告白 【月夜譚No.279】
容易い告白なんて、きっとない。それがたとえどんな内容であったとしても、少なからず緊張や不安が付き纏う。
彼は涸れかけた唾を飲み込んで、あまり改善されない乾いた喉に眉をひそめた。告白の代表格を胸に秘め、意識して呼吸をしないと息が止まりそうだ。
聞こえてきた足音に緊張が増す。身体の脇で握り締めた掌に爪が刺さって痛いが、そんなことに構っている余裕はなかった。
数秒と経たず、校舎の角から女子生徒が一人顔を出す。その姿に一瞬心臓が止まりかけたが、どうにか持ち堪えた。
彼女の頬が赤く、彼よりはましだろうが緊張しているようだ。それもそうである。こんなところに呼び出したのだ。彼の目的には薄々気づいているだろう。
今一度、大きく息を吸って吐き出す。思い切って自身の気持ちを言葉に出してしまったら少し身体が軽くなった気がしたが、心拍数は上がってしまった。息を詰め、返事を待つ。
風が吹いた。彼女の長い髪が戦ぎ、それが落ち着いてからぷっくりとした唇を開く。
それを聞いた彼は、泣き笑いの表情を浮かべた。