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フォスとティアの素晴らしい冒険  作者: 嵐さ
霧と影の迷宮
40/42

真実の道

三つの道のうち、“絆の道”を抜けたフォスたちは、

迷宮の中央に戻ってきた。


だがそこには、もう二つの道しか残っていなかった。

一つは黒い霧に包まれた「恐怖の道」。

もう一つは静かに光を放つ「真実の道」。


ティアが息をのむ。

「……次は“恐怖”か。」


ノクスがフォスの肩に乗り、心配そうに呟く。

「ねぇフォス……入る前に言っとくけど、

この道、ただの幻じゃないと思う。

“心が生んだ恐怖”が現実になるタイプのやつ。」


フォスは静かに剣の柄を握った。

「怖がっても進まなきゃ、出口はない。

それに……もう逃げるつもりはない。」


彼の瞳に、ほんの一瞬、過去の影が揺らめく。

――闇に呑まれ、ティアを傷つけかけた、あの夜の記憶。


ティアはフォスの腕を掴み、力強く言った。

「一緒に行く。今度は絶対、ひとりじゃ行かせない。」


フォスは頷き、三人で“恐怖の道”へと足を踏み入れた。


――その瞬間、霧がすべての光を飲み込んだ。


* * *


次にフォスが目を開けた時、そこは荒れ果てた村の跡地だった。

焼け焦げた家々、崩れ落ちた塔、風に舞う灰。

見覚えのある風景。


フォスの喉がひくりと動く。

「ここは……俺の……村……?」


ティアもノクスも、どこにもいなかった。

代わりに、焦げた地面から黒い手が伸びてくる。


「フォス……どうして助けてくれなかったの……?」

「お前がいなければ……こんなことには……」


亡霊たちの声が、フォスの耳に刺さる。

「やめろッ!!」

叫んでも、声は霧に吸い込まれるだけだった。


フォスの心に、かすかな声が響く。


「恐怖とは、逃げた心の記憶。」


振り向くと、そこに立っていたのは――“闇の王”の姿をした自分自身だった。

その瞳は深い闇のように黒く、

フォスの動きを見透かすように微笑んでいた。


「お前は変われていない。

 光を求めながら、闇を憎みきれずにいる。」


フォスは剣を構える。

「俺はもうお前には負けない!」


闇のフォスが笑い、同じ剣を構える。

二つの刃がぶつかり合い、闇と光の火花が弾けた。


その時、ティアの声が遠くから聞こえた。

「フォスっ!! どこにいるの!!」


その声に、フォスの瞳がわずかに揺れた。

一瞬の隙――闇のフォスの刃が肩を貫いた。


「ぐっ……!」


血が霧に落ち、地面が赤く染まる。

闇のフォスが囁くように言う。

「お前は“光”ではない。

 お前は――“闇と共にある者”だ。」


フォスの膝が地面につく。

だが、再びティアの声が届いた。

「フォス! 立って! あなたは私たちの“光”なんだよ!!」


その瞬間、霧の中にティアの姿が現れた。

彼女の掌には、淡い光の粒が宿っている。


フォスは震える手でその光を掴み取る。

「俺は……光も闇も、どっちも否定しない。

 だってそれが――俺だ!」


一閃。

フォスの剣が闇を貫き、もう一人の自分が霧となって消える。


静寂。


ティアが駆け寄り、彼の傷口に手を当てる。

「もう……無茶ばっかりなんだから。」


フォスは息を整えながら微笑む。

「悪い。でも……少し、楽になった気がする。」


ノクスが小さく笑った。

「恐怖を越えたね、フォス。」


その時、迷宮の壁に金色の紋章が浮かび上がる。


『己を知り、恐怖を超えし者に、次の道が開かれん。』


霧が晴れ、奥へと続く道が光に包まれていく。


フォスは立ち上がり、剣を背に戻した。

「残るは“真実の道”……だな。」


ティアが頷く。

「きっとそこが、この迷宮の核心ね。」


ノクスが軽く翼を広げて笑う。

「じゃあ、行こう。“出口”を探しに。」


三人は光の中へと歩き出す。

だが、遠くの暗闇で、何かが小さく笑った。


「真実を知れば――もう戻れぬぞ。」

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