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シオンの涙雲  作者: 居鳥虎落
第1章
8/30

8話

「そういえば、瑞生お兄ちゃん達は王様の所に行ってたんじゃないの?帰ってくるの早いね!」

「一応行きましたが、犯罪者を届けるだけの簡単なお仕事だったので、王達と少し雑談してから帰らせて貰ったんです」

「今は、組が施設から連れて来た人間で溢れ返ってるからなぁ、帰りてぇって言ったら直ぐ帰れって追い出された」

「王様優しいね!」





 柊達が話に夢中になっていると、あっという間に広間に着きました。

 広間には、施設で一緒だった保弘、隆之介、一樹の3人の他に見たことが無い、若そうな青年2人が話していました。


 あ、あの髪の毛プリンの人見た事あるぞ?玄関で綺麗な女性と施設の人を案内してた人だ。

 その隣にいる黒髪短髪の人は知らないけど……ん?



「あっ!柊ちゃんと雛菊ちゃん!どこ行ってたの、2人以外の施設の人はもう全員部屋の案内終わって、後は案内してないの2人だけだよ」

「そうなの?ごめんなさい」

「ごめんなさい」



 柊と雛菊は申し訳なさそうに頭を下げると一樹は慌てた様に手を左右にブンブン振る。



「あぁー!責めてないよ!心配したって話!」

「逆に1番最後で良かったんじゃね?どうせ組長にも挨拶に行かすし」

「確かにそうだね」



 組長?と、柊と雛菊は顔を合わせて首を傾げる。



「なんで組長さんに会うの?」

「この屋敷は組長の家でもある。で、お前らは居候の身だ。家主に挨拶するのは当たり前だろ」

「確かに!」

「そうなんだ!」



 柊と雛菊が納得と言う様に声を上げた。



「それにお前達が迷子になってる時にお前達以外の奴は挨拶を済ませてる。玄関の方に態々組長が来たからな」

「そうなの?見たかったー!」



 玄関に来てたって事は部屋に案内する前か、もしかして私が雛菊探しに行って直ぐか?

 惜しい事したなぁ、あの時挨拶出来てれば、個別面談みたいな事しなくても良かったかも。

 あ、でも雛菊が挨拶出来ないから結局変わらないか。

 雛菊1人で行かせるなんてあり得ないし。



「でもなんで最後で良かったの?」

「それはね、柊ちゃん達の部屋が俺たちの部屋の隣で組長の部屋とも近いから、部屋案内ついでに組長に挨拶出来るでしょ?だからいっぺんに仕事片付いて楽だなって意味!」

「そうだったんだ!」

「でも、柊達が一樹お兄ちゃん達のお部屋とか組長さんのお部屋の近くでいいの?」

「そうだね!絶対うるさくするよ!」

「自分で言うな」



 もし、ちょっとでも物音立てて組長がキレたらヤバい。

 全力で逃げても殺されそう。



「大丈夫ですよ?組長は優しい方です。それに組長にも小さなお子さんがいて子供は大好きなので、煩いのは元気な証拠とか言って許してくれます」

「本当に?」

「本当です。安心して下さい」

「良かった!」



 取り敢えず、一安心かな?

 寛大な人っぽくて良かった。



「それに連れ帰った中でお前らが1番幼く、小さくて危なっかしいからな。さっき話し合って決めた」

「柊達、そんなに危なっかしい?」

「柊ちゃん達の様に小さい子はちょっとした事で大怪我をしてしまう事があるので、念の為の措置です」



 いや、確かに小さい子はそういう事があるかも知れないけど、私達言うほど小さく無いんだけどな。



「お?雛菊達より小さい子施設に居たでしょ?………

 もしかして、置いて来た!?」

「あぁ?それは無い、しっかり隅々まで見たからな」

「じゃあなんで?」



 雛菊が保弘達に疑いの目を向ける。



 保弘さん達が幼児組を置いて来ていないのは確認してる。

 だから全員この屋敷にいるはずだ。

 これは、もしかして……



「保弘お兄ちゃん!柊達何歳に見える?」

「ん?4、5歳だろ?」

「やっぱり!」

「〜〜〜っ!うそー!」

「?何驚いてんだ?」



 考えてみればそうだ、施設に入ってから最低限の食事しか取ってない。

 家にいた時から栄養不足で体が5歳のまま殆ど成長して無いんだ。

 家にいた時はもっと酷かったから、毎日ご飯出てくるだけマシだと思って考えてなかった。

 麻痺してたわ。



「柊達、10歳だよ!」

「10歳だよー!」

「は?冗談だろ」

「嘘、あり得ない」



 柊がそう伝えるとその場にいる全員が唖然とした顔をしていた。



「嘘じゃ無いよ!雛菊これでも施設の中ではお姉さんだよ」

「…なるほど」

「何がなるほど何だよ」

「2人は栄養失調で体の成長が遅れているんです。あの男がまともな食事を出している訳無かったんですよ」

「はぁ〜なるほどなぁ。考えてみりゃそうか、てことは他の奴らも見た目と年齢が違うかもな」

「服とか髪がカモフラージュになって気付かなかったけど、よく見ると柊ちゃん達細すぎるね」

「こんなで良く生きてたな」



 一樹は泣きそうな顔をしながら、柊達を見つめる。

 それ以外の人達も何処か神妙な面持ちで見つめている。



「辛かっただろ!これからは美味いもん!腹一杯食えるからな!」

「辛くなかったよ?毎日ご飯出るだけで幸せ〜」

「お家では毎日食べれなかったもんね」

「ねぇ〜!」



 施設に入る前はゴミを漁ったり、体が小さい事を利用して物乞いとかしてたし、貰えなかった時は食べれる草を探してそれを調理して何とか生きながらえていた。

 それに比べたら少なくても毎日出てくるだけありがたかった。



「そうか、これからは毎日3食美味い飯が食えるぞ」

「うちには、専属の料理人が大勢いるからね!」

「ケーキも作ってもらえる?!」

「もちろん」

「ふぁ〜!」

「柊はお寿司食べてみたい!」

「今度作らせましょう」

「ぃやったー!」



 雛菊が幸せそうで良かった。

 私も寿司が食べれる!本当だったら、日本酒と一緒に食べたいけど、この体じゃ後10年後か……我慢だな。



「そうだ!雛菊達以外のみんなもお腹いっぱい食べれる?」

「当たり前だろ、お前らだけ特別扱いする訳ねぇ」

「隆、口調キツイよ。普通に当たり前だろ、任せろ!とかで良く無い?なんで一々突っかかるの」

「お前も俺に一々突っかかってくるだろ」

「これは注意です」

「うざ」

「はぁ?」

「なんだよ」



 隆之介と一樹はまた、喧嘩を始める。

 これ今日私が出会ってから3回くらい見てるけど、日常茶飯事なのかな?

 周りのみんなまた始まったみたいな顔してるし。

 あ、秋巴さんに殴られた。

 それにしても、優しい一樹さんにもやっぱりヤクザな一面があるんだな。





「あの、俺ら置いてきぼりなんですけど。どういう事ですか?」

「はいはい!俺らにそこの、ちっこいの紹介して欲しいっす!」

「あぁ、すまん。紹介し忘れてたな」


 保弘さんの後ろからプリン頭の青年と黒髪短髪の青年が顔を出す。

 黒髪の青年を見た時、柊の顔が一瞬だけ歪んだ。


 もう、最悪だよ。

 私、いよいよ呪われてるのかも……


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