4話
「こいつは捕まえたから、後は此処に監禁されている人の保護だけですね」
「そうですね、じゃあ今から割り振りますよ。私と秋巴はこいつを王城連れて行き、今後どうするか王と相談しましょう。保弘、隆之介、一樹は監禁されている人の保護に当たってください。組の若衆どもに部屋の準備などをやらせてますので、帰ったら合流して保護した人達に詳しい説明と部屋分けをして下さい。私達も終わり次第合流します」
「はいよ」
「了解」
「了解です」
「わっかりました!」
瑞生さんが5人それぞれを2つの役割ごとに割り振り、誰も異論を唱えること無く了承した。
本当にみんなを無事保護してくれるんだろうか。
「柊ちゃんは私達と一緒に王城へ行きますか?」
「ううん、柊は雛菊が心配だから保護チームに着いていく」
「分かりました。では保弘、柊ちゃんをお願いしますね」
「はいよ」
「お前、足手纏いにはなるなよ」
隆之介が柊を睨みつけながら冷めた声で忠告してくる。
「隆!そう言う事言わない!まだ小さいんだし、可哀想でしょ!」
「はぁ〜、面倒くせ」
一樹さんが隆之介さんを諌めて、私に向かってごめんねと手を合わせて謝った。
もしかして隆之介さん子供嫌いだったりするかな?
さっきからずっと睨まれてるし、ウザいから関わらんとこ。
普通に子供に仕事見られたく無い人かもしれないしね。
「取り敢えず、商品保管区域って所まで行くか」
「あいあいさー!」
「何だ?その返事は」
「偉い人に返事する時の言葉!本にそう書いてあった!」
「お前、どんな本見てんだよ」
「めっちゃカワイイ〜」
4人、と言うか主に一樹と柊が会話をしながら、商品保管区域まで施設の通路を歩いて行く。
「そう言えば、柊ちゃんってこっちの区域まで1人で来たの?」
「ん?そうだよ?」
「柊ちゃんが暮らしてる区域はカードキーが無いと出入り出来ないでしょ?どうやって出てきて、帰るつもりだったの?」
「あれ?海斗お兄ちゃんから聞いてないの?柊達には脱走防止用のマイクロチップが頭に埋め込まれてるんだよ?柊達は施設長のお仕事をお手伝いしてたからちょっと設定が緩くて、カードキーの代わりにもなってたから施設の中ならどこでも行けるの、今日みたいな緊急時とかはロック掛かっちゃうけど柊が通った時はまだロック掛かってなかったから」
「何だそれ?聞いてねぇぞ。そんな話」
「初耳だね。それにしても柊ちゃん怖い物埋め込まれてるね」
海斗さんに話したつもりで居たけど、基本的に聞かれた事以外は話して無かったし、出歩いてる時は人と会わないルート歩いて施設長の部屋言ってたから、疑問に思う事も無かったのか。
結構大事な情報伝え忘れてたのは、申し訳ない。言ったつもりになってた。
それにしても隆之介さん急に会話入って来たな。
「怖いかな?柊達は商品だから当たり前な気がするよ。もし逃げられちゃったらお金勿体無いでしょ?」
「そう言われれば、そうなんだけど」
「安心しろ、組に帰ったらその頭のマイクロチップ取ってやる」
「とる?」
ビックリした。保弘さんも急に喋り出したな。
てか、このマイクロチップ取れるの?
相当奥に埋め込まれてるから、無理矢理抜くとグロイ事になるって施設長が言ってたけど…
「うちの組にはね、優秀な解析班がいるんだよ!その人達に柊ちゃんの体内にあるマイクロチップを調べて貰えば、直ぐ取れるよ!」
「何それ!すごく、カッコいい!」
柊が素直に賞賛の声を上げると一樹は腰に手を当てて胸を張り、得意げな顔をして笑う。
「えっへん!」
「お前説明しただけで何もしてないだろ」
「痛っ!」
隆之介が一樹の頭に拳骨を落として黙らせた。
今のめっちゃ痛そう。ゴッて音した。
そうこうしているうちに商品保管区域の入り口の前まで来てた。
「隆之介」
「はい、カードキーです」
保弘は隆之介の名前だけを呼び、スッと手を横に出す。
隆之介はその一言で理解したようで、商品保管区域の扉のカードキーを保弘に渡す。
熟年夫婦がコイツら。
柊は少し苦笑いをしながら、2人を後ろから見ていた。
「隆は相変わらず、保弘さんの言いたい事とかやりたい事とは良く分かるよね」
「あ?普通に見てりゃ分かるだろ」
「いや、分かんないよ」
保弘はさっさとカードキーを受け取ると扉の装置にカードをスライドさせる。
扉は少し年季が入っており、激しい音を立てながら、ゆっくりと開いた。
「偽物なのに開いちゃうなんて、そのカードキーマジで凄いよね」
「当たり前だろ、うちの天才発明家が本物同然に作ってんだ」
「うちの天才発明家が作れば、どんな所でも入りたい放題だね」
「なんか、怖いね!」
「そうでもねぇよ、犯罪には使わねぇからな」
「隆、今やってる事も充分立派な犯罪では?」
「一応、国のお偉いさんに依頼されてやってるんでね。ある程度はお許しが出てる」
「悪い顔〜」
なるほど、多少の事はやっちまって良いって事かな?
健全では決してないけど、面白いな。
この人達の組に天才発明家がいるって今度ルゥに教えてあげよ。
きっと会わせろって手紙が来そうだけど、教えるだけで合わせるのは頃合いを見てからの方が良いな。
タッグ組まれて爆弾とか作られても困っちゃうし。
「一樹、お前は隆之介と一緒に向こうの部屋見て来い。柊、お前は俺とこっちだ」
「は〜い!」
「あの、一樹と一緒なのは良いですが、そのガキはそこら辺に置いといた方が良くないですか?」
私も隆之介さんと同じで置いていかれるかと思ってた。
仮に連れて行って貰えたとしても、監視の名目なら隆之介さんの方が適任だし。
子供の話し相手なら、一樹さんの方が適任だ。
どうして、どっちにも向いて無さそうな保弘さんなんだろ?
「この先、敵が居ないとも限らないだろ。この中で子供を守りながら戦えるのは俺くらいだ」
「え?」
「いや、ガキ1人くらいどうって事無いですけど…」
「はい!俺も柊ちゃんと一緒が良いです!」
「隆之介、お前は子供の事を忘れて戦いだけに集中するだろう。戦いに夢中で気付いたら子供殺されてました、なんてシャレになんねぇぞ」
「うっ、」
隆之介の反論に保弘が答えると隆之介は痛い所突かれたと言う顔をしてそっぽを向き黙ってしまう。
保弘はクルッと一樹方を向き、口を開く。
「一樹、お前は子供に意識が行き過ぎる。戦いに集中出来ない所が欠点だ。守りたい気持ちは分かるが、勝てなければ守る事は出来ないぞ」
「仰る通りです……」
一樹も欠点を指摘されてしまい、シュンと落ち込んでしまった。
「お前らは極端すぎるから任せられない。俺に付いて来る方が安全だ」
「了解しました…」
「分かりました…」
2人が返事をするのを聞くと保弘歩き出し、2人は沈んだ空気を醸しながら、反対側へ歩いて行った。
2人と分かれてから結構経つけど、そもそも保弘さんはどこを目指して歩いてるんだろう?
さっきから廊下を歩いてるだけで、そこらじゅうにある部屋には興味も示していない。
それに商品保管区域のみんなには此処の更に地下に隠れてもらっている。
いくらこの階を探しても地下に繋がる入り口は絶対に見付けられない。
この人達を少しでも信用出来る要素が無いとみんなを、雛菊を預ける訳にはいかない。
みんなが酷い目に遭ったら、雛菊が悲しむ。
「柊」
「ん?どうしたの、保弘お兄ちゃん」
「此処に居た人間達を何処に隠したんだ」
「……」
まずいかもしれない。