魔物の街、秋葉原
秋葉原の街が夜に包まれる頃、あの独特の賑わいは徐々に薄れていく。ネオンに照らされる電気街の裏通りには、どこか不穏な空気が漂っていた。かつては最新のテクノロジーやサブカルチャーの中心だったこの場所が、今では異形の魔物たちがはびこる「魔物の巣窟」と化していた。
「今日も何匹出てくるんだろうな…」
賞金稼ぎである神谷レイジは、静かに呟きながら手元の銃を見つめた。黒光りするその銃には、通常の弾ではなく、特殊な効果を持つさまざまな弾丸が装填されている。魔物たちは普通の武器では倒せない。だが、この弾丸は違う。レイジの相棒とも言えるこの銃は、彼の頼もしい武器であり、数々の戦いを共に乗り越えてきた。
レイジは、今では定着したこの「魔物狩り」という仕事を続ける中で、多くのことを学んできた。魔物たちがこの秋葉原に突然現れるようになったのは数年前のことだ。それ以来、街は混乱に陥り、人々は恐怖に支配されている。そして、彼の任務は、この混乱を引き起こしている魔物の発生源を見つけ出し、壊滅させることだった。
「さて、行くか」
静かに立ち上がると、レイジは夜の秋葉原へと足を踏み入れた。今夜も魔物が現れるだろう。それを予感しながら、彼は商店街の奥へと進んでいった。
レイジが向かったのは、秋葉原の外れにある廃ビル街。かつては賑わいを見せていたが、魔物が現れてからというもの、誰も近づかなくなった場所だ。彼の耳には、夜風に混じる不気味なうなり声が聞こえてくる。魔物たちの存在感が、次第に強く感じられるようになった。
「やはりここか…」
レイジは足を止め、ビルの影に身を潜めた。目の前には、大小様々な魔物が蠢いている。人間の形を模しているものもいれば、獣のような姿のものもいる。どれも異様な雰囲気を纏っており、この街に異常な力をもたらしている張本人たちだ。
レイジは腰にある弾丸ケースを確認する。今回は、さまざまな効果を持つ弾を準備してきた。彼は素早く銃に弾丸を込め、低く構えると静かに呼吸を整えた。
「まずは、こいつだな」
最初に装填したのは「凍結弾」。この弾は、命中した対象を瞬時に凍らせ、動きを封じる効果を持っている。魔物の集団を相手にする際、素早く数を減らすには最適の選択だ。
「よし…」
レイジは一瞬の隙を見て、銃を魔物に向けて発砲した。鋭い音とともに放たれた凍結弾は、目の前の魔物に直撃。次の瞬間、魔物の体はガラスのように凍り付き、動きを止めた。続いてレイジは、「電撃弾」を装填する。命中した瞬間に強烈な電流を放つこの弾は、複数の敵を一度に無力化するのにうってつけだ。
「これで一網打尽だ」
再び銃声が響き、雷鳴のような電撃が魔物たちに炸裂する。まばゆい光の中、数匹の魔物が痙攣し、そのまま地に崩れ落ちた。しかし、まだ油断はできない。残った魔物たちはレイジに気づき、鋭い牙をむいてこちらに向かってくる。
「さあ、次は…」
レイジは次の弾を素早く込めた。今度は「爆裂弾」。この弾は命中した瞬間に炸裂し、広範囲に大きなダメージを与える強力な弾丸だ。狭い場所で使うにはリスクがあるが、相手の動きを封じられた今が好機だと判断した。
狙いを定め、銃を握る手に力を込める。魔物たちが一斉に飛びかかってくる瞬間、レイジは引き金を引いた。轟音とともに炸裂した弾丸は、魔物たちを巻き込み、彼らの体を粉々に吹き飛ばした。
「ふぅ…」
一息つきながら、レイジは魔物たちの残骸を見下ろした。しかし、戦いはこれで終わりではない。彼が倒したのはほんの一部に過ぎない。魔物の発生源はまだ見つかっていないし、その元凶を叩かない限り、この異常事態は続くだろう。
その時、背後から足音が近づくのを感じた。振り向くと、暗闇の中から現れたのは、長いコートをまとった一人の女性だった。
「あなたが、噂の賞金稼ぎね?」
低く響く声が、夜の静寂を切り裂いた。彼女は鋭い眼差しでレイジを見据えている。何者かは分からないが、ただの通りすがりではないことは明白だった。
「誰だ?」
「私も魔物を追っている…協力できることがあるかもしれないわ」
彼女の言葉に、レイジは少しの間黙っていた。だが、敵が手強い以上、助けが必要なのも事実だ。
「…名前は?」
「イリス。あなたは?」
「神谷レイジだ」
二人は短い自己紹介を終えると、再び秋葉原の暗闇の中へと消えていった。次の戦いに向けて、彼らの物語はここから加速していく――。