28話
ドゥエイが父親だと証明されて私達は総一郎さんの部屋へと連れて来られた。
「雛菊!柊!さっき振りだな」
「お父さーん!」
「お父さん!」
抱きつくのは流石に嫌なので雛菊の手を握って近寄るだけに留めた。
私自身が抱き付くのも嫌だけど、コイツに雛菊が抱き付くのはもっと嫌、想像しただけで首絞めたくなる。
「2人とも怪我してないかい?」
「雛菊も柊も元気だよ!」
「何ともない!」
「良かった、お父さん2人が居なくなった日からずっと探していたんだ、無事で良かった…」
「そうなの?お父さんありがとう!」
「ありがとう!」
良くもまぁ、いけしゃあしゃあとそんな事言えるな。
お前が施設に売った張本人だろ、私が誘導したのも事実だけど最終的に売る事を決めたのはお前だからな。
「これからお父さんが必ず守るから、ずっと一緒だ」
「本当に?」
「お母さんも一緒?」
「お母さんは、2人を…」
「「?」」
「いや何でもない。お母さんは遠くに居るから今はまだ一緒に暮らせないけど、すぐにまた4人で暮らせるようになるぞ」
「「やったー!」」
こいつ、母さんに全部なすりつける気だな。
私達には勿論だろうけど総一郎さん達にも聞こえる様に含みを持たせた言い回しをした。
全部知ってる身からすると只々痛いし寒い芝居見させられてる気分。
自分に酔ってるだけの加害者が……早く居なくなって欲しいな。
一緒になんて暮らしたくない。
どうするのが1番良いだろうか。
このまま父親が大好きな娘を演じるか、いっその事父親の所には絶対に行きたくないと駄々を捏ねてみるか。
まぁ、総一郎さん達がそれを汲んでくれないと駄々を捏ねても意味は無いけど、どうしようもなくなったらやってみようかな。
「では、幾つか質問をさせて頂いて問題がなければ正式に手続きをして頂くと言う事でよろしいでしょうか?」
「はい、構いません」
ドゥエイが組長室に入ってから話をするのは瑞生ばかりで、総一郎は柊達が来てからもまだ一言も話しておらず柊達の様子を窺っているように見えてる。
瑞生はそんな総一郎を横目に父親と話している。
そういえば、ドゥエイの事で緊張してて周りが見えてなかったんだけど、組長室には不思議な事に料理長が居てちょっと異質だ。
何してんの?てか幹部勢全員集合してるの何で?
こんな強面達に囲まれてドゥエイさん可哀想だなぁ〜肝っ玉ちっさいのに。
「では初めに、どうしてうちの組に2人が達がいると分かったんですか?」
「それは新聞を見て…」
「あなたは先程ずっと探していたと言った。5年間探し続けるのはさぞ辛かったでしょう」
「はぁ、まぁそうですね」
「…どうして施設の壊滅と2人がそれに関わっていると分かったのでしょうか?新聞には施設壊滅としか書かれていません。2人の事は具体的に書かれていないんですよ」
「そっそれは、子供が保護されたと書いてあったので5年探し回ってることもあってパニックになって2人も保護されたのではと、思ったのが保護されているに違いないと頭で変換されてしまって……でも実際2人は保護されていましたし」
「なるほど、そうかも知れないが絶対にそうだに変わってしまったと」
「はい」
瑞生の質問に一瞬動揺を見せたドゥエイだったがすぐに持ち直し話し始めた。
総一郎達はドゥエイの変化に気づいていたが一旦は泳がせる形を取る。
一方、ドゥエイが話している時の柊の心情はぐちゃぐちゃだった。
それはドゥエイの本性を知っている為、今話している人間が此処まで自分を押さえて理性的な人間を装っている事に動揺が表に出ない様、抑える事に必死だったからである。
本来のドゥエイは直ぐに声を荒げ、暴力を振るう理性の欠片も無い男なのだ。
(なのにどうして)
そんな柊の心情を察した雛菊は握っていた柊の手を強く握って顔を覗き込んで安心させる様に笑い、口を動かす。
『大丈夫だよ、きっと助けてくれる!私達は今何もしない方が良い!』
うん、そうだね。
助けてくれるとは思ってないけど、今は何もしないのが得策だ。
柊は雛菊の口を読んで小さく頷いた。
「そうですね、では2人を引き取るだけの余裕や準備はしていますか?」
「はい、私自身は安月給ですが私の両親に話をしたら是非引き取りたいと言ってくれて。私が仕事の時などは両親に預けて仕事以外の時は私が見る事で了承を得ています」
「そうですか、失礼ですがご両親は高齢の方でしょうか?もしそうなら、幼児の世話は厳しいのでは?」
「いいえ、ご心配には及びません。確かに高齢ではありますが、父はまだまだ現役ですし母も社交界でバリバリ活動しておりますので」
ドゥエイから両親の話が出た時、柊が一瞬だけ怒気を孕んだ表情をしたが、直ぐに可愛らしい表情に戻した。
そして心の中でなるほどと1人納得したのであった。
「社交界?」
「はい、私の父はアーロノブル伯爵なんです。母は伯爵夫人で…」
「ほぉ、それはご立派なご両親をお持ちですね」
「まぁ、はい、ありがとうございます」
バレた、アーロノブルは隣国ではそれなりに支持されている伯爵家だ。
伯爵家の話を出されたら母さんと暮らすのは難しくなる。
母さんは経済的に余裕ないからね。
「経済的な余裕はあります。2人を引き取って成人するまで面倒を見る余裕も成人した後のサポートもしっかりします」
するのはお前じゃないし、されるのは"柊"だけなんでしょ?
「そうですね、今の所何も問題がないので貴方が引き取るでも良いかもしれませんね」
「じゃあ!」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁあ!その話!待った!私も入れていただけないでしょうか!」
瑞生が難色を示しながら決定しようとした時、物凄い勢いで襖が開き息を切らして大声を上げながら女性が入って来た。
「「お母さん!!」」




