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転生ミスで異世界へ  作者: たけのこ
第三章
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第二十五話 いざ、古の洞窟へ

 翌日の早朝。

 俺はレイナを連れて冒険者ギルドに向かった。


 空は鉛色に染まっている。

 心なしか、気温も昨日よりも低く感じる。


 何故だか、これから起きることを暗示している感じがして仕方ない。

 今、占いでも受けたら「あなた、死相が出てるわよ」なんて言われるかもしれないな。




 ---------




 冒険者ギルドに着いたのは、俺達が一番遅かった。

 多分レイナがなかなか起きなかったのが原因だろう。

 彼女は朝に弱いからな。


「それでは、出発するとしますか」


 俺達が全員着いたのを確認した後、騎士団の男がそう言った。

 この男が、俺達を目的地まで引率してくれる役割だった。


 この男は、マリオという名らしい。

 なかなかに陽気な男だった。

 おかげで、道中は退屈せずに済んだ。

 まあ道中って言っても、大して遠くはなかったけどな。

 頑張れば子供でも行けるくらいの距離だった。


 だが、それでも行こうとする愚か者はいない。

 というのも、古の洞窟がある場所の一帯は公爵によって立ち入り禁止区域にされているからだ。

 おまけに、無断で侵入したものは問答無用で処刑されるらしい。

 そりゃあ誰も近づかないわけだ。


 マリオ曰く、この話を受けようとしたのは俺達以外にもいたらしい。

 それも、かなりの凄腕たちだったとのことだ。

 それだというのに、俺達にこの話が来たってことは、誰一人としてアスクレピスを取ってこれた人がいなかったってことだろう。

 やはり、一筋縄じゃいかなそうだな。


「もうすぐ着きます。引き返すなら、これが最後ですよ」


 マリオが真剣な眼差しで言う。

 だがそれでも、俺達は帰らない。

 帰るわけにはいかない。


「大丈夫」


 レイナはいつにもなく真剣な顔を浮かべていた。

 彼女自身も理解しているのだろう。

 この話が、自分の身に余るものだということを。


「古の洞窟の内部について、何か知りませんか?」

「……申し訳ありません。知っている者は誰一人として……」


 やはり、期待通りの答えは帰っては来なかった。

 しかし、ここでふと、疑問が浮かんだ。


「それなら、なんでアスクレピスが古の洞窟にあるって知ってるんですか?」


 内部について何も知らないのに、一体なぜ公爵はアスクレピスが古の洞窟の最奥部にあるって知っているんだろう。

 もしかして、勘だったりしないよな……。


「最奥部にあるのかはわかりませんが、古の洞窟内にあることは確かです」


 おいおい、何が最奥部にあるだよ。

 嘘つきヤローじゃねえか。


「何で確かって言いきれるんですか?」

「アスクレピスに限らず、こういった特殊な魔草には、

 近くに生えている他の魔草の栄養を吸い取るという共通的な特徴があるんです」


 なるほどな。だから、あること自体はわかるけど、何処にあるかまではわからないのか。


 ということは……だ。

 俺達はこれから、超危険な洞窟に事前情報もなしに入って、何処にあるかも不明な魔草を探すとかいうクソゲーをやるってわけか。

 うん、最悪だな。


「先に言っておく、今回は前みたいに助けられるかわからん」


 カルスの一言で、より一層、緊張感が高まる。

 だがしかし、それはみんな覚悟してたことだ。


「できれば、アリスには入り口で待っていてほしかったんだがな……」


 そう言うと、アリスは頬を膨らませた。

 そして、プンスカといった感じに怒り始めた。

 アリスが本気を出したら、もしかしたらレイナよりも手が付けられなくなるかもしれないな。




 ---------




 古の洞窟は、深い森の中にあった。


 当然だが、人気は皆無。

 なんなら、魔物の気配すら全くない。

 この洞窟の影響だろうか。


「それでは、私はここで待っています。くれぐれも気を付けてください」


 マリオはここまで。

 この先は俺達だけだ。


「いいかい、アリス。絶対にカルスさんの言うことを聞くんだよ?」

「うん!! わかってる!」


 そうは言っているものの、アンドルは不安そうな表情だった。

 さっきのカルスの言葉もあるし、アリスのことが相当心配なんだろう。


 そんなアンドルを気にしてか、カルスが強く背中を叩いた。


「さっきはあんなこと言ったけどよ、お前の妹だけは死なせねえってずっと言ってるだろ?」


 サラッとかっこいいことを言ったカルスに対して、アンドルは冷静だった。


「妹のこと、頼みます。あと痛かったです」

「……ああ、すまん」


 この二人が、どのくらい一緒に依頼をしてきたのかはわからない。

 それでも、二人の間には厚い信頼関係があることは一目瞭然だ。


「エト、私に何かあったら家族をお願いね」


 レイナが柄にもないことを言い出した。

 不吉だからやめてほしいんだけどな。


「レイナは俺が命に代えても守るから、大丈夫」


 カルスの真似をしてかっこいいことを言ってみた。

 残念ながらレイナには無視されてしまったけど……。

 しかし、それでもこの言葉は俺の本心だということに変わりはない。


「それじゃあ、行くぞ」


 この先、どんな危険が待っているかは想像もつかない。

 それでも、カインさん達のためにも失敗は出来ない。

 なんとしてでも、アスクレピスを手に入れてみせる。


 俺は意を決して、足を踏み入れた。

 古の洞窟へと。


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