旅してみたいなぁ
久しぶりに何か公開したくて書きました。
たまに家でこれに似た会話をしてます。
年取った老母の家に、子どもの70近い太郎と妻の華絵が久しぶりに
顔を見せた。
「母さん、ごぶさたしてます。その後、変わりないかい」
太郎がやや大きな声を張り上げた。
「ああ、おかげ様でなんとかやってるよ。」
「これ、モナカです。お母さん、お好きでしょ」
妻の華絵が、買ってきたモナカを老母に差し出す。
「ありがとう。せっかくだから一つ頂こうかね」
老母は、ゆっくりモナカを手に取ると、歯がほとんど残ってない歯茎でうまそうに食う。
「母さん、歩けるうちにどっかに行かないか。好きな場所言ってみてよ」
太郎が老母の耳元で言う。
「別に行きたい所は、思いつかないねぇ」
「どこでも言ってみて下さい。遠慮しないで」
華絵は笑顔を見せる。
「特には、、、。疲れるしねえ」
「僕が車で連れていくから大丈夫だよ」
「どうぞ、言ってみて下さい」
老母は、モナカをゆっくり食べ終えて、
「ああ、そうだ、行きたい場所あった」
「どこかな」
「聞かせて下さい」
太郎と華絵が老母の顔を覗き込む。
「あの世」
読んで頂き感謝です。
まだ生きてる母は、喜んでくれるかな。