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転生ミスで異世界へ  作者: たけのこ
第一章 
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第六話 能力

 二人の男と運ばれる子供を見て、俺の脳裏にあることが浮かんだ。

 運ばれている子供がリダなのではないか?

 その瞬間、俺の体は動いた。

 正確には喉か。


「ちょっと待て!!」


 言った後、俺は少し後悔した。

 よく考えてみれば分かるだろ! 俺じゃ大人二人に勝てるわけがないことぐらい!

 カインさんを呼ぶべきだった。

 そう思った時にはもう遅い。

 二人は俺の方を向いていた。


「なんだぁ、てめぇはよぉ!」


 いかにもモブみたいな発言だ。

 顔もまさにモブそのものだった。

 体もひょろい。

 もしかすると、俺でも勝てるかもしれないと思った。


「その子供は何だ? まさか誘拐してるのか?」

「見てわかんねえのかぁ?」


 俺の考えは的中していたらしい。

 ならば、俺のすることは一つ。


「その子供は俺の家族だ! 返せ!」


 そう言うと、二人の男は顔を合わせ笑い出した。


「おもしれえこと言うなぁ! ガキのくせによぉ」

「返してほしけりゃあ自分で奪い返してみろ!」


 二人は運んでいた子供を道端に投げ捨て、俺に向かって走ってきた。

 12歳のころの俺よりも遅いスピードだ。

 おかげで考える猶予が少しあった。

 その結果、俺は剣も持ってないのに何故こんなに強気に出ていたんだろうという考えに至ったのだ。

 そうだよ! 俺は剣を持ってきてないんだ!

 自分の馬鹿さを責めようにも、もうそんな余裕はない。

 二人の男が、目の前まで迫っていた。

 そして、拳を振り上げ、俺を殴ろうとして――――――――

 失敗した。

 俺が二人の間を流れるように逃げて攻撃を回避したのだ。

 鬼ごっこで鍛えた俺の回避術を甘く見てはいけないよ。

 何て格好つけていると、二人はまた俺に向かって走ってきた。

 鬼のような形相だ。

 そんなに回避されたことが気に食わなかったのだろうか?


「やっぱり、話し合いません?」

「なめてるのかぁ! このガキ!」


 ですよね。

 話し合いなんかにのるわけないよな……。

 それならどうするか。

 ここで逃げたらリダを見失うかもしれない。

 最悪、殺されてしまうかもしれない。

 それは絶対に避けなければいけないことだ。


 ここでの最善策は、俺がリダを抱えて人気の多いところまで逃げること。

 ……正直、俺にとっては難易度が高い。

 この二人を倒す。

 これも難易度が高い。


「はぁ、もう少し考えて行動すればよかったな……」


 俺には、考える前に行動するという悪い癖がある。

 癖っていうのは直すのが難しい。だから、俺は直すのを諦めていた。

 これが俺の個性なんだと自分自身を納得させて、受け入れていた。

 それがこのザマだ。

 そして――――――――


「……あ」


 いくらこの二人がモブみたいな奴だからと言って、この狭い場所で攻撃を回避し続けるなんて不可能だった。

 俺は攻撃を避けきれず、手で受けた。

 そして、その衝撃で倒れてしまったのだ。


「ちょ、ちょっと待ってくれませんか……?」

「はっはっは! 無理な相談だなぁ」


 非常にまずいことになった。

 尻もちをついている俺に対して、二人はいつでも殴れるという状況だ。

 終わった。

 ジ・エンドである。


「す、すみません! 謝るので許してください!」

「許すわけねえだろ! いい加減死ねぇ!」


 ああ……、くそ、こんなところで終わるのか!?

 約束の日は、まだ先なのに……。

 そして、家族も救えない。

 ――――――――家族? 

 ああ、そうだ。リダは俺の家族じゃないか!

 こんなところで失うわけにはいかない!


 拳は、俺の目の前まで迫っていた。

 手でガードしようにも間に合わないだろう。

 ただ俺は、手のひらを向けた。

 無意識の動作だった。


 次の瞬間、男が倒れた。

 俺に殴りかかっていた男がだ。

 もう一人の男は、口を開けたまま立ち尽くしている。

 何が起こったのか理解できないような顔で。

 ただ、俺には理解できた。

 無意識のうちに向けた手のひらから、線のような光が出たのだ。

 俺はそれに見覚えがある。

 電気だ。


「……これが、天使様のくれた能力なのか?」


 雷に打たれて死んだから、この能力なのか……。

 あの天使、性格悪すぎだろ。

 まあ、魔法の使えない俺にとっては頼もしい能力だな。


「な、なんなんだ! お、おまえ!」


 もう一人の男は震えていた。

 まるで子供みたいだ。

 まあ、容赦はしないけどね。


 俺は満面の笑みで、手のひらを男に向けた。


「くらえ! ゴミやろう!」


 手のひらから細長い電気が男に向かって放出された。

 そして、男は悶えながら倒れた。

 俺の勝利だ。


 念のため、倒れた男たちを確認してみたが、気絶しているだけだった。


「ふう、良かった。殺してなくて」


 いくらこいつらがクズでも、殺すのはちょっと気分が悪くなるからな。

 とりあえず、リダを解放することにしよう。


 俺は道端で座り込んでいるリダのところに向かった。


「リダ、もう大丈夫だぞ」


 そう言って、頭にかぶっていた袋を取ってやった。

 そこには、見慣れたリダの顔が――――――――


「た、助けてくれて、ありがとう」

「……え?」


 無かった。

 そこには、見たことのない顔があっただけ。

 あれ? 俺は何でこいつをリダだと思ってたんだ?

 よく考えてみると、服装もリダとは全然違う。


「う、嘘だろ……」


 リダはまだ行方不明なのだ。

 せっかく見つけたと思ったのに。




 ---------




 とりあえず、この子を家まで返してあげた。

 その後、カインさんと合流するためにとぼとぼと歩いていると――――――――


「あ! 見つけた!」


 聞き覚えのある声がした。

 振り返ってみると、そこにはリダがいた。

 その後ろにはカインさんもいる。


 俺は深いため息をついた。

 ただ、心の底から安堵した。


 ともあれ、これで買い物を続けることができる。


 俺の顔には笑みが浮かんでいた。


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