酒を飲み、英雄を語る②
劉備と魯粛は一息ついて、酒を一杯飲んだ。
「漢中の張公琪殿はどうですか」
劉備「無理でしょう。
高祖皇帝がかの地に奉じられ、関中を得て、項羽を倒しましたが。
多くの者が黄巾と同じ宗教色が強い。
忌避する者も多い。
雍州、涼州の馬寿成殿、韓遂も同じく中原より遠い。
羌、氐族との戦いもあるし」
魯粛「あとは大した人物が、いや幽州の劉虞殿は如何ですか。
名門で器量もある、皇帝になってもおかしくない。
鮮卑、烏丸と言った異民族にも寛容ですが。」
劉備「一番、皇帝に近い方ですが、配下の私の兄弟子の公孫伯珪殿とは真逆の性格のため、対立しています。
激突必至と噂がありました。
伯珪殿は優秀ではあるのですが、優秀な人材を嫌い、凡庸な人物を用いることもあり、意外と私も追い出されたのかもしれん。」
魯粛「彼の思惑は何処にあるのか、分からないですな。」
劉備は溜め息をつき、魯粛「天下を取る人間、他にいますかな?」
劉備「いるにはいますが、孔北海殿はどうですか?」
魯粛「玄徳殿、私をからかってませんか、彼は孔子の末裔ですが、青州を治められない人間が、天下を治めるには無理がある。論外というしかない」
劉備は笑って、「そうですな。
では、現在、兗州にて激突中の二人に関してはどうですか?」
魯粛「やっと出てきましたな。」
劉備「呂奉先殿はどうですか?」
魯粛「万夫不当、武勇は漢王朝一、貴方の義弟殿は怒るかな。」
劉備「まあ、決着をつけたがってますが、武にかたよってますが、知謀の士には陳公台、武勇の士には高順、張遼などいますが、いずれ呂奉先殿の行いの報いをいずれ受けて、呂奉先殿は身を滅ぼすでしょう」
魯粛「丁原、董卓を裏切って殺した報いですか。因果応報を受ける」
酒を飲み、魯粛「いよいよ最後ですか。」
劉備は溜め息をつき、「曹孟徳殿はどうですか。
今、呂布と死闘中ですが、知謀の士には、荀彧、荀攸、郭嘉、程昱、満寵。
武勇の士には夏候兄弟、典韋、楽進、于禁。
あと、韓浩、李通といった人材も見逃せない。
野にいる貴賤を問わない人材登用をしてる。
青州の黄巾を得て、兵力は多い。
徐州を討ちに行った最大の理由は父親の仇討ちもありますが、もう1つ、兗州では降った黄巾を食わしていくだけの食糧がなかった。
しかも蝗の害もあった。
一州を得て食わせる考えもあったのでは、と思ったのですが、魯粛殿はどう思いますか?」
魯粛は顔色を変えた。
「それに青州を治められない孔北海の現実にそぐわない統治を行い、人々は困窮し、宗教に走り、反乱を起こした。
そして」
魯粛「あり得ますな。玄徳殿から見てやはり、曹操が天下に号令をかけると」
劉備は頷き、魯粛「曹操の覇権奪取を阻む英雄となると・・・。
孫文台殿が生きていれば、曹操と対抗出来たでしょうが、孫伯苻殿は袁公路殿から離れられず、玄徳殿の動きでどうなるか、独立など無理でしょうし。」
魯粛は目の前の人物を見て「貴方しかいない、玄徳殿」
劉備は内心、驚きつつも、「私には、彼相手に戦う力がない。
天の時、地の利、人の和すらない。
人材も少ない。
曹操の配下の物量を考えても、遠く及ばない
勝てる要素がない。」
魯粛「勝てないまでも負けない戦いは可能です。
地の利を確保し、曹操が苦戦する場所で戦う。
これしかない。
揚州、荊州、益州という地の利を確保し、中原を伺う、これしかない。
天下二分の計です。
当初、私はある人物と語り合い、孫伯苻殿を立てて、実行しようと思ってましたが、玄徳殿が尋ねて来るとは思わなかった。
袁公路から離れられず、徐州の動きが先行きが不透明になってしまったのを見たら、袁公路殿は徐州での殺戮があっても欲しがる。
孫伯苻殿が江東、江南の覇者になるのは難しい、離れるのは不可能か。」
劉備は頷き、「袁公路殿は使い捨ての道具にするでしょう。
陶謙殿から独立した臧覇への防壁か、曹操と呂布の争いに負けた者への防壁にされて終わるでしょうか」
孫策の立場に同情しながら魯粛に言った。