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転生ミスで異世界へ  作者: たけのこ
第四章
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第三十八話 馬小屋

 カインさんの馬が預けられている馬小屋までは、あまり時間がかからなかった。

 まあ、数分ってとこか。

 その間も特にトラブルはなかった。

 街中からは悲鳴が聞こえてきたりはしたけど……。


「いきなりで悪いが、馬車を探してる。人間5人乗れるやつがいい」

「お~、そうかい、ちょっと待ってな。そこの椅子にでも掛けててくれ」


 馬小屋の主人に促され、俺達は大人しく椅子に腰かけた。


「いや~、さっきからなんだか外が騒がしいね。何かあったのかな?」

「……さ、さあ、全くさっぱりです。自分たちは冒険者なんでね……」


 いきなり話を振るもんだから、焦っちゃったじゃん。

 なんとか誤魔化すことはできたけど、作り笑いだってバレちゃったかな?


「旅人ねぇ……、この国には何もなかっただろう?」

「……いえ、大切な仲間との出会いがありましたよ」

「大切な仲間とのねぇ……」


 さっきから何なんだろう。

 この男……不気味だ。

 何か企んでるのか?


「おい、おっさん。口よりも手を動かしてくれよ」


 さすがカルスだ。

 相変わらず思ったことをビシッと言う。

 そういうところは真似したいな。


「はっはっは、すまないね。つい昔の自分を思い出してしまってね」


 馬小屋の主人は懐かしむように目を細めた。

 気のせいかもしれないが、その姿が俺にはどこか寂しそうに見えた。


「私も昔は冒険者だったんだ。当時は若かったからねぇ、君たちみたいに仲間と共に世界各地を渡り歩いたよ」


 まさかの自分語りが始まってしまった。

 高齢者あるあるだな。

 こっちは急いでるってのに……果たしてどうしようか。

 このままだとカルスがブチ切れてしまう。


「まあ結局、私を残して全滅してしまったがね」

「全滅……ですか」


 おいおい、急展開だな。

 逆に気になっちゃうじゃん。


「とある魔物に襲われてね。確か……緑色の鱗を持った竜だったかな。

 巷では有名な魔物らしくてね、それはそれは凶暴な竜だったよ」

「それは……お気の毒に」


 何て言うか……、悲惨な話だな。

 仲間はみんな死んでしまったのに、自分だけ生き残ってしまうなんて。

 でもまあ、確かにこの世界では竜は強大な存在だからな。

 運が悪かったとしか言いようがない。


「まあ冒険者として生きていた以上、覚悟していた事ではあるけどね」


 馬小屋の主人はそう言って微笑んだ。

 しかし、その様子を見ていたカルスは激怒する寸前だった。


「こんのジジイ……」

「はっはっは、そんな怒らないでくれ。元冒険者として、昔の話をしたくなってしまったんだよ。

 ほら、ちゃんと馬車の準備は出来たよ」


 馬小屋の主人が用意してくれたのは、かなり立派なものだった。


 人間5人に荷物まで置けるであろう荷台と、それを引っ張る2頭の馬。

 おそらく、この辺で買える馬車の中では最高級だろう。

 つまり、お値段もそれなりにするってことだ。


「それで……いくらだ」

「ふ~む……、金貨45枚だ」

「もう少し安くならないのか?」

「金貨40枚……、これが限度だ」

「……わかった」


 金貨40枚か……。

 さすがに高いな。

 けれど、今はどうこう言ってる暇はない。


「ほらよ」


 カルスは金貨40枚が入っているであろう袋を手渡した。

 見ただけでわかる、かなりの重厚感だ。

 ああ、俺達の努力の成果が消えてしまう……。


「……ふむ、確かに金貨40枚だな」


 馬小屋の主人は袋の中を確認して、納得したように頷いた。


「それじゃ、この馬車はもらっていくぜ」

「ああ、今からそれは君たちのものだ」


 カルスがまず手綱を持ち、各々の荷物を荷台に置いた。

 その後に、俺達は順に乗り込んだ。


「おっと、そう言えば、あの預かっている馬はどうするんだい?」

「差し上げます。大切にしてあげてください」


 この先、カインさんの馬を連れて行くには負担が大きすぎる。

 なので、残念だがここで手放さなければいけない。


「そうかい。それはありがたいね。それじゃあ、こちらは金貨10枚だけ返すことにしよう」


 そう言って、馬小屋の主人は金貨10枚を入れたであろう袋をこちらに投げてくれた。


「ありがとうございます」

「いやいや、気にすることはないよ」


 俺はこの主人のことを怪しく思っていたけど、結構いい人なのかもしれないな。

 またこの国に来たらよってみようかな。

 まあ、来ることなんてないだろうけど。


「よし、行くぞ」


 カルスの一言で、馬車は動き始めた。

 ゆっくりと、しかし力強く。


「さらば冒険者たちよ。どうか、私とは違う運命を迎えますように……」


 最後に、そんな言葉が聞こえたような気がした。




 ---------




 外は相変わらず騒がしかった。

 下手したらお祭りレベルだ。

 それほどまでに呪子は恐れられているってことか。


「このまま一直線で国を出るぞ」


 馬の扶助はカルスに任せて、俺は国を出るまで荷物の陰に隠れるとするか。

 万が一でもバレたらめんどくさいし。

 幸い、国を出るまでにそこまで時間はかからないそうなので、それまで辛抱しよう。


「エト、隠れてるの?」

「ああ、静かにな」


 アリスに一応、念を押しておこう。

 まあ彼女もそこまで馬鹿ではないから分かると思うけど。


「……エトが隠れるなら、私もしなくちゃだね」


 レイナも俺に続くように身を屈め、そして荷物の陰に隠れた。


「カルスさん、国を出てその後どこに向かうんですか?」

「そんなこと出てから決めればいいだろ」

「……心配だ」


 アンドルは不安そうな表情を浮かべた。

 けれど今は特に打てる手もないので、彼も大人しくせざるを得なかった。


 とにかくだ。

 このまま行けば問題なく国を出られる。

 その後はどうするかは分からないが、今は仲間がいるんだ。

 皆で力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられる気がする。


 そして、今度こそ救って見せる。

 大切な家族を。


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