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闇の門

秋葉原の地下を進むレイジとイリス。二人は奥へと続く長い通路の先に、薄い光が見えることに気づいた。古びたレンガ造りの壁を照らすその光は、次第に強くなってきている。何かがこの先に待ち受けていることは確かだ。魔物の発生源に迫っている感覚が、二人の中に不安と興奮を同時に芽生えさせた。

「これは……」

レイジが足を止め、目の前に広がる光景を見上げた。

そこにあったのは、巨大な石造りの扉。見上げるほどの高さで、異様な雰囲気を放っていた。扉の表面には不気味な模様が刻まれており、まるで生きているかのように薄く輝いている。魔物の巣窟に間違いない。

「これが発生源の扉……」

イリスが小声で呟く。その声には、かすかに緊張が混じっていた。彼女の指が、鋭い短剣の柄を握りしめているのが見える。

「行くぞ」

レイジは銃を握り、ゆっくりと扉に近づいた。魔物の発生を止めるためには、この扉を開け、奥にある「何か」を破壊するしかない。しかし、彼らが扉を開けようとした瞬間、突然、地面が揺れ始めた。

「何だ!?」

レイジとイリスはすぐに後ろへ跳び、銃と短剣を構える。地面の揺れが収まると同時に、扉が轟音を立てながらゆっくりと開き、暗黒の空間が姿を現した。だが、その中から出てきたのは、先ほどの魔物とは比べ物にならないほど巨大で恐ろしい存在だった。

「これは……厄介だな」

姿を現したのは、四足で歩く巨大な魔物だった。全身を硬い甲殻で覆われており、目は赤く光り、口からは無数の触手が揺れている。鋭い爪が石の床を叩きながら、低いうなり声を上げる。

「次はこいつか……!」

レイジは素早く「爆裂弾」を装填した。この巨大な魔物には、通常の弾丸では歯が立たない。強力な爆裂弾を使って一気にダメージを与える必要があった。

「私が奴の動きを封じる。その隙に撃ち込んで!」

イリスがそう言うや否や、短剣を構え、魔物の周囲に素早く回り込む。彼女の短剣から放たれる青白い光が、魔物を包み込むように動き、魔法陣が浮かび上がった。

「今だ、レイジ!」

彼女の声に合わせて、レイジは爆裂弾を撃ち放った。爆音が響き、魔物の巨体が吹き飛ばされる。周囲に火花が散り、魔物の甲殻が裂け、体から黒い液体が流れ出した。

「やったか……?」

レイジが息を整えながら魔物の様子を見つめる。しかし、その体は完全に崩れていない。かすかに動く触手が、再び力を取り戻し始めていた。

「まだだ……!」

イリスが再び魔物に向かって短剣を構える。しかしその時、魔物の目が一瞬だけ赤く光り、空間全体が異様な暗黒に包まれた。

「な、何だ……!?」

突然、二人の視界は真っ暗になり、周囲の空間がねじ曲がったかのような感覚が襲った。次の瞬間、二人は見知らぬ場所に立っていた。周りには荒廃した都市のような風景が広がり、魔物が蠢く異形の世界に放り込まれたかのようだ。

「ここは……どこだ?」

レイジは周囲を見渡すが、さっきまでの秋葉原の地下とはまるで異なっている。空は暗黒に染まり、廃墟となった建物が広がっている。不気味な霧が立ち込め、空気は冷たく、息を吸うたびに肌がざわつく。

「どうやら異界に引きずり込まれたみたいね」

イリスは冷静に状況を分析しながらも、目を鋭く光らせていた。

「どうやって戻るんだ?このままじゃ、奴らに囲まれる」

レイジが問いかけると、イリスは短剣を握りながら答えた。

「この世界を作り出している存在……発生源そのものを倒さないと戻れないわ」

「発生源か……じゃあ、ここが最後の戦いってわけだな」

レイジは銃を構え直し、周囲を警戒しながら進み始めた。魔物たちのうなり声が遠くから響いてくる。次々に姿を現す小型の魔物を倒しながら、二人は発生源に迫っていった。

しかし、その道のりは決して簡単ではなかった。突然、空気が異様に重くなり、足元から黒い影が湧き上がってきた。闇そのものが実体を持ったような巨大な魔物が、目の前に立ちはだかった。

「ここが正念場だな……イリス、準備はいいか?」

レイジは笑みを浮かべながら、再び銃に特殊な弾を込めた。今度の弾は「光弾」。この弾は、強烈な光を発生させ、闇に属する魔物を一掃する効果を持っている。

「行くわよ、レイジ!」

イリスも短剣を構え、二人は同時に魔物に向かって突進した。暗黒の魔物が手を広げて二人を飲み込もうとするが、その瞬間、レイジが放った光弾が炸裂した。

閃光が闇を切り裂き、魔物の体が消滅していく。さらにイリスが短剣で急所を貫くと、魔物は断末魔の叫びを上げながら消滅した。

「やったか……」

その瞬間、空気が再び変わり、二人の周囲は静寂に包まれた。暗闇が晴れ、廃墟の街から元の秋葉原の地下へと戻ってきた。扉の向こうには、もう魔物の気配は感じられない。

「どうやら、本当に終わったみたいね」

イリスが微笑んだ。

レイジも銃を下ろし、深く息をついた。だが、彼の心にはまだ疑問が残っている。なぜ、魔物が現れるようになったのか、そしてこの発生源を動かしていた存在は何者だったのか。

「これで終わりじゃないだろうな……」

レイジは独り言のように呟きながら、秋葉原の地上へと向かう階段を上っていった。その背後には、静かにイリスが続いていた。二人の物語は、これで終わるわけではない。秋葉原の夜には、まだ解き明かされていない謎が残されている。


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