄だというのにーっ!! バリガンダイン発射!!』
放たれる、必中の杭!
それは上昇するメイガス目掛けて一直線に……。
降り注ぐところを、先端にビーム機銃が絶妙な角度で当てられた。
ほんの僅かに、バリガンダインの方向がずれる。
『なっ!?』
バリガンダインはメイガスをかすめながら落下していった。
その後部を目掛けて、メイガスからレーザー砲が降り注ぐ。
先端が強固なバリガンダインだが、基部まではその強靭なコーティングがされていない。
いわゆる、衛星によって杭を掴むため、基部がつるつるしていては保持できないのである。
メンテナンス用にコーティングされていなかった後部を、レーザーは正確に穿った。
基部を貫通し、内部まで突き通る。
レーザーはついにバリガンダインの先頭から吹き出したと思ったら、内部からこの杭を融解、爆発させた。
メイガスが加速する。
どんどん上がってくる。
『こっ、このっ!! ワタクシのバリガンダインを破ったですってぇぇぇ!? 原住民のくせに!! ワタクシはここまでコケにされたの、初めてですよぉぉぉぉぉ!!』
バリガンダーが巨大な目を見開く。
強いエネルギーを帯びた目は、血走って見えた。
『放て! バリガンダイン連続発射! 落とせーっ! あのふざけた原住民を落とせーっ!!』
周辺の人工衛星全てが、メイガスに標的を定める。
放たれるのは、無数の杭。
上から、右から左から。
バリガンダインが次々と飛来する。
高速かつ、当たれば必殺の杭。
この攻撃をくぐり抜けられたものはこれまで存在しないのだ。
だがしかし、今この時、この地にて、バリガンダインによる鉄壁の守りは打ち砕かれた。
飛来する杭を読んでいるかのように、ほんの僅かな動きでメイガスが全てを回避していく。
ロケットエンジンを積みながら、これほど微細な動きが可能なのか?
メイガスの軽量さであれば可能なのである。
そして、乗り込んでいるパイロットの技量が並ではない。
通過する瞬間、バリガンダインは基部を破壊されて落とされる。
その時に溢れ出すエネルギーを、メイガスは吸収した。
『ボムが二発ぶん溜まってしまっている……。使わないのだが……』
ぶつぶつ言いながら、メイガスはロケットの第一段階を切り離す。
より軽くなったメイガスが空に向かって加速した。
『馬鹿なーっ!! そんな馬鹿な! バリガンダインが当たらない!? 必中の杭を、どうやって回避を……! ま、まさか、狙いが正確だからこそ、いつ撃たれるかを予知していれば絶対に回避できるとでも言うの!?』
バリガンダーが想像した通りである。
メイガスは、遊はどのタイミングでどの攻撃が来るかを、体で覚えている。
例え目をつぶっていても、彼はこの場をくぐり抜けるだろう。
第二段階を切り離した時点で、周囲は青空から宇宙に変わっていた。
この空域では、バリガンダインは威力を発揮しない。
重力による加速が望めない以上、衛星の射出装置の出力が全てなのだ。
これでは、先程よりも劣る速度と威力しか出せない。
『おのれーっ! おのれおのれおのれーっ!! 防衛機構! 落とせーっ! あれを落とすのよぉーっ!!』
バリガンダーのヒステリックな叫びに応えて、人工衛星の中央部が分離した。
UFOにも似た姿になったそれぞれが、ビームをシャワーのようにばらまきながら、メイガスの頭上に飛来する。
降り注ぐビームは、回避の隙間すら許さない。
まさに、バリガンダー最後の守りとも言えるこの防衛機構が、メイガスを封殺するはずだった。
だが、メイガスはバリガンダインのエネルギーを吸収している。
装備しているレーザー砲がパワーアップしていた。
ビームシャワーを、すいすいとくぐりながら、メイガスのレーザーが防衛機構を正確に撃ち抜いていく。
爆発、爆発、また爆発。
宇宙に咲く花の中に、メイガスの爆発はない。
一方的に、防衛機構が撃墜されていくのだ。
『そ、そ、そんなぁーっ!? あいつの攻撃は必中だとでも言うのぉーっ!? 止まらない!! なんで止まらないの!! 来ちゃうーっ! ワタクシのもとに来ちゃうわぁーっ!!』
その言葉通り、ついにメイガスはバリガンダーと同じ高さまでやって来た。
バリアギリギリに肉薄しながら、ついに全ての守りを失ったバリガンダー目掛けてビーム機銃を連射する。
『ウグワーッ!? ワタクシの、完璧な、守りが! 虫食いだらけぇぇぇぇぇ!! ワタクシのプライドがズタズタよぉぉぉぉぉ!! こんなの、あんまりよぉぉぉぉぉぉ!! ウグワーッ!!!!!』
巨大な眼球は、ぎょろんと白目を剥くと……。
内部から次々と強烈な光が吹き出し、大きく膨れ上がったと思ったら爆発したのだった。
次の瞬間、惑星を包みこんでいたバリアが消滅する。
聖王国に、青空が戻ってくるのだ。
第三ステージクリア!
……だが。
青空に映る、巨大な影。
地上にいてすら視認できる、馬鹿げたサイズのそれ。
自走衛星戦艦バックノヴァ。
単体で第三艦隊を構成すると嘯く、ブラックシップ・トルーパーズ最大の戦力が今、惑星に肉薄していたのである。
『立て続けに第四ステージ、スタートか』
コクピットの中で、遊が嬉しそうに呟いた。
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