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玉の輿婚を狙ったはずが、なぜかお相手の方が本気でした  作者: いか人参


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襲撃


「きゃあああああっ!!ケルティ様っ!!」

「……ミカ!!?」


ダリクに迫られたその時、ドアの外からミカの悲鳴が聞こえた。

聞いたことのない身の危険を感じる叫び声に、ケルティは無我夢中でダリクのことを両手で突き飛ばし、血相を変えてドアの方へと向かう。



「は、はやく、お逃げくださっ…んーっ!」

「ねぇ、どうしたの!!?ミカ!大丈夫!?」


すぐさまドアを開けて部屋の外に出ようとしたが外側から施錠されているらしく、体重を掛けて力ずくで開けようとしてもびくともしない。



「んだよっ…いってぇなおい…」


不意をつかれてよろめいたダリクが気だるそうに片手で頭を抱えた。

ドアに向かって泣き叫ぶケルティと外から聞こえる物音に、何か想定外の事態が起きていることを悟る。



「どこのどいつか知らねぇが、人の邪魔しやがって…」


ダリクは激しい怒りを露わにし、ドアへと向かった。目の前に座り込むケルティの片腕を無理やり引き上げる。



「お前も邪魔だ。さっさとどけ…んがっ!」

「…………っ」


それは一瞬の出来事だった。

音もなく突然部屋の中へ入ってきた男がダリクの首筋に手刀を叩き込み、一撃で卒倒させていた。


男は黒の目出し帽を被って素顔を隠し、全身黒の服に身を包んでいる。ナイフこそ持ってないものの、その見た目は野盗そのものであった。

開け放したドアからもう一人同じような格好をした男が顔を出してきた。部屋の中に入って来ようとしたが、首を横に振られると大人しく廊下へと戻っていく。


自分の部屋に男が乱入してきた事実が未だ現実のものと思えず、ケルティは恐怖に震え床から立ち上がることが出来ずにいる。

男はケルティの方を見向きもせず、動かなくなったダリクの下半身を引き摺るようにして乱暴に部屋の外へ出し、仲間に引き渡した。



「あっ…ミカ…ミカはっ……」


恐怖で足腰に力が入らなくなったケルティだったが、ミカの無事を確認しようと両腕を使い床を這いつくばって廊下に出ようとする。


すると、戻ってきた男が床を這うケルティの前で立ち止まりその場にしゃがみ込んだ。



「!!」


いよいよ次は自分の番かと覚悟したケルティは、精一杯の抵抗として両手で頭を押さえて身を固くした。来るであろう衝撃に備えて歯を食い縛る。


だが、次の瞬間自分の身に起きたことは全く予想していないことであった。


自分の身体に伸びてきた両手は全身を包み込むように回され、浮遊感に気付いた時にはもう横抱きの状態で抱えられており、入り口と反対側の窓の方へ一直線に向かっていた。


「うそ…」


ー このままじゃ連れ去られるっ!!!



「いやああああああっ!!」


貴族令嬢が連れ去りに遭えば何をされるか分からない。よく聞くのは身代金の要求だが、下手をすれば人身売買され他国に売り飛ばされる可能性もある。

ましてやあの父親だ、自分のために大金を叩くなどするわけがないだろう…ケルティの頭の中に最悪の事態が浮かんだ。



「いやっ!離してっ………」


身体を捩って男の腕から逃れようとするが、まるで効果がない。

男はケルティを抱えたまま窓枠に足を掛けると、軽い身のこなしで音もなく地面に着地した。


そのまま仲間の馬車の中にでも放り込まれると思ったが、男は至極丁寧な動作でケルティのことを地面に下ろすと、ふらつくことなく二本の足で立つことを確認してからそっと両手を離した。


突然の解放に困惑するケルティ。


このまま走って逃げるべきか、誰に助けを求めるべきか…緊張した様子ですっかり暗くなった周辺に視線を走らせる。


ー ひとまず建物の裏手まで走って逃げよう


ケルティが逃走先を決めたその時、目の前の男はまたもや予想外の行動に出た。

いきなり顔を隠していた目出し帽を片手で取り去り、素顔を晒したのだ。


暗い庭先だが、雲が流れて顔を出した月の明かりに男の顔が照らされ、その正体が露わになる。



「嘘でしょ…………………」


ケルティは両手で自分の口を押さえ、眼球が落ちてしまいそうになるほど目を見開く。信じられない気持ちで男の顔を見返した。



「セリウス…さ…ま?」


ー どうして彼がこんなことを…?まさか、ダリクの言っていた裏稼業って本当だったの?それにしてもどうしてこんなっ…



「怖い思いをさせて本当にすまない。」


ケルティが口を開くと同時にセリウスは深く頭を下げ、震える声で謝罪の言葉を口にした。

そこにいつもの優雅な微笑みはなく、眉間には苦痛に歪む皺が刻まれている。



「本当にセリウス様なの?その髪…」


「君に伝えなきゃいけないことがある。本当は死ぬまで隠し通すつもりだったんだけど、そのせいでケルティのことを危険に晒してしまった…謝っても後悔してももう遅いなんて分かってる。でもどうしても君に聞いて欲しい話があるんだ。」


ひどく切迫した表情で懇願するセリウス。

月夜の下で風に靡く彼の髪は美しい金の光を放っており、これまで目にしていた風貌とはまるで別人のようであった。



ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。キリの良いところ(?)で書き納め出来て良かったです(´∀`)

皆様良いお年をお迎えください。

引き続きどうぞよろしくお願いします。

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