第三十一話 腹を割る
ポカポカと暖かい空気が、朝の訪れを教えてくれた。
耳をすませば、鳥のさえずりも聞こえてくる。
「ふあぁ~」
ふくらはぎが若干、筋肉痛だ。
昨日、あれほど走ったからな。
とりあえず、周囲を見回してみたが、まだ皆は寝ているようだった。
「お、起きたか」
眠り目を擦る俺に、カルスが右手を上げて挨拶してきた。
カルスは起きてんのか。随分と早いな。
「お前も飲むか?」
「ああ、頼み……ます」
「何で敬語なんだよ」
「いや、なんか毎回俺の命を助けてくれた人に対して、タメ口ってどうなのかなって思ってさ」
「ハッハッハッ!! 今更だろ!」
大笑いしながらも、カルスの手はスムーズに動いていた。
まずは、土魔法で作っておいた容器に、白湯を注ぐ。
その後に茶色の魔草を入れる。
こうすることで、お茶が出来上がるのだ。
まあ、お茶と言っても日本で飲んでたやつとは大きく異なるけど。
「ほらよ」
「ありがとう」
朝一番に飲むお茶は、乾ききった喉をスッキリと潤してくれた。
「ふ~、うまいな」
「だろ?」
余程うれしかったのか、カルスは満面の笑みだ。
カルスお手製のお茶……、正直、緑茶とかに比べたら味は落ちる。
けれど、こちらの世界の飲み物としては、十分なうまさだ。
「エトも起きたのか」
どうやら、俺とカルス以外にも起きている人がいたらしい。
「アンドルも、こんな朝っぱらから何してるんだ?」
「僕はちょっとカルスさんと話すことがあったんだ」
一体何を話したんだろう。
アリスの事か。それとも、今後の事だろうか。
おっと、そういえば俺もカルスに聞きたいことがあったんだ
「あのさ、カルス。昨日言ってた還元されるだとかってどういう意味だったんだ?」
「ん? ああ、あれか……。あれは、古の洞窟の仕組みに関しての話だ」
古の洞窟の仕組みだって?
もしかして、それがトロールが不死身だった理由に繋がるのだろうか。
「古の洞窟には、結界魔法が施されていた。それも、上級のだ」
「結界魔法? それは一体誰が?」
「誰だかまでは特定できないが、相当な技量の持ち主だ」
カルスがそこまで言うってことは、余程なのだろう。
まあ、確かに結界魔法は習得が難しいって話だもんな。
それを上級まで習得してる奴は、もはや変人だろう。
まともな奴とは思えない。
「結界を施したのって、もしかして、あの本の持ち主なんじゃないか?」
「確かに、その可能性もある。って言うか、その可能性が一番高い」
「……一体何者なんだ」
「さっぱりわからん。せめて、あの本を解読出来たらいいんだが……」
個人的な考えだが、あの本の持ち主は、人族じゃない気がする。
あの本は、人族のものとは違う言語で書き記されていた。
つまり、その本を持っていた張本人も人族ではない可能性があるってことだ。
すると、もしかしたら寿命が何百年とかの場合もある。
それだけの時間があれば、結界魔法の上級も覚えられるだろうしな。
人族の寿命は、こっちの世界では70歳から90歳くらいが普通らしいから、
おそらく、人魔族あたりだろう。
まあ、人魔族と言っても、そこから何十と種族に分けられるらしいけど。
「それで、その結界魔法が俺達にどんな影響を与えてたんだ?」
「魔力の吸収だ」
それを聞いて、俺は自分の仮説が概ね正しかったことを確信した。
違う点と言えば、魔力を吸収していたのが、アスクレピスではなく洞窟自体だったってことぐらいだ。
「あの結界には、結界内に侵入した者の魔力を強制的に吸収する効果が付与されていた。
さらには、吸収した魔力を、あのトロールに還元するっていうオマケ付きだ」
「だから、再生したのか」
おそらく、致命傷を受けた際に、俺達から吸収した魔力を使って自動的に回復するように仕組まれていたのだろう。
しかしそうとなると、あのトロールに誰かが手を加えたってことになる。
……いや、もしかしたら洞窟内にいた魔物すべてに加えられているの可能性すらある。
果たして、そんなことが可能なのだろうか。
俺の知る限りでは、不可能だ。
けれど、もしかしたら特異属性魔法なら可能なのかもしれない。
まあ、結局はどれだけ考えようと結論は出ない。
と言うか、そもそも、これ以上深入りしたくない。
何だか面倒なことになりそうだしな。
とりあえず、俺はお茶を一口すすった。
そして、溜息をつく。
「……あのさ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「何で俺達を助けに戻ったんだ?」
もちろん、お前の助けなんていらなかったんだよ! って意味じゃない。
何故カルスがアンドル達から離れて、俺達の助っ人に戻ってきたのかって意味だ。
あの時、確かにカルスはアンドル達を洞窟外に避難させるためについて行った。
だと言うのに、カルスは俺達の所にも現れた。
普通だったら、あり得ない。
洞窟の入り口まで行って、その後にまた俺達の所に戻ったというには、あまりに早すぎるのだ。
途中で、アンドル達と別れたりしない限りは。
「僕がお願いしたんだ、エト」
「……アンドルが?」
「ああ」
確かにアンドルは足手纏いにはなりたくないと言っていた。
自分がアリスを連れて洞窟を出るとも。
しかし、そうだとしてもリスクが高すぎるだろ。
「カルスは何で許可したんだよ」
「あの時、背後から大きな物音が聞こえてな。察したんだ。エト達の身に何かあったってな。
そして、天秤にかけた。
この先、魔物が出ないことに賭けて、アンドル達と別れてエト達のところに行くか。
それとも、エト達を信じてそのままアンドル達と一緒に脱出するかをな」
「……それで、俺達の方を選んだのか」
「ああ、そうだ。アンドルにはまだ余裕があったし、魔物の気配も感じられなかったからな。
それに、アンドルの覚悟を尊重したかったってのもある」
……尊重か。
もしも、それでアンドルとアリスが死んでいたら、どうするつもりだったのだろうか。
――――――――いや、そうネガティブに考えるのはやめよう。
仮にカルスがそのままアンドル達について行ったとしたら、多分俺かレイナのどちらかが死んでただろうし。
結局はカルスの判断のおかげで、俺達は全員無事だったんだからな。
しかし、それでもカルスの今までの行動に、どこか違和感を感じる。
「ふあぁ~。みんな何を楽しそうに話してるの?」
どう考えても楽しそうではないってのに、レイナは空気を読まずに割り込んできた。
「……続きは後で話すか」
「……そうしよう」
カルスと俺は顔を合わせて、頷いたのだった。
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その後、レイナに続きマリオとアリスも目を覚ました。
そして、朝飯を済ませた後、直ぐに公都クルドレーへと向かった。
距離はそこまで離れていないので、大して苦痛ではない。
しかし、じりじりと照りつける太陽が、少しうっとおしかった。
公都クルドレーに着いた後、マリオは他の騎士団の仲間と合流し、アスクレピスと引き換えに報酬をきちっと払ってから、その場を後にした。
それにしても、いい人だったな。
去り際にも、労いの言葉をくれたし。
俺は多分この先も、マリオのことを忘れることはないだろう。
それにしても……、金貨60枚。
その重みは、これまでの苦労を感じさせるほどだ。
この金貨60枚に、今まで稼いだお金も合わせると……。
あーら大変。あっという間に、ちょっとしたお金持ちだ。
後は話の続きをするだけなんだが、カルスがとっておきの場所があると言って俺達をある場所へと案内してくれた。
そして、歩くこと十数分。
着いたのは、酒場だった。
おそらく、話をするんだったら酒でも飲んで腹を割って話そうって考えなのだろう。
しかし、残念ながら俺達は未成年だ。
お酒は飲めない。
それに、俺とレイナはお金が必要なのだ。
いくら稼いだからって、浮かれて酒場なんて行ったらお金がもったいない。
――――――――と思っていたんだが、カルスが自腹で奢ってくれるそうなので、お言葉に甘えることにした。
「先に言っておくけど、俺達は未成年だからな」
一応、カルスに念を押しておいた。
彼のことだから、酔っぱらってレイナ辺りに飲ませようとするかもしれないからな。
「何言ってんだ? お前ら15歳なんだろ?」
しかし、カルスは俺の一言に首を傾げた。
何言ってんだコイツって感じの目だ。
「何って……。15歳だからダメなんだろ」
あれ? おかしいな。話が嚙み合わない。
この感じはもしかして……。
「エト、こっちでは15歳が成人なの」
レイナも察してくれたようで、ひそひそと耳打ちしてくれた。
こういう時は、頼りになるな。
それにしても、こっちの世界では15歳で成人なのか。
つまり、俺はもう成人してることになってるのか。
う~ん、何だか不思議な感じだな。
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カルスは一番乗りで酒場に入り、一番奥のテーブルを陣取った。
もうすぐお酒にありつけるからか、いつもよりも豪快だ。
「とりあえず、大を四つ頼む」
テーブルに着くなり、カルスは大声で酒を注文した。
四つってことは、俺の分も頼んだのだろう。
飲むなんて一言も言ってないってのに……。
「カルス、話の続きなんだが……」
「おいおい、まだ酒はきてねえぞ」
どうやら、お酒を飲んでからじゃないと話をする気がないらしい。
まったく、面倒な男だな。
「カルス~、私の分は~?」
「ああ、悪い。アリスはまだ酒の飲めないんだったな」
流石に、10歳の少女にお酒を飲ませようとするクズではなかったらしい。
「はいよ」
あっという間に、テーブルの上に四つの木樽ジョッキが増えた。
見ただけでわかる、すごい重厚感だ。
初めてのお酒にしては、ちょっと大きすぎるかもしれない。
気持ち悪くなったらどうしよう。
「う~ん、なかなか勇気が出ないな」
どうしても初めの一口が進まない。
こっちの世界では合法だけど、日本では非合法だもんな。
罪悪感のせいだろうか。
「エトは弱虫だね」
そういうレイナはと言うと、幸せそうな顔でグビグビと飲み干していた。
アンドルも普通に飲んでいる。
こいつらはいいな。罪悪感がなくてさ。
「なんだ、飲まないのか?」
いつまで経っても飲み始めない俺を心配したのか、カルスが顔を覗かしてきた。
「もしかして、家族のことを考えてるのか?」
その言葉に、レイナの手がぴくっと止まった。
そして、顔を上げてカルスに視線を向けた。
「詳しい事情は知らないけどよ、たまには楽しむことも大事だぜ?」
カルスの言う通り、最近はカインさん達について考えることが多い。
日が経てば経つほど、頻度も多くなる。
それに、俺はどうもこっちの世界に来てから不幸なことが多い気がする。
というか、幸せだったのは最初の方だけだった。
ここ最近は、魔物と戦ってばっかりだ。
死にかけることも多い。
「最近の俺は、ずっと不幸のどん底だよ。唯一の幸運は、生きてるってことぐらいだ」
「別に不幸のどん底でも悪くねえじゃねえか」
一体どの口が言っているんだろう。
カルスは自分一人で生きていける力もあるし、悩みもなさそうだ。
少なくとも、不幸には見えない。
そんな彼に、俺とレイナの何がわかるというのだろうか。
「人生は一直線じゃないから楽しいんだろ。
それに、不幸のどん底にいるんだったらよ、その辺のちょっとした幸せが余計に大きな幸せに感じられるじゃねえか」
ちょっとした幸せ、か。
俺にとって、それは何なのだろう。
「……」
俺は数秒程、木樽ジョッキを見つめた。
そして、覚悟を決めた。
「おお~!」
レイナの感嘆の声を聞きながら、俺は木樽ジョッキの中身を飲み込んだ。
途端に、口の中に苦味が広がった。
これが、大人の味なのか。
「ふう、なんか不思議な感じだな」
正直言って、美味しいとは言えない味だった。
こんなものを、大人たちはそろって美味しそうに飲んでいたのか。
「エトもこれで大人だね」
「お前もだろ」
さんざん大人目線で言ってくるが、お前も今初めて飲んだんだろうが。
アンドルはどうだかわからないけど。
「とりあえず、昨日は皆よくやった」
カルスが皆を見回して、パーティーリーダーっぽいことを言った。
まるで、飲み会の挨拶みたいだな。
本当だったら、この後に乾杯をする流れなんだろうが、残念ながらこっちの世界にはそのような文化がないらしい。
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飲み始めて、数十分が経過した。
俺はお酒に飲まれることなく、いつもと同じ平常運転だ。
お酒による影響は、ちょっと顔が赤くなったくらいかな。
もしかしたら、俺はお酒に強いのかもしれない。
一方のレイナはと言うと……、
「ぷは~。これが幸せか~!!」
完全に酔っぱらっていた。
彼女はお酒にめっぽう弱いらしい。
そろそろ、お酒を自重させたほうがいいかもしれないな。
「レイナ、お行儀が悪いぞ」
テーブルに肘を乗せるレイナに対し、アンドルは厳しくしかった。
その様子は、まるでアリスに対して言い聞かせているようだ。
そして、当のアリス本人はアンドルの膝の上に頭を乗せて、ぐっすりと眠っていた。
昨日の疲れが、まだ残っているのかもしれないな。
「そう言えば、話の続きをするんだったな」
カルスは一通り飲んだらしく、木樽ジョッキをテーブルにドカッと置いた。
「それで、何の話だったっけ?」
「俺さ、今までのカルスの行動に違和感を感じてたんだ。だけど、さっきわかった。
カルスのどんな行動に違和感を感じてたのか」
俺がそう言うと、カルスは真剣な眼差しを向けてきた。
アンドルも同じく、俺のことを見ている。
「俺は多分、カルスのアンドルに対する言動に違和感を感じてたんだと思う」
「言動……か。例えばどんなだ?」
「マカオンの時も、依頼の説明をアンドルひとりに任せてた。
古の洞窟でも、いくら本人が望んだとはいえ、アンドルに危険が及ぶような選択を取ってた」
それに、今思い返せば、戦闘でも手を抜いているようだった。
本気を出せば、一人で簡単に殲滅できただろうに。
まるで、アンドルを試しているかのようだ。
「……確かに、俺はわざとアンドルに重要な役割を任せた。
それに、出来るだけ俺自身の力に頼らせないようにした」
カルスはまるで遠くを見るように、木樽ジョッキを見つめた。
何か、昔の出来事を思い返しているように。
「でも、それも全てアンドルの頼みだ」
「アンドルが?」
俺は驚き顔を浮かべ、アンドルに目をやった。
すると、彼は小さく微笑んだ。
「初めて会った時、言ったろ? 僕とアリスは家出をしたって」
確かに言っていた。
アンドルが家出をして、アリスはそれについて来ただけだと。
「僕が母さんと喧嘩したから、家を出たんだ。
……いや、喧嘩じゃないな。僕が嫌になったんだ」
アンドルは曇った笑顔を浮かべながら、膝に乗せられたアリスの頭を撫でていた。
「今から話すのは、何の才能も持たずに生まれた男の話さ」
アンドルは語り始めた。幼き日の話を。
その男は、世界最古の国、ラー王国の貧しい家に生まれた。
しかし、貧しいと言えど、両親は愛をこめて育ててくれた。
それから5年ほどが経ち、妹が生まれた。
ちょうどその頃、父が病死した。
父が死んでからは、ますます生活が厳しくなった。
それでも、母は一生懸命育ててくれた。
母はいつも言っていた。
将来は王国騎士団に入団して、騎士団長になれと。
そうすれば、家は安泰だと。
男もその期待に応えるために、一生懸命頑張った。
剣術を学び、魔法を練習し、魔物から魔草に至るまでの知識を頭に詰め込んだ。
しかし、他の人と比べて理解した。
自分には才能が無いと。
それでも、期待に応えようと頑張った。
けれど、男自身が成長するにつれて、ある考えが頭から離れなくなった。
母は、自分を道具だと思っているのではないか。
そう考えだしたら、怖くなった。
それと同時に、一体何のために生まれてきたのかわからなくなった。
15歳になり、夜逃げをした。
馬車に乗り、遠くにある別の国へと。
予想外なことに、妹もひっそりとついてきてしまった。
所持金はわずかだった。
行く当てもなかった。
最初は、どこかで野垂れ死のうとした。
けれど、妹は巻き込みたくなかった。
だから、せめて妹を家に帰そうと決意した。
しかし、物事はそううまく運ぶわけではなかった。
男の力では、お金を稼ぐなど不可能だった。
そして、あっという間に所持金は空になってしまった。
せめて妹だけでも何とかしようと、冒険者ギルドにいた人達に片っ端から声をかけた。
しかし、帰ってくる答えはどれも素っ気ないものだった。
しばらくして、諦めかけていた時に救世主が現れた。
濃い茶髪で、背丈の大きい男。
救世主は、カルスという名前だった。
カルスは、自分のパーティーに入るよう勧めてくれた。全く嫌がりもせずに。
さらには、飯から衣服まで買い与えてくれた。
男は今までの事情をカルスに話した。
すると、快く協力してくれた。
この頃になると、男は自分のやった行動に後悔を覚えた。
そして、もう一度母と腹を割って話そうと考えるようになった。
同時に、せめて妹は一人で守れるようになろうとも。
男はカルスに強くなりたいと言った。
すると、その日からカルスは一人でも戦えるように稽古をつけてくれるようになった。
さらには、依頼を受ける際の注意点や、魔物と戦うコツも教えてくれた。
日が経つにつれて、カルスは男の戦闘に手を貸さなくなった。
それだけじゃなく、男に重要な役割を任せてくれるようにもなった。
それも全て、男のためだ。
そして、今に至る。
「どうだい? 間抜けな話だと思うだろ?」
アンドルは自嘲するように微笑んだ。
そして、弱々しく木樽ジョッキを口元に運んだ。
「別に思わないよ。俺も家出ぐらいしたことあるし、むしろ共感できた」
俺がそう言うと、アンドルは小声で「そうか」と呟いた。
「俺はよ、お前たちの家族も救いたいと思ってんだ」
カルスは真剣な眼差しで俺を見た。
実に頼もしい眼だ。
「……何でカルスは、そこまで助けてくれるんだ?」
アンドルが今ここにいる理由はわかった。
しかし、カルスに至っては謎だ。
一体なぜそこまで俺やアンドル達を助けてくれるのだろうか。
「俺の父親はよ、それなりの地位の人間だったんだ。力も権力もあった。
それなのに、弱者に手を差し伸べようとはしなかったんだ。
むしろ、ふんぞり返って見下してたな。俺はそれが許せなかった」
そう言って、カルスは手を力強く握りしめた。
まるで、仇を前にしたような感じだ。
「だから俺は父親の元から去った。弱者を救うためにな」
カルスは言い切った後、思いっきり酒を仰いだ。
まるで、嫌なことを忘れるために飲んだみたいだった。
「だから、教えてくれ。お前らの家族に起きたことをよ。俺はいくらでも手を貸すぜ」
「エト達には助けられたことも多い。だから僕も力になりたい」
カルスとアンドルの言葉を受けて、俺は少し考え込んだ。
果たして、本当のことを話していいのか。
思えば、最初に会った時は、カルス達のことを利用することだけを考えていた。
けれど、今はどうだろう。
今の俺は、心の底からカルス達を信頼してる。
もし可能なら、カインさん達を助けるために協力してほしいとも思っている。
一通り考えて、そして決断した。
「家族を助けるのに、協力してほしい」
俺の頼みに、カルスとアンドルは力強く頷いてくれた。
当然だと言わんばかりに。
「うわ~。眠くなってきた~」
その時、完全に酔っぱらったレイナが、俺の肩にもたれかかってきた。
誰がどう見ても、話せる状況ではない。
「……とりあえず、明日話すことにしよう」
「……そうするか」
アリスも眠ってしまったし、レイナはダウンした。
こんな状況なので、一旦今日はお開きになった。
ともあれ、やっと心の底から仲間と言える人達ができた。
これで、カインさん達を助けるのも、少しは楽になるだろう。
そう思うと、心が少しだけ軽くなった。
ちなみに、宿までレイナを背負って行ったため、筋肉痛が悪化したってのはここだけの話だ。




