絆の回廊
三つの道のうち、フォスたちは“絆を試す道”を選んだ。
その先は、まるで誰かの記憶を歩くような不思議な空間だった。
霧の壁に包まれた回廊の中、淡い光が足元を照らしている。
壁に映る影は三つ――だが、時おり一つが遅れて動いた。
ティアが不安げに口を開く。
「……ねぇ、なんか、変じゃない?」
ノクスが辺りを見回す。
「うん、影の動きが……フォスの影、少し遅れてる。」
フォスは眉をひそめ、剣を握りしめた。
「気のせいだ。先を急ごう。」
だが、数歩進んだ瞬間――ティアの後ろから、別の声が響いた。
「……本当にそうか?」
振り向くと、そこには“もう一人のフォス”が立っていた。
表情は冷たく、瞳は赤黒く光っている。
「お前は“仲間”を信じると言いながら、
結局、自分一人で全てを抱えようとしている。」
ティアが目を見開いた。
「そんなことない! フォスは――」
だが偽フォスはティアの言葉を遮るように一歩前に出る。
「お前も同じだ、ティア。
フォスを信じてるようで、心のどこかで怖がっている。
あの“闇”がまた戻るんじゃないかって。」
ティアの胸が痛む。
それは、誰にも言えなかった“心の奥”の恐れだった。
ノクスが前に出る。
「やめろ……!」
だが霧が渦を巻き、偽フォスの姿がノクスにも変わる。
「ノクス……君だって、影の中にいた時の恐怖を忘れてないだろ?
もしまた闇に呑まれたら、フォスたちが君を捨てるかもしれない――」
ノクスの瞳が揺れた。
フォスは歯を食いしばり、剣を構える。
「やめろ……! それ以上、仲間を侮辱するな!」
偽フォスは冷たく笑う。
「なら証明してみろ。
“信じる”という言葉に、力があると。」
フォスは剣を振り下ろした。
光が弾け、二人のフォスが衝突する。
だが偽フォスは霧のように消え、声だけが残る。
「絆とは、光のようで脆い。
揺らげば闇に変わる。……その意味を忘れるな。」
霧が静かに晴れた。
フォスの剣先が床に落ち、静かな音を立てる。
ティアがそっと近づき、フォスの腕を掴む。
「ねぇ……大丈夫?」
フォスは一瞬言葉を詰まらせたが、静かに微笑んだ。
「……ああ。俺たちは負けてない。」
ノクスが息をつき、笑う。
「うん、だって“本物の絆”は壊れないもんね。」
すると、回廊の壁が光を放ち、前方の霧が道を開くように割れた。
『恐れを知り、それを越えし者。
絆、ここに確かなり。』
ティアが微笑む。
「……やっと、一つ目の試練を越えたね。」
フォスは頷き、奥の闇を見据える。
「次は“恐怖の道”か……」
ノクスが肩に乗りながら、小さく呟く。
「この迷宮、まだ何か隠してる気がする……。」
フォスは小さく息を吐き、
「なら、暴いてやるさ。全部な。」
彼らの足音が再び霧の奥へ消えていく――。




